マッコウクジラ
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この進化がどのような条件下で引き起こされたものであるかについては未だ詳らかにされないものの、彼らの祖先にあたるクジラが、他の大小多様なハクジラ類や大型サメ類との浅海域での生存競争に敗れ、食いはぐれての結果的選択であるとの推論は成り立つ[32]。そのような動物も他所に活路を見出して、その上で新たな環境への的確な適応を遂げられた場合に限って、新しい種として子孫を残し、進化を次の段階へ進めていくことが可能となる。しかしまた、優勢種であるがためにその一部が分布域を拡大していくうちに、異なる形質を獲得していき、遂には別の種として分化した、との考え方もあり得る。いずれにしても、彼らの祖先は、何らかの条件の下でクジラ類にとっては未踏の海域であった深海という環境に挑み、長い時間をかけて現在の高度に適応したマッコウクジラの形質を獲得していったと考えられ、ダイオウイカ等の巨大無脊椎動物の生息によって深海という環境の生物量が決して貧しくはないことが、彼らの祖先の進化を下支えしつつ促したといえる。ハクジラ類が持っている反響定位の能力も深海にあって大いに威力を発揮し、彼らを優勢種に押し上げている。

ハイドロフォン(英語版)によるニュートリノ検出を目的とした海洋ノイズ検出実験において、カターニア東方にある深度2,000メートルのテスト海域でマッコウクジラのクリック音が観測された。また目撃情報や海面近くの音響記録に基づいた調査によって、分布は稀だと思われていた海域においても予想以上にマッコウクジラが棲息していることが明らかになった。観測されたクリック音のパターンが二種類あることから、地中海海盆の外から一時的に入ってくる通りすがりのクジラの存在が示唆されたが、地中海のマッコウクジラが1つの閉鎖個体群なのか、それとも外海の個体群とのやりとりがあるのかは判明しておらず、生態には未知な部分が残されている[33]
繁殖と寿命

本種は低い出生率と遅い成熟と長命を獲得している。メスは4歳から6歳で成熟し、メスの妊娠期間は少なくとも12か月、最長で18か月。そして、子育ては2 - 3年続く。マッコウクジラの家族は、母系家族でメスが中心となる。オスは単独行動、もしくは若い雄同士が小さな群れを造る。オスの繁殖適齢期は10歳ごろから20歳ごろまでの約10年間続き、40歳を超えても成長は止まらず、約50歳で最大に達する。また、出産は5年に一度しか行わない。

雄は一体で複数の雌を獲得するハーレム(英語版)によって子孫を残す性質で、複数の雌と交尾した後には子育てには参加しない。成熟した雄のペニスの長さは1メートルを超える。

群れを造る雌と子供達は結束が強く、弱って傷ついた仲間を囲って天敵であるシャチやサメなどの攻撃から守ったり、その囲いを解かずにそのままの姿勢で安全地帯へと押しやるような行動も観察されている。

大型の老熟したマッコウクジラの体表には多くの傷が見受けられる。特に雄個体には頭部に前述の歯によって噛み合った傷が多く、これは繁殖期で雌をめぐって雄同士争う後によく見られるといわれる。なお傷は時間と共に白く変色していって体表にそのまま残るか、皮膚に埋もれていく。

成熟した個体には、リング状の傷が帯状に付いていて、特に口と顔周りに多いが、これはダイオウイカの必死の抵抗により、強力な触腕にしがみつかれ、皮膚に傷を負ったものである。南極近くに住む個体には、ダイオウホウズキイカによって付けられたと思われる鉤爪が刺さったままのものも見受けられた。

泳ぎが遅く、深海性のため、暖かい海にいる個体はダルマザメの標的にもされている。
天敵マーガレット・フォーメーション[注釈 15]

人間のほかにはシャチ天敵であり[34]、幼獣だけでなく成体もシャチの群れに襲われ殺されることがある[35]

しかし、成獣は通常は1頭だけでもシャチの集団にとって手強く、日本列島の沖合で、シャチの群れに襲われた雌と子供から成る群れを、どこからともなく現れた未成熟の雄が救援し、シャチたちを攪乱してからその群れを率いて脱出する光景も観察されている[36]。また、群れを守るために捕鯨船(大型帆船)を成熟雄が攻撃して沈没させた例も存在する[注釈 16]

また、花形の円陣(マーガレット・フォーメーション)を組んでシャチへの抵抗を見せることがあるが、これは本種以外ではミナミセミクジラでも確認されたことがある。なお、この行動は天敵がいない状況でも見られる場合がある[27]

2024年には、西オーストラリア沖でシャチの群れに対抗する防衛手段の一つとして意図的に排泄して糞を周囲に散布する行動がみられたが、これは近縁系統であるコマッコウオガワコマッコウによく知られてきた行動である[37]
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