マッコウクジラ
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24メートル以上という記録も複数存在し、エセックス号(英語版)を撃沈した個体[注釈 10]は26メートルに達したともされているが、これらの記録は捕獲した個体の体表に沿って計測されたと思わしいため、確認されている最大の記録としては、千島列島で捕獲された体長20.7メートル、推定体重80トンの雄が存在する[19][21]

本種を特徴づける著しく肥大化した頭部は、その長さがオスで体長の3分の1に達する。これは、クジラ類の中でも例外的に巨大である。は、おそらく全ての動物の中でも最大・最重量であり、成体のオスでは平均で7キログラムに達するが、身体サイズに比べれば決して大きな脳ではない。

背中の色は一様に灰色だが、日光の下では褐色に見えるかもしれない。背中の皮膚は通常凸凹(でこぼこ)で、他の大きなクジラのほとんどが滑らかな皮膚をしているのとは対照的。

噴気孔(呼吸孔、鼻孔)の位置は頭部正面に集中しており、遊泳方向に向かって左側にずれている。そのため、潮吹きは前方に向かった特徴的なものとなる。背鰭(せびれ)は背骨に沿って前から3分の2の場所に位置し、通常は短い二等辺三角形の形状をしている。尾は三角形で非常に厚い。クジラが深い潜水を始める前には、尾は水面から非常に高く引き上げられる。

全身骨格図

下顎の骨格(神戸市立須磨海浜水族園

マッコウクジラの歯

陰茎

生態
歯と食性ダイオウイカによって刻み付けられた吸盤の傷跡が残るマッコウクジラの皮膚[注釈 11]

下顎(したあご)に20 - 26対の円錐形の歯を有する。それぞれの歯は約1キログラムもの重量がある。

丸呑みが可能なイカ類を食べるために歯は不要と考えられており、本種が歯を備えている理由ははっきりとは分かっていない。歯を持たないにもかかわらず健康に太った野生の個体も、実際に観察されている。現在では、同種のオス同士で争う際に歯が使用されるのではないかと考えられている。この仮説は、成熟したオス個体の頭部に見つかる傷の形状が歯形にあっていたり、歯が円錐形で広い間隔を空けて配置されている理由も説明できる。上顎の中にも未発達の歯が存在するが、口腔内まで出てくることはまれである。似た食性を持つハナゴンドウもマッコウクジラと同じく下顎にのみ歯を有している。この種はマイルカ科に属すが、多くの部分でマッコウクジラと酷似している。

近年の研究では、子を海面に残したまま深海へ獲物を獲りにいった親が、捕らえた獲物を子の餌としてくわえたまま持ち帰る姿が確認されている。映像に収められている獲物はダイオウイカであり、一匹丸ごとではなく、一部だけを持ち帰ってきた。このことから、歯の存在理由が獲物をかみ切ること、獲物を深海から海面へ運ぶときの滑り止めとするなどの仮説も考えられる。
食餌ダイオウイカの捕食(アメリカ自然史博物館)「クジラ#鯨食害論」も参照

ヤリイカダイオウイカなど主な食性はイカ類であり、スケソウダラメヌケフリソデウオ科ツノザメ科のような大型の深海魚類も餌となる。

試算では、マッコウクジラの摂餌量は年間で9千万トン - 2億2千8百万トンと推計される[22]。この95%がイカとすれば、およそ8千万トン - 2億トンのイカがマッコウクジラに食べられ、それは世界中の年間漁獲量の30 - 66倍になるという[22]。もっとも、マッコウクジラが食するイカは、主に中深層に生息するクラゲイカといった大型イカ[注釈 12]と考えられ、それらのイカは人間の食用種ではない[22]

また、日本政府が捕鯨問題において捕鯨を正当化するために用いた「鯨食害論」は国内外の識者からの批判を受けており、2009年6月の国際捕鯨委員会の年次会合にて、日本政府代表代理だった森下丈二水産庁参事官が鯨類による漁業被害(害獣論)を撤回している[23]

他にも、優先度は低いもののウバザメオンデンザメメガマウスアオザメエイマグロなどの大型魚類やウナギサーモンなどの多様な魚類を捕食していると考えられる記録もある[24][25]
子育てと社会形成群れのメンバー同士の絆は強い(アゾレス諸島

本種は家族の絆がとても強い。子は生まれてすぐには深海に潜ることができない。母親は子が深海へ潜ることができるようにするため、しばしば訓練をするが、子がなかなか潜ろうとしない場合は母乳を飲ませながら潜る。最近の研究では頻繁に深海と海面を行き来することが分かっている。

成熟した雄は、通常は独り立ちし、雌や子供が進出しない極海に至るまで広範囲を回遊する。若い雄同士で独自のグループを形成する。また、雌や子供の群れがシャチや捕鯨船などに襲われた際に救出にくることもある[26]。群れを守るために捕鯨船(大型帆船)を雄が攻撃して沈没させた例[注釈 13]も存在する。

また、後述の通り、花形の円陣(マーガレット・フォーメーション)を組んでシャチへの抵抗を見せることがある[27]


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