マザー・グース
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1697年フランス詩人作家シャルル・ペローが8つのおとぎ話をまとめた童話集『昔ばなし(フランス語版)(Histoires ou contes du temps passe )』をパリで出版した[15][注 4]。それを1729年[15]イギリス人作家ロバート・サンバー(英語版)が英訳し、"Histories, or Tales of Past Times [24][25]と題して母国に紹介した。その本の口絵(■右に画像あり)は原著の口絵(■右に画像あり)と同じ趣旨で描かれている。暖炉のある部屋で糸車を回しながら幼子と若者に昔話を語って聞かせるお婆さんの様子を表現しているのであるが、原著の口絵にある分厚い木製扉の高い位置に取り付けられている飾り板には「鵞鳥かあさんのお話」を意味する "contes de ma mere l'oye([15]音写例:コントゥ・ドゥ・マ・メール・ロワ、コント・ド・マ・メール・ロワ、英訳:tales of mother goose [14])" というフランス語が記されており、英訳本では、この部分を同じ意味になるよう "mother goose's tales(音写例:マザー・グースィズ・テイルズ)" と言い換え、同書の副題(サブタイトル)にも採用した。のちにこのフレーズは本の表題(メインタイトル)に使われることにもなる。これが、以後 "Mother Goose" として固有名詞化してゆく英語フレーズの初出であった[22]。後述する伝説上の人物としての Mother Goose も全き同根語である。

サンバーの英訳本は18世紀中に何度も増刷されて広く読まれている[21]。アメリカでは世紀末の1794年になってようやく出版された。そして、こうしたことを背景に Mother Goose という言葉はまずはイギリスの人々に親しみをもって受け容れられ、伝承童話や童謡と結び付けられるようになっていったと考えられている[26]
ニューベリー

1765年には[15][27]、世界初の児童書専門出版者として名の知られたロンドンのジョン・ニューベリー(英語版)[28]によって『マザーグースのメロディ(原題:Mother Goose's Melody )』と題する童謡集が出版され[15][21]、以後、同じような童謡集や伝承童謡に対して Mother Goose という語を用いる慣行が普及・定着していった[21][27](仏語)"Illustration de ma mere l'Oye, par Gustave Dore
(英題)"Mother Goose reading written fairy tales"
鵞鳥とお婆さん

古来、フランスでは鵞鳥は民話や童話に頻繁に取り上げられる動物であり、また、イギリスでも家禽として重宝される動物であった。おとなしく比較的世話が楽なこの水鳥の面倒は各家庭のお婆さん(祖母やその他の老婆)の受け持ちというのが通例で、また、時間を持て余しているお婆さん(とにかく老婆)はしばしば伝承童話や童謡の担い手でもあることから、「鵞鳥」「童話・童謡」「お婆さん」という3つの要素が結び付いたものと考えられる[21][29]

つまり、言葉としては "mother(母さん)" を残したまま、"goose(鵞鳥)" が "grandma(婆さん)" を引き寄せたことで、その実、「母さん」のイメージは「婆さん」に置き換えられたということになる。

右に示した画像は、19世紀のフランス人画家ギュスターヴ・ドレがシャルル・ペローの童話集『昔ばなし』に自筆の41枚のエッチングを添えた昔ばなし "Les Contes de Perrault " 1866年エディションにおける、口絵の一つである。原語(フランス語)の呼称からは、孫たちに囲まれたお婆さんがペローの童話を読み聞かせている場面をイメージしていることが分かる。しかし、英語では「書かれたおとぎ話を読み聞かせるマザーグース」と名付けられている一図である。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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