劇中では、「どこかの国が行った水爆実験の放射線によって変異したキノコを食した人間の成れの果て」と設定されている。マタンゴを食した者は、全身を次第に胞子で覆われるにつれて知性や理性が失われていき、成体（キノコ人間[出典 13]）への変身と共に人間としての自我は消失し、怪物への変異が完了する[13][注釈 9]。難破船の日誌には、「島で発見した新種のキノコ」や「麻薬のように神経をイカレさせてしまう物質を含む」と記録されていた[注釈 10]。

怪物の成体は、マタンゴによる変異が全身におよんで人間当時の各部がうかがえなくなっており、かろうじて人型と認識できる容姿である[13][注釈 11]。一方、変身途上は人間当時の各部がまだうかがえる容姿であるほか、無施錠のドアを手指で開ける、背後から人間を襲って島の内陸部に拉致するなどの運動能力や知能が残っているが、いずれも発声能力はほぼ失せており、うめき声程度しか発しない。また、薬品や火、光に弱いほか、銃弾では死なないものの銃身で殴られると腕がもげる（ただし、血は大して流れない）など、骨肉の強度は人間のそれより劣る。

マタンゴが自生する島は木々が多々茂っているうえにいつも霧に包まれており、昼でも暗い。歩けば1日もかからず反対側に行ける広さしかないこの島には、潮や霧の影響から多くの船が島に引き寄せられて座礁するため、近海地域は「南太平洋の船の墓場」と形容されている[38]。浜にはウミガメが産卵に来るが、鳥類は決して島に近づこうとしない[13][21]。

名はキノコの一種であるママダンゴから採られた[42]。変身途上のマタンゴを、マタンゴ怪人と記述した書籍もある[出典 14]。小松崎茂による完全体のデザイン画では、マッシュルームに由来するマグマという名称が記されていた[45][12]。

劇場公開当時のポスターでは「吸血の魔手で人間を襲う“第三の生物”マタンゴの恐怖！」と記述されている[注釈 12]が、作品にそのような設定や描写は無い。また、「核実験で生まれたキノコ」という設定以外に文明批評的なものも無く、人間の我欲の行き着くところが無我・無自性のキノコ怪人であり、それが人間性に潜在する本性であるかのようなニヒリスティックなストーリー構成となっている。

声は、人間の声を加工したもの[47]。『ウルトラQ』に登場するケムール人やリリー、『ウルトラマン』に登場するバルタン星人などの声に流用された[出典 15]ほか、ジョージ・A・ロメロ監督『ゾンビ』の日本公開版の予告編ではゾンビの呻き声としても流用されている[34]。

デザイン・造型
デザインは小松崎茂が担当[出典 16]。キノコ雲をイメージしている[出典 17]。スーツ造型は利光貞三が担当[17]。スーツはワンピース状の1体と、頭部と胴体が分かれたツーピース状の4体が作られた[48]。全高は3メートルほどだが、ラテックス製ゆえ、重量は従来の怪獣よりも最も軽い30キログラムほどであった[17][48]。表面には光を反射するスコッチライトや蛍光塗料などを施し、青白く発光するようになっている[48]。スーツアクターは中島春雄が担当[17][12]。中島は、演技のやりようがなく嫌々やっていたと述べている[17][12]が、スーツは軽く立ち回りもないので楽であったとも述べている[49]。マタンゴ怪人のマスクもラテックス製[48][34]。マスク制作は利光ではなく、八木寛寿らが担当した[50]。森の中のキノコの造形物は、発泡剤を石膏や一斗缶に入れて膨らませている[出典 18]。複数出現したマタンゴ成体の中には、エノキタケに似た形態の個体もいた[出典 19][注釈 13]。これは小松崎によるデザインに基づいた造形の着ぐるみである[43][48]が、1体しか製作されていないらしく、出番は少ない[注釈 14]。
キャスト

村井研二[出典 20]（城東大学心理学研究室の助教授）：久保明

関口麻美[出典 20]（歌手。笠井の愛人）：水野久美

作田直之[出典 20]（笠井産業の社員）：小泉博

小山仙造[出典 20]（臨時雇いの漁師）：佐原健二

吉田悦郎[出典 20]（新進の推理作家）：太刀川寛

笠井雅文[出典 20]（青年実業家。笠井産業の社長）：土屋嘉男

相馬明子[出典 20]（村井の教え子で婚約者）：八代美紀

マタンゴ[6]（難破船内の黒い影[23]）：天本英世

東京医学センターの医師[出典 21]：熊谷二良

警察関係者[6][注釈 15]：草間璋夫

東京医学センター医師[6][23]：岡豊

東京医学センター医師[出典 22]：山田圭介