マスメディア
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この状況の是正のため、マスメディアの見解・批判に対して反論の機会提供を請求することの出来る反論権や、メディアに個人の意見を反映させる、いわゆるアクセス権といった、ともすれば一般市民から遊離しがちなマスメディアに民衆からの声を反映させる権利も提唱されている[66]
地域的不均衡

マスメディアは世界のほぼすべての国に存在するが、普及率は地域的に大きく差があり、アメリカやヨーロッパ諸国、日本といった先進諸国では普及率が高く、発展途上国ではあまり普及が進んでいなかった[67]。しかし、発展途上国の経済成長によってその差は縮小しつつある。一例として、2000年ごろから経済成長の続くアジア、なかでもインド中国で新聞販売数が増加し、2007年には新聞の発行部数の1位が中国、2位がインドとなった[68]

マスメディアの量的不均衡こそ縮小しつつあるものの、より大きな問題としては情報の流れの不均衡がある。世界のニュースの流れはアメリカのAP通信やイギリスのロイター、フランスのAFP通信といった巨大な国際通信社が握っており、アメリカやヨーロッパからの一方的な情報発信は発展途上国側から非難されてきた[69]セネガル出身のユネスコ事務総長だったアマドゥ・マハタール・ムボウは1970年代後半に「新世界情報秩序」を提唱してこの状況の是正を訴え、途上国から強い支持を得たものの、この議論の中で東側諸国がジャーナリストの認可制の導入を提唱したこともあって、先進国からは報道の自由を制限するものだとして強い反対の声が上がった[70]。そしてこれを一番の原因として1984年にはアメリカが、次いで1985年にはイギリスおよびシンガポールがユネスコから脱退し[71]、新世界情報秩序はほとんど実績を上げることができないまま立ち消えとなって、南北の情報格差は温存されたままとなった[72]
マスメディアの将来

ボルチモア・サン紙の元記者、デイビッド・サイモンは、所詮インターネットに出ている情報は、既存メディアが流している情報をコピー&ペーストして、それに対し独自の意見を付け加えたものでしかなく、ネットのブロガーや市民記者は寄生虫のようなものだと指摘している。宿主となる既存メディアは、その寄生虫のため、自らの経営を蝕まれ、次第に一次的な情報を提供する既存メディアが弱体化し、社会に正確な情報が行き渡らなくなるという。サイモンは、そのためにも、既存メディアはネットでの情報発信を有料化するか、NPO化して市民の寄付などで経営を健全化していくべきだと主張している[73]

藤代裕之は、いくら個人メディアが増加しても、まとめサイトやネット上の事件を知らせるミドルメディアの登場が示しているように、人々が何を考えているのか情報を共有するマスメディアのようなメディアはなくならないと主張している[74][注釈 3]。また藤代は、マスメディアが凋落してきても、社会の問題を掘り下げ、人々に伝えるという役割の重要性が低下するわけではなく、むしろ誰もが情報を発信でき、膨大なコンテンツが流通する時代になったからこそ、その人にしか表現できないコンテンツを作れる「プロ」と、重要な情報を選び出す「編集」の重要性が増すとも主張している[75]

『空気』を作って、社会的・政治的に相手を潰せるため『メディア自体が権力』との批判の声がある[76]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ マスメディアは正確な内容を伝えているとは限らない。内容は正しいこともあれば誤っていることもある。「マスメディア」は定義のとおり、あくまで、大衆に対して大量に伝えている、というだけである。
^ 雑誌への投稿は編集部の選別を通る必要があるため一定水準以上の文章を書かなけければいけないという規範が読者に植えつけられるが、SNSは自由気ままに書けるため質が低くなりがちでそれが世論形成にマイナスの影響を与えるという指摘もある[54]
^ しかし既存メディアは双方向ではなく一方的な報道のため、大衆の意見はこうであろうというマスコミの独断にもとづく視点であり、かならずしも人々が何を考えているのか情報を共有するものではない。

出典^ a b 広辞苑第七版「マス・メディア」
^ a b c ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『マス・メディア』 - コトバンク
^ 広辞苑第七版「マス・コミュニケーション」
^ 広辞苑第七版「マス・コミ」
^ 「図説 本の歴史」p46 樺山紘一編 河出書房新社 2011年7月30日初版発行
^ 「よくわかるメディア法 第2版」p2 鈴木秀美・山田健太編著 ミネルヴァ書房 2019年5月30日第2版第1刷発行
^ 「歴史の中の新聞 世界と日本」門奈直樹 p14(「新聞学」所収)日本評論社 2009年5月20日新訂第4版第1刷
^ 「ジャーナリズムの社会的意義と新しいメディア」鈴木謙介 p131(「新聞学」所収)日本評論社 2009年5月20日新訂第4版第1刷
^ 「出版メディアの変遷」p147 長谷川一(「新 現代マスコミ論のポイント」所収)天野勝文・松岡新兒・植田康夫編著 学文社 2004年4月10日第一版第一刷
^ 「無線通信の世界」スティーヴン・カーン(「歴史の中のコミュニケーション メディア革命の社会文化史」所収)p253 デイヴィッド・クロウリー、ポール・ヘイヤー編 林進・大久保公雄訳 新曜社 1995年4月20日初版第1刷
^ 「初期の電話利用」キャロライン・マーヴィン(「歴史の中のコミュニケーション メディア革命の社会文化史」所収)p191-198 デイヴィッド・クロウリー、ポール・ヘイヤー編 林進・大久保公雄訳 新曜社 1995年4月20日初版第1刷


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