マスト
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フォアマストはローマ海軍ガレーで一般的となったが、形状は大きく前傾しておりバウスプリットと同義であり、推進力を得ることより舵とりの補助として使用された[1][2]メインセイルと上にトップセイルを張る構造は、ローマ帝国時代の大型遠洋航海貨物船で発展した[3]

最も古い3本マストの帆船で記録に残っているのは、紀元前240年ごろにヒエロン2世に委任されたアルキメデスが考案した古代ギリシアのSyracusiaと、紀元前200年ごろにアレクサンドリアオスティアの間で穀物を運んでいたシラクサ商船であった[4]。ただし、古典古代においてメインマスト以外は大きく傾斜しており、推進力を得る道具として重要なものではなかった[3]。船体に対して垂直なマストを持つようになるのは古代末期以降である[3]

中世前期になると、地中海航海において帆装形式は大きな変化を迎える。ギリシア文化を受け継いだローマ文化圏では、古代文明で使われたあと14世紀まであまり使われなくなっていた縦帆が再登場した[5][6]。2本マストにラテンセイルを持つ東ローマ帝国海軍のデュロモイは、船体中央に12メートル、後方に8メートルのマストを持っていた。

中世後期には巨大化する船体を制御するために、より多くのマストを持つ帆船が地中海地域で求められるようになった。14世紀中頃にはヴェネチアバルセロナにおいて3本マストの帆装が採用されていたことを示す絵が残っている。15世紀初頭には3本マストの帆装形式が確立され、大規模な外洋航海を可能とするための先進的な設計技術が発展していった[7]
現代の帆走用マスト

19世紀になると、安定した推進力を得ることが出来る蒸気機関20世紀にはディーゼル機関などに地位を奪われていったが、娯楽用の帆船ヨットでは使用され続けている。1930年代にはJクラスヨットでアルミニウム合金製のマストが登場した。アルミは木材よりも軽く、丈夫で、腐敗しないという利点があるため、より高いマストを作ることができた。第二次世界大戦後、アルミ製マストは全ての小型帆船とヨットで一般的となった。また、ヨット用のマストはセイルの能力を最大限発揮させるため(帆が大きく膨らむよう)、作為的に曲げてあったり、帆走中にしなるような構造になっている。

1990年代中頃のレース用ヨットには、より軽さを重視して炭素繊維強化プラスチック(カーボンファイバー)を素材に用いるようになった。カーボンファイバー製マストはアルミと比較して空気力学的に優れた形状へと加工しやすかった。
帆走用以外のマスト

蒸気機関の発達により帆走機能を持たない船が造られるようになっても、高い位置に設置する必要がある信号旗や航海灯などのためにマストは設置され続けその名称は残された。さらにレーダー、通信アンテナの取り付けも行われるようになった。高い場所にさえあれば良いため、高い位置にある船橋の上に短いマストが設置されている船もある。軍艦では一時期高くなった艦橋がその代わりとなり、測距儀やレーダーが設置された(英語版パゴダマストも参照)。また、煙突とマストを一体化させたマック(Mack:mast(マスト)とstack(煙突)を足し合わせた造語)と呼ばれる構造も一時期広く使われていた。
船以外のマスト帆を張ったロールバッハ Ro II

ロールバッハ金属飛行機の設計した一部の飛行艇には取り外しできるマストがあり、着水後に帆を張ることで低速ながら帆走が可能だった。
脚注[脚注の使い方]
注釈
^ 1845年にアメリカで造られたスループが最初で、92フィートの高さを持っていた。

出典
^ Casson, Lionel (1980): "Two-masted Greek ships", The International Journal of Nautical Archaeology, Vol. 9, No. 1, pp. 68?69 (69)
^ Casson, Lionel (1963): "The Earliest Two-masted Ship", Archaeology, Vol. 16, No. 2, pp. 108?111 (109)
^ a b c Casson, Lionel (1995): "Ships and Seamanship in the Ancient World", Johns Hopkins University Press, ISBN 978-0-8018-5130-8, pp. 239?243
^ Casson, Lionel (1995): "Ships and Seamanship in the Ancient World", Johns Hopkins University Press, ISBN 978-0-8018-5130-8, p. 242, fn. 75
^ Casson, Lionel (1995): "Ships and Seamanship in the Ancient World", Johns Hopkins University Press, ISBN 978-0-8018-5130-8, pp. 243?245
^ Pryor, John H.; Jeffreys; Elizabeth M. (2006): "The Age of the ΔΡΟΜΩΝ. The Byzantine Navy ca. 500?1204", The Medieval Mediterranean. Peoples, Economies and Cultures, 400?1500, Vol. 62, Brill Academic Publishers, ISBN 978-90-04-15197-0, pp. 153?161
^ Mott, Lawrence V. (1994): "A Three-masted Ship Depiction from 1409", The International Journal of Nautical Archaeology, Vol. 23, No. 1, pp. 39?40

関連項目.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキメディア・コモンズには、マストに関連するカテゴリがあります。

帆船

ヨット

クロウズネスト(英語版) - マストに設置される見張り台。列車の車掌車の展望席も同名(もしくはエンジェルシート)で呼ばれる。

ハルダウン - 水平線で船体を隠し、クローズネストから遠方を確認する技術。

先進型閉囲マスト/センサー

セントエルモの火 - 天気が悪い時に船のマストなど尖ったものが光る現象

石廊崎権現の帆柱 - 石室神社の基礎になっているマストの伝説

森田公一とトップギャラン - 一部が名称の由来となっている。










帆船
帆装

カッター

キャットボート(英語版)

ケッチ

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