マッコウクジラ
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近年でも韓国日本の沿岸や近海で少数が確認されており、2024年に発表された調査結果では、朝鮮半島の近海に本種が増加(復活)しつつあることが判明している[17][18]

世界規模で多く生息している個体群には不明確なものもあり、地中海におけるクリック音の観測や目撃情報などの分析から、詳細は不明ながらも、想定以上に多く生息しているであろう事実が確認された事もある(詳細は「深海への適応」参照)。ただし、北米大陸の西海岸沖やイギリス周辺、オーストラリア南西部やニュージーランド周辺[注釈 9]日本列島の沿岸の各地など、捕鯨の影響から回復が遅れているために個体数の少ない海域も点在する。
形態マッコウクジラ科のヒトとの大きさの比較ヒトとの大きさの比較。ただし、確認された最大の体長は20.7メートルである[19]並んで泳ぐ2頭 (噴気孔が見える)

現生のハクジラ類の中で最も大きく、現生鯨類全体でもナガスクジラ科セミクジラ科に次ぐ大きさを持つ。また、のある動物[20]では世界最大であり、巨大な頭部とその形状が特徴的である。

本種は全てのクジラ類の中で最も大きな性差をもつ。標準的なオスの体長は約16 - 18メートルであり(長さの比較資料:1 E1 m)、メスの約12 - 14メートルと比べて30 - 50%も大きい。体重はオスの50トンに対し、メスは25トン と、ほぼ 2倍の差異がある。なお、誕生時は雌雄いずれも体長約4メートル、体重1トン程度である。ハクジラの中では最大種であり、成長したオスには体長が20メートルを越えるものもいる。24メートル以上という記録も複数存在し、エセックス号(英語版)を撃沈した個体[注釈 10]は26メートルに達したともされているが、これらの記録は捕獲した個体の体表に沿って計測されたと思わしいため、確認されている最大の記録としては、千島列島で捕獲された体長20.7メートル、推定体重80トンの雄が存在する[19][21]

本種を特徴づける著しく肥大化した頭部は、その長さがオスで体長の3分の1に達する。これは、クジラ類の中でも例外的に巨大である。は、おそらく全ての動物の中でも最大・最重量であり、成体のオスでは平均で7キログラムに達するが、身体サイズに比べれば決して大きな脳ではない。

背中の色は一様に灰色だが、日光の下では褐色に見えるかもしれない。背中の皮膚は通常凸凹(でこぼこ)で、他の大きなクジラのほとんどが滑らかな皮膚をしているのとは対照的。

噴気孔(呼吸孔、鼻孔)の位置は頭部正面に集中しており、遊泳方向に向かって左側にずれている。そのため、潮吹きは前方に向かった特徴的なものとなる。背鰭(せびれ)は背骨に沿って前から3分の2の場所に位置し、通常は短い二等辺三角形の形状をしている。尾は三角形で非常に厚い。クジラが深い潜水を始める前には、尾は水面から非常に高く引き上げられる。

全身骨格図

下顎の骨格(神戸市立須磨海浜水族園

マッコウクジラの歯

陰茎

生態
歯と食性ダイオウイカによって刻み付けられた吸盤の傷跡が残るマッコウクジラの皮膚[注釈 11]

下顎(したあご)に20 - 26対の円錐形の歯を有する。それぞれの歯は約1キログラムもの重量がある。

丸呑みが可能なイカ類を食べるために歯は不要と考えられており、本種が歯を備えている理由ははっきりとは分かっていない。歯を持たないにもかかわらず健康に太った野生の個体も、実際に観察されている。現在では、同種のオス同士で争う際に歯が使用されるのではないかと考えられている。この仮説は、成熟したオス個体の頭部に見つかる傷の形状が歯形にあっていたり、歯が円錐形で広い間隔を空けて配置されている理由も説明できる。上顎の中にも未発達の歯が存在するが、口腔内まで出てくることはまれである。似た食性を持つハナゴンドウもマッコウクジラと同じく下顎にのみ歯を有している。この種はマイルカ科に属すが、多くの部分でマッコウクジラと酷似している。

近年の研究では、子を海面に残したまま深海へ獲物を獲りにいった親が、捕らえた獲物を子の餌としてくわえたまま持ち帰る姿が確認されている。映像に収められている獲物はダイオウイカであり、一匹丸ごとではなく、一部だけを持ち帰ってきた。このことから、歯の存在理由が獲物をかみ切ること、獲物を深海から海面へ運ぶときの滑り止めとするなどの仮説も考えられる。
食餌ダイオウイカの捕食(アメリカ自然史博物館)「クジラ#鯨食害論」も参照

ヤリイカダイオウイカなど主な食性はイカ類であり、スケソウダラメヌケフリソデウオ科ツノザメ科のような大型の深海魚類も餌となる。

試算では、マッコウクジラの摂餌量は年間で9千万トン - 2億2千8百万トンと推計される[22]。この95%がイカとすれば、およそ8千万トン - 2億トンのイカがマッコウクジラに食べられ、それは世界中の年間漁獲量の30 - 66倍になるという[22]。もっとも、マッコウクジラが食するイカは、主に中深層に生息するクラゲイカといった大型イカ[注釈 12]と考えられ、それらのイカは人間の食用種ではない[22]


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