マチュ・ピチュの歴史保護区
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世界遺産委員会の文化遺産審議の諮問機関である国際記念物遺跡会議 (ICOMOS) は、この基準の適用理由を「ワイナ・ピチュ山麓での山地開発は独特の芸術的業績であり、建築上疑う余地のない傑作である」と説明していた[33]



(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。

ICOMOSは、この基準の適用理由を「マチュ・ピチュは、クスコや他のウルバンバ渓谷の考古遺跡群とともに」「インカ文明に関する類のない例証を備えている」と説明していた[33]



(7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。

世界遺産委員会の自然遺産審議の諮問機関である国際自然保護連合 (IUCN) は、「最上の山々、植生、渓流群を含んでいる地域」であることを適用理由として挙げていた[34]



(9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。

IUCNは「人と自然環境の相互作用の顕著な例」であることを適用理由に挙げていた[34]。現在では自然遺産面の価値として、希少な絶滅危惧種の存在がしばしば指摘されている[4]


保護への脅威・災害

マチュ・ピチュはペルー国内では特に観光客が多く訪れる観光地のひとつであり、年間訪問者数は1980年代に約18万人だったものが、2003年には40万人を超え、2006年には691,623人に達した[35]。多い時期には1日あたりの観光客が1500人から2000人にもなるが、遺跡保存のための許容量を超過しているという見解もある[35]。都市遺跡を一望できるワイナ・ピチュ側では、マチュ・ピチュよりも先に1日400人までとする入場制限が設けられた[36]。400人の内訳は午前7時から10時までと午後1時から3時までにそれぞれ200人ずつとなっている[37]。マチュ・ピチュの都市遺跡の観光にもさまざまな規制はあり、範囲内の飲食禁止、禁煙・火気厳禁、高齢者などが杖を持ち込むときには先端にゴム製カバーがついたものに限ることなどが定められ[38]、立ち入り可能なエリアや見学する際の順路も決められている[39]

2008年の第32回世界遺産委員会では、保護区内での森林伐採や無計画な開発などへの懸念から、「強化モニタリング」指定が行われた[40]。また、新たな観光道路の建設計画が持ち上がった2011年の第35回世界遺産委員会では危機にさらされている世界遺産(危機遺産)リストへの登録も検討された[41]

また、こうした問題とは別に、21世紀初頭には周辺での地滑りの危険性が指摘されており、特定非営利活動法人国際斜面災害研究機構の現地調査などが実施されていた[42]。しかし、2010年1月には周辺地域での何日間にもわたる大豪雨によって、実際に大規模な地滑りが発生するなどし、約2000人の観光客(日本人含む)が孤立する事態が発生した[43]。周辺の復旧作業のため、マチュ・ピチュ遺跡の観光は同年3月末までできなくなった[44]
脚注
注釈^ この面積はIUCNによるが、日本語文献では総面積326km2(うち都市遺跡約5km2)と概数で示している文献も複数ある(水村 (2002) pp.16-18、青柳 (2003) p.471、世界遺産アカデミー (2006) p.74、世界遺産アカデミー (2012) pp.338-339 etc.)。なお、UNEP-WCMC (2011) p.2 では 32,952 haとなっている。
^ IUCNカテゴリーはIUCNが1983年に示していたものとUNEP-WCMCが2011年に示していたものとで異なっているので、ここでは併記した。
^ ビルカバンバの有力候補は、ウルバンバ川上流の都市遺跡エスピリトゥ・パンパである(大平ほか (1998) p.23、柳谷 (2000) p.167)。
^ 大平ほか (1998) p.22では2,350m とされている。
^ 広く知られている都市遺跡以外に、マチュ・ピチュでは紀元前2000年以来の遺跡群も発見されている(青柳 (2003) p.471)。
^ 「マチュ・ピチュの歴史保護区」としている文献には、大平秀一ほか監修『世界遺産を旅する(9) 南米』(近畿日本ツーリスト、1998年)、世界遺産を旅する会『世界遺産厳選55』(小学館小学館文庫〉、2000年)、水村光男監修『オールカラー完全版世界遺産第5巻・アメリカ大陸』(講談社講談社+α文庫〉、2002年)、古田陽久 古田真美 監修『世界遺産事典 - 2012改訂版』(シンクタンクせとうち総合研究機構、2011年)、日本ユネスコ協会連盟監修『世界遺産年報2013』(朝日新聞出版、2013年)、谷治正孝監修『なるほど知図帳・世界2013』(昭文社、2013年)などがある。


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