マスメディア
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ハロルド・ラスウェルはマスメディアの機能を、社会環境の現状や変化に対し情報を伝え警告を発する「環境の監視」、社会環境に関して構成員間の意見を整理し世論を形成させる「構成員の相互作用」、そして価値観や社会的規範、知識などを次の世代へと繋いでいく「社会的遺産の世代的伝達」の3つに分類した[25][26]

ウィルバー・シュラムは同様に、マスメディアの機能を「見張りの機能」、「討論の機能」、「教師の機能」の3つとした[27]

ロバート・キング・マートンポール・フェリックス・ラザースフェルドは、マスメディアの機能を、人物や事象を社会的に認知させる「地位付与の機能」、道徳や法を人々に認知させ従わせる「社会規範の強制機能」、そして大量の情報によって人々の感覚を麻痺させ社会への関心をなくさせる「麻酔的悪作用」の3つであるとした[28][29]
意義

マスメディアには様々な社会的意義が存在する。
政治面

特に政治において、マスメディアは大きな役割を持っている。政治におけるマスメディアの役割としては、自らの意思によって政治的な事実を報道・解説することによって、一般市民に政治的判断の基準を提供することがあげられる[30][31]。この機能によって、18世紀末ごろには世論が明確に形成されるようになり[32]、19世紀のヨーロッパにおける新聞をはじめとするマスメディアの発達は、ナショナリズムの成長や大衆の国民化へとつながり、国民の政治意識の向上と民主主義の発達をもたらした[33]。こうした政治的機能の巨大さから、マスメディアは立法司法行政と並ぶ「第四の権力」と評されることも多い[30]

また、マスメディアの政治に対する影響は、それが政府や権力側を利するものであるという批判と、逆に少数派の意見をくみ取ることができるとする擁護論の双方が存在する[34]。権力を監視し批判することこそマスメディアの使命であるとする考え(ウォッチドッグ機能)も存在するが、権力批判を至上命題とした場合ともすれば権力に従わない犯罪者をも擁護することになりかねず、善悪の転倒が起きる場合がある[35]。政治家がマスメディアに向けて単純だがわかりやすいパフォーマンスを行い、選挙民がそれに強く影響される、いわゆるポピュリズムの問題も指摘されている[36]

民主国家のみならず独裁制においてもマスメディアは大きな役割を持ち、こうした独裁国家では政府に指導・統制されたマスメディアは情報操作により世論を政府寄りに保ち続ける社会統制のあからさまな道具となっている。なかでもファシズムにおいてはマスメディアは非常に重要な役割を持ち、ナチス・ドイツなどではマスメディア、特にラジオでのプロパガンダを通じて世論を操作した[37]。ただし常にマスメディアが独裁国家に有利な役割を果たすとは限らず、逆に1970年代以降、発達したマスメディアから他国の政治情勢を入手することで国民の自国の政治体制に対する不満が高まり、連鎖的に民主化が起こることにもなった[38]
その他

政治面に限らず、人々への情報提供そのものが社会的に非常に重要なものである。マスメディアによって供給される情報は一般の人々にとっても、また専門職の従事者にとってもこれからどのような行動をとるかの参考となる[39]

そのほか、マスメディアが供給するさまざまな娯楽も重要な意義のひとつである。映画ドラマスポーツの鑑賞などの直接的な娯楽のみならず、余暇やレジャーなどを楽しむための娯楽情報もマスメディアからは大量に発信されている。また、趣味や嗜好を満たすための文化や教養面の情報も発信され、教育的な機能も持っている。企業が自らの商品を売り込むための広告や、各団体が行う広報も、マスメディアでは大量に流される[40]。こうしたマスメディアによる画一的で一方的な大量の情報の提供は、市民の受け取る情報を一様なものとすることで広汎な共通文化市場を生み出し、人々が広く愉しむ大衆文化を成立させた[41]。人々が受け取る同一の情報はお互いの間に共通の話題を成立させ[39]、またある対象に対する人気や、広告やCMと結びつくことで流行を生み出すこととなった[42]
経営NHK放送センター。NHKは受信料で運営される

マスメディアの収入源には大きく分けて、情報の発信側から受け取る広告料と、受け手に課金する料金(受信料、購読料など)、そして事業収入などのその他収入がある。この収入の割合はメディアによって異なり、たとえば日本においては新聞社は平均で販売収入が52.7%、広告収入が30.8%(2006年)となっており、どちらからも収入があるが販売収入の方がやや主となっている[43]。これに対し、ヨーロッパやアメリカの新聞社の収入の8割は広告からのものとなっており、広告に依存する収入体系となっている[44]

新聞と異なり、放送は課金手段が様々ある。民間放送にも広告料での運営と受信料での運営の2形態があり、公共放送はBBCやNHKのように受信料のみで運営する局のほか、広告料と受信料の両方受け取る局、政府交付金を受ける局など、国によって収入源が異なる[45](公共放送の項参照)。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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