橄欖岩中で生成した玄武岩質マグマは周囲の岩石より比重が軽いので徐々に上昇してゆく。火山の下にはマグマが集積したマグマ溜りがあって、マグマはそこで停滞する。この上昇・停滞中に、マグマの化学組成はさまざまに変化する。このプロセスをマグマの分化と呼ぶ。地下深部から上昇したマグマは周囲から徐々に冷やされて温度が下がってゆく。玄武岩質マグマは多様な成分を含んだ混合物なので、温度が低下するにつれて特定の成分が結晶を形成して固化する。固体化した結晶は一般的に液体部分より比重が高いので、マグマ溜りの底に沈降してゆく。結晶化した成分が抜けた後の液体部分は、本源マグマとは異なった化学組成となる。実際には、本源マグマからまず有色鉱物の橄欖石や輝石と無色の斜長石が晶出し、次に有色の角閃石と無色の正長石が析出してくる。これらの結晶が析出するにしたがってマグマ中の二酸化ケイ素の比率が上昇してゆく。
別の分化プロセスとして、高温のマグマ溜りが周辺の岩石を溶融させて混合する場合も考えられる。厚い地殻を有する大陸や日本列島では、玄武岩質マグマが熱源となって二酸化ケイ素に富んだ地殻成分を融解させ、混合して、多様なマグマを形成すると考えられる[11]。
マグマ中の揮発性物質北海道のアトサヌプリの火山ガスの噴気、水蒸気が白く見える。噴気孔周辺にはガスに含まれていた硫黄が堆積している。
マグマ中には揮発性物質が含まれている。物質としては水と二酸化炭素を主体とし、その他硫黄、塩素などの成分が溶解している。これらの成分は一般的にマグマ中の鉱物結晶に取り込まれないため、マグマの分化プロセスが進行してもマグマの液体部分に残る。またマグマが冷却固化するときには揮発性成分は岩石(火成岩)に残らず火山ガスなどの形で放出される。揮発性物質の構成比はマグマと同様に多様であるが、プレート沈み込み帯のマグマの揮発性成分には、他の地域のものに比べて水と塩素が多い傾向がある。これはこの地域のマグマの生成に海水が影響していることを反映している[12]。 地球が多数の微惑星や惑星胚が衝突・集合してできた46億年前には、衝突エネルギーによる高温で地球表面の岩石が溶解してマグマオーシャンを形成していたと考えられる[13]。月ができた原因を原始地球と他の惑星との衝突にあるとするジャイアント・インパクト説では、衝突の直後は地球全体が高温となって地球全体を覆うマグマオーシャンが形成されたとされる。地球は誕生時の温度が最も高く現在も徐々に冷えているため、20億年以上前には現在のどのマグマよりも高温(1600℃)でマグネシウムを多く含むコマチアイトマグマが形成された[14]。
過去の地球におけるマグマ
マグマオーシャン詳細は「マグマオーシャン(英語版
惑星表層の珪酸塩部分が融けた状態になり、マグマの海が形成された状態をマグマオーシャン
という。地球では、その形成の最終段階でジャイアント・インパクトを経験した際に、マグマオーシャンが形成されたとの説がある[15]。