マインドコントロール
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そのため、良いマインドコントロールと悪いマインドコントロールがあるという考え方もあるが、一般的には、「破壊的カルト」等のように何らかの詐術的な意味、他者を騙す性格を持ったものをマインドコントロール、本人に役立つ心理学の応用をセルフコントロールと言う[2][14]。本項では前者について説明する。

マインドコントロール論では、支配された人の意識状態は、普段の正常な意識とはかけ離れたものになるとされる[10]。(1) 破壊的カルト教団による信者の利用、(2) 社会心理学的技術の応用、(3) 他律的行動支配 の3つが一般定義である[10]。人格の「解凍・変革・再凍結」の理論をベースに、認知不協和理論や影響力論、ジャック・ヴァーノンの感覚遮断実験、フィリップ・ジンバルドー監獄実験、プライミング効果論などの社会心理学的テクニックを活用して行われるとされる[3]。宗教的自我変容を最も世俗的理解に立って説明したモデルであり、世間に広く知られている[10]

精神科医ロバート・ジェイ・リフトン中国共産党が行っていたマインドコントロールに8つの要素を認めた[15]

環境コントロール

密かな操作

純粋性の要求

告白の儀式

聖なる科学

特殊用語の詰め込み

教義の優先

存在権の配分

統一教会元信者で心理学者スティーブン・ハッサンは、認知不協和理論を元にマインドコントロールの4つの構成要素を定義した[15]

行動コントロール

思想コントロール

感情コントロール

情報コントロール

行動コントロールとは、個々人の身体的世界のコントロールであり、仕事、儀礼、その他個人が行う行為のコントロールとともに、住居や着用する衣服、食事、睡眠などの環境コントロールを含む。多くのカルト宗教は信者に対して非常に厳格なスケジュールを定めるが、これは行動コントロールの一種である。特定のグループは特色ある儀礼的行動のセットがあり、形にはまった話し方、身振り、表情などが求められる。もし誰かがその形から外れた行動を行うと、その人はグループのリーダーから非難される。内面の思想は支配できなくても、行動を支配すれば、感情と精神はそれについてくるのである[15]

思想コントロールは、メンバーに徹底的にそのグループの教えと新しい言語体系を教え込み、自分の心を「集中した」状態に保つための思考停止の技術を使えるようにすることである。典型的なカルト宗教では、そのカルトの思想・教義が入ってくる情報をフィルターにかけて、その情報をどのように考えるべきかを規制する。また、多くのカルト宗教では独特な言葉と表現である「詰め込み言語」をもっている。この特殊な用語は、信者と外部の人間に見えない壁を作り、メンバーに選民思想を植え付け、一般大衆から隔絶する役割がある。思想コントロールのもう1つの役割として、グループに批判的な情報をすべて遮断するようにメンバーをコントロールすることが挙げられる。もし、カルトのメンバーに伝わった情報がリーダーや教義やグループに対する攻撃だとみなされると、敵対勢力による陰謀であると認識され、適切には受け止められない[15]

感情コントロールは、人の感情の幅を巧みな操作で狭くしようとするものである。罪責感と恐怖感が、集団への順応と追従を作り出すための感情的手段として使われる。恐怖感を演出するためには、2つの手法が使われる。1つは外部の敵を作り出すことである。外部の敵の例として、地獄へさらっていく悪魔のような存在、諜報機関や敵対勢力の銃撃や拷問、強制的説得者などが想定される。もう1つは、リーダーに対する恐怖である。自分の仕事をしっかりやらなければ恐ろしいことが起こるという恐怖感は効果的である。あるカルトでは、メンバーの献身がゆるむと、核戦争などの大災害が起こると断言する。過去の罪や過去の誤った態度を告白させることも、感情コントロールの典型例である。もし、メンバーが離脱しようとすれば、その罪が引き合いに出されて、そのメンバーをふたたび従順にするために利用される。感情コントロールの一番強力な技術は、恐怖の教え込みである。もしグループを離脱すれば、発狂する、殺される、麻薬中毒になる、自殺するなどと教え込むことである[15]

情報コントロールは、ある人が受け取る情報をコントロールすることであり、これによってその人が自分で考える自由な能力を抑えることができる。多くのカルトでは、メンバーはカルトが作ったメディア以外には最小限しか接しない。メンバーの相互監視や密告も推奨され、不適切な言動はリーダーに報告するように指示される[15]

弁護士の郷路征記によれば、マインドコントロールは複数の心理効果を組み合わせて行われる[5]

希少性の原理

好意の原理

返報性の原理

社会的証明

一貫性の原理

権威

集団への同調

社会的比較の制限

催眠の技術

希少性の原理は、手にすることは難しいものは貴重なものであるので、それは貴重なものであると考えるメカニズムである。「数量限定」と宣伝したり、最終期限を設けたりすることが挙げられる。好意の原理は、自分が好意を持っている人の指示に従う心理効果である。人を操作して好意を持たせることも可能であるとされる。例えば、人は自分と共通点がある人に好意を持つ傾向があるため、マインドコントロールを試みる人間は、ターゲットの人間と似ていることを、ありとあらゆる方法で示すことで、目的を達成しようとする。その他にも、お世辞、協同行動、快適な情報との結びつけ、ランチョン・テクニック(会食)などが使用される。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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