マチュ・ピチュの歴史保護区
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「ペルー国民の矜持とインカ文明の顕著な象徴」[2]ともいわれるマチュ・ピチュでは、1981年に国立歴史保護区(National Historic Sanctuary)が設定された[2]

ペルーの世界遺産条約批准は1982年2月のことであり[30]、マチュ・ピチュはペルー当局が最初に推薦した物件のひとつだった。推薦を踏まえて調査した世界遺産委員会の諮問機関は、文化遺産自然遺産の両面で「登録」がふさわしいと勧告しており、1983年の第7回世界遺産委員会で世界遺産リストに登録された[31]。「クスコ市街」とともに、ペルー最初の世界遺産である。

登録に際して世界遺産委員会はオリャンタイタンボ遺跡などの名前を挙げ、ウルバンバ川下流域にまで将来的に拡大登録することが望ましいという勧告を出していた[31]。ただし、2013年時点では、ペルーの暫定リストの中にマチュ・ピチュの拡大登録は含まれていない[30]

登録後、1986年から2001年までの計11回、保全計画の策定やインティワタナの修復作業などへの助成を理由に、世界遺産基金から総額166,625USDが拠出された[32]
登録名

世界遺産としての正式登録名は、Historic Sanctuary of Machu Picchu(英語)、Sanctuaire historique de Machu Picchu(フランス語)である。その日本語訳はほぼ直訳の「マチュ・ピチュの歴史保護区」とされる一方[注釈 6]、単に「マチュ・ピチュ」とだけ表記している文献も少なくない[注釈 7]
登録基準

この世界遺産は世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たし、登録された(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作。

世界遺産委員会の文化遺産審議の諮問機関である国際記念物遺跡会議 (ICOMOS) は、この基準の適用理由を「ワイナ・ピチュ山麓での山地開発は独特の芸術的業績であり、建築上疑う余地のない傑作である」と説明していた[33]



(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。

ICOMOSは、この基準の適用理由を「マチュ・ピチュは、クスコや他のウルバンバ渓谷の考古遺跡群とともに」「インカ文明に関する類のない例証を備えている」と説明していた[33]



(7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。

世界遺産委員会の自然遺産審議の諮問機関である国際自然保護連合 (IUCN) は、「最上の山々、植生、渓流群を含んでいる地域」であることを適用理由として挙げていた[34]



(9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。

IUCNは「人と自然環境の相互作用の顕著な例」であることを適用理由に挙げていた[34]。現在では自然遺産面の価値として、希少な絶滅危惧種の存在がしばしば指摘されている[4]


保護への脅威・災害

マチュ・ピチュはペルー国内では特に観光客が多く訪れる観光地のひとつであり、年間訪問者数は1980年代に約18万人だったものが、2003年には40万人を超え、2006年には691,623人に達した[35]。多い時期には1日あたりの観光客が1500人から2000人にもなるが、遺跡保存のための許容量を超過しているという見解もある[35]。都市遺跡を一望できるワイナ・ピチュ側では、マチュ・ピチュよりも先に1日400人までとする入場制限が設けられた[36]。400人の内訳は午前7時から10時までと午後1時から3時までにそれぞれ200人ずつとなっている[37]。マチュ・ピチュの都市遺跡の観光にもさまざまな規制はあり、範囲内の飲食禁止、禁煙・火気厳禁、高齢者などが杖を持ち込むときには先端にゴム製カバーがついたものに限ることなどが定められ[38]、立ち入り可能なエリアや見学する際の順路も決められている[39]

2008年の第32回世界遺産委員会では、保護区内での森林伐採や無計画な開発などへの懸念から、「強化モニタリング」指定が行われた[40]。また、新たな観光道路の建設計画が持ち上がった2011年の第35回世界遺産委員会では危機にさらされている世界遺産(危機遺産)リストへの登録も検討された[41]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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