マグニチュード
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1979年、当時カリフォルニア工科大学地震学の教授であった金森博雄と彼の学生であったトーマス・ハンクス(英語版)は、従来のマグニチュードは地震を起こす断層運動地震モーメント (M0) と密接な関係があり、これを使えば大規模な地震でも値が飽和しにくいスケールを定義できるという金森のアイデア[13]をモーメント・マグニチュード (Mw) と名付け、以下のように計算される量として発表した[14]。 M w = log 10 ⁡ M 0 − 9.1 1.5 {\displaystyle M_{\mathrm {w} }={\frac {\log _{10}M_{0}-9.1}{1.5}}} (ただし M0 = μ × D × S)

S は震源断層面積、D は平均変位量、μ は剛性率である。

これまでに観測された地震のモーメント・マグニチュードの最大値は、1960年に発生したチリ地震の9.5である[13]

断層面の面積(長さ×幅)と、変位の平均量、断層付近の地殻の剛性から算出する、まさに断層運動の規模そのものである。

他の種類のマグニチュードでは、M8を超える巨大地震で地震の大きさの割りに値が大きくならない「頭打ち」と呼ばれる現象が起こる。モーメント・マグニチュードはこれが起こりにくく、巨大地震の規模を物理的に評価するのに適しているとされ、アメリカ地質調査所 (USGS) をはじめ国際的に広く使われている。

日本の気象庁では、2011年に発生した東北地方太平洋沖地震に対して、地震の規模をより適切に表せるとして、下記の気象庁マグニチュード (Mj8.4) に加え、モーメント・マグニチュードの計算値 (Mw9.0) を発表した。
気象庁マグニチュード Mj詳細は「気象庁マグニチュード」を参照

気象庁マグニチュードは、日本で国としての地震情報として使用されており[15]、2003年の約80年前まで遡って一貫した方法で決定され、モーメント・マグニチュードともよく一致している[16]。略称としてMj、或いはMJMAが使われる。

気象庁マグニチュードは周期5秒までの強い揺れを観測する強震計で記録された地震波形の最大振幅の値を用いて計算する方式で、地震発生から3分程で計算可能という点から速報性に優れている。一方、マグニチュードが8を超える巨大地震の場合はより長い周期の地震波は大きくなるが、周期5秒程度までの地震波の大きさはほとんど変わらないため、マグニチュードの飽和が起き正確な数値を推定できない欠点がある[17]東北地方太平洋沖地震では気象庁マグニチュードを発生当日に速報値で7.9、暫定値で8.4と発表したが、発生2日後に地震情報として発表されたモーメント・マグニチュードは9.0であった[18]
2003年9月24日以前

2003年9月24日までは、下記のように、変位マグニチュードと速度マグニチュードを組み合わせる方法により計算していた。
変位計 (h ≦ 60 km) の場合
M j = log ⁡ A + 1.73 log ⁡ Δ − 0.83 {\displaystyle M_{j}=\log A+1.73\log \Delta -0.83} (A は周期5秒以下の最大振幅)
変位計 (h ≧ 60 km) の場合
M j = log ⁡ A + K ( Δ , h ) {\displaystyle M_{j}=\log A+K(\Delta ,h)} (K(Δ, h) は表による)
速度計の場合
M j = log ⁡ A Z + 1.64 log ⁡ Δ + α {\displaystyle M_{j}=\log A_{Z}+1.64\log \Delta +\alpha } (AZ は最大振幅、α は地震計特性補正項)
2003年9月25日以降

変位マグニチュードは、系統的にモーメント・マグニチュードとずれることがわかってきたため、差異が小さくなるよう、2003年9月25日からは計算方法を改訂し(一部は先行して2001年4月23日に改訂)、あわせて過去の地震についてもマグニチュードの見直しを行った。
変位によるマグニチュード
M d = 1 2 × log ⁡ ( A n 2 + A e 2 ) + β d ( Δ , H ) + C d {\displaystyle M_{d}={\frac {1}{2}}\times \log({A_{n}}^{2}+{A_{e}}^{2})+\beta _{d}(\Delta ,H)+C_{d}} (An, Ae の単位は 10?6 m)

ここで、βd は震央距離と震源深度の関数(距離減衰項)であり、H が小さい場合には坪井の式に整合する。Cd は補正係数。
速度振幅によるマグニチュード
M v = α × log ⁡ ( A z ) + β v ( Δ , H ) + C v {\displaystyle M_{v}=\alpha \times \log(A_{z})+\beta _{v}(\Delta ,H)+C_{v}} (Az の単位は 10?5 m/s)

ここで、βv は Md と連続しながら、深さ 700 km、震央距離 2000 km までを定義した距離減衰項である。Cv は補正係数。
特殊なマグニチュードの種類

マグニチュードを厳密に区別すると、その種類は40種類以上に及ぶ[19]が、ここでは特徴的なものを記載する。
地震動継続時間から求めるマグニチュード

地震記象上で振動が継続する時間 Td はマグニチュードとともに長くなる傾向がある。そこで一般に、 M = c 0 + c 1 log ⁡ T d + c 2 Δ {\displaystyle M=c_{0}+c_{1}\log T_{d}+c_{2}\Delta }

の式が成り立つ。c0, c1, c2 は定数、Δ は震央距離である。c2Δ は小さいため、第3項を省略することもある。

過去には河角のWiechert式地震計に対しての式 M = 4.71 + 1.67 log ⁡ T d {\displaystyle M=4.71+1.67\log T_{d}}

などが提案されている。

地震波記録の回収や解析に多大な労力を要した1970年代頃までは、1つの地震計記録からマグニチュードを概算する方法として、気象台・観測所などで利用された。ただし各定数は地震計の特性に大きく依存するため、短時間で多くの地震波記録を扱うことができる現在ではこの式はほとんど用いられない。
有感半径から求めるマグニチュード

グーテンベルクとリヒターは、南カリフォルニアの地震について、有感半径 R を用いて、 M = − 3.0 + 3.8 log ⁡ R {\displaystyle M=-3.0+3.8\log R}

の式を得ている。

日本でも市川が日本の浅発地震に対して M = − 1.0 + 2.7 log ⁡ R {\displaystyle M=-1.0+2.7\log R}

を与えている。なお、R は飛び離れた有感地点を除く最大有感半径 (km) である。
震度4, 5, 6の範囲から求めるマグニチュード

気象庁の震度で、4以上、5以上、6以上の区域の面積 (km2) をそれぞれ S4、S5、S6 とするとき、勝又護と徳永規一は log 10 ⁡ S 4 = 0.82 M − 1.0 {\displaystyle \log _{10}S_{4}=0.82M-1.0}

という実験式[20]、村松郁栄は log 10 ⁡ S 5 = M − 3.2 {\displaystyle \log _{10}S_{5}=M-3.2} 、 log 10 ⁡ S 6 = 1.36 M − 6.66 {\displaystyle \log _{10}S_{6}=1.36M-6.66}

という実験式を得ている[21]

河角廣は震央からの距離 100 km における平均震度を MK と定義し、リヒタースケールとの間に M = 4.85 + 0.5 M K {\displaystyle M=4.85+0.5M_{K}}

の関係があるとした。また震央距離と震度、マグニチュードの間には以下の関係があるとした[22]。 I = 2 M − 4.605 log 10 ⁡ Δ − 0.00166 Δ − 0.32 {\displaystyle I=2M-4.605\log _{10}\Delta -0.00166\Delta -0.32} (I: 気象庁震度階級, Δ: 震央距離 [km])

これらは地震計による記録がなかった歴史地震のマグニチュードを推定する際に有効である。家屋被害に関する文献記録から各地域の震度を求め、それをもとにマグニチュードを推定する。
微小地震のマグニチュード

微小地震については上記の Ms、Mb、Mj などでは正確な規模の評価ができない。


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