政治面に限らず、人々への情報提供そのものが社会的に非常に重要なものである。マスメディアによって供給される情報は一般の人々にとっても、また専門職の従事者にとってもこれからどのような行動をとるかの参考となる[39]。
そのほか、マスメディアが供給するさまざまな娯楽も重要な意義のひとつである。映画やドラマ、スポーツの鑑賞などの直接的な娯楽のみならず、余暇やレジャーなどを楽しむための娯楽情報もマスメディアからは大量に発信されている。また、趣味や嗜好を満たすための文化や教養面の情報も発信され、教育的な機能も持っている。企業が自らの商品を売り込むための広告や、各団体が行う広報も、マスメディアでは大量に流される[40]。こうしたマスメディアによる画一的で一方的な大量の情報の提供は、市民の受け取る情報を一様なものとすることで広汎な共通文化市場を生み出し、人々が広く愉しむ大衆文化を成立させた[41]。人々が受け取る同一の情報はお互いの間に共通の話題を成立させ[39]、またある対象に対する人気や、広告やCMと結びつくことで流行を生み出すこととなった[42]。
経営NHK放送センター。NHKは受信料で運営される
マスメディアの収入源には大きく分けて、情報の発信側から受け取る広告料と、受け手に課金する料金(受信料、購読料など)、そして事業収入などのその他収入がある。この収入の割合はメディアによって異なり、たとえば日本においては新聞社は平均で販売収入が52.7%、広告収入が30.8%(2006年)となっており、どちらからも収入があるが販売収入の方がやや主となっている[43]。これに対し、ヨーロッパやアメリカの新聞社の収入の8割は広告からのものとなっており、広告に依存する収入体系となっている[44]。
新聞と異なり、放送は課金手段が様々ある。民間放送にも広告料での運営と受信料での運営の2形態があり、公共放送はBBCやNHKのように受信料のみで運営する局のほか、広告料と受信料の両方受け取る局、政府交付金を受ける局など、国によって収入源が異なる[45](公共放送の項参照)。衛星放送や有線放送の場合、ペイ・パー・ビュー方式などで視聴者に課金する局もある[46]。
ネットの発達と利用者の増加で、既存メディアは広告や情報の受信手段としての役割をネットと競合するようになり[47]、全体的なメディアの傾向として、収入は頭打ちか減少傾向にある[48][49]。アメリカの新聞社では減少傾向が顕著で、ニューヨーク・タイムズは巨額の赤字を出し、本社社屋の売却などのリストラを進めている[24]ほか、2009年には、クリスチャン・サイエンス・モニター[24]、シアトル・ポスト・インテリジェンサー、ロッキーマウンテン・ニュースが経営難で日刊紙の発行を取りやめた。
メディア産業は、出版がやや小規模の資本でも行えることを除けばいずれも巨大な資本を必要とするため、企業の大規模化が進んでいる[50]。さらに大規模化した企業は同業他社の買収や系列化、他メディアへの進出、さらにはコンテンツ産業であるプロ野球(球団)やサッカー、所有不動産の賃貸、まったくの別分野である旅行会社やホテルなどへの多角化を行い、巨大なメディア・コングロマリットを形成しているところも多い[51]。こうしたメディア・コングロマリットは経営の安定をもたらす一方で、メディアの寡占化が進み健全な言論空間の構築に悪影響をもたらす恐れがあるため、独占禁止法以外にもさまざまな規制が導入されている。一例として、日本の放送法93条においてはマスメディア集中排除原則が定められ、過度の系列化を禁じている[52]。 以下、現代におけるマスメディアを媒体別に区分する。
主なマスメディア
電波を媒体とするマスメディア
テレビ
ラジオ
携帯電話
紙を媒体とするマスメディア
新聞
雑誌(特に週刊誌)
フリーペーパー