マイノリティ
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アメリカ黒人公民権運動の一環として注目され、かつて黒人などを拉致し、その後も移民多く受け入れたアメリカ合衆国ではこの概念が急速に広まった。こうした地域では、単なる個人の経済的あるいは社会的地位の向上だけではなく、多民族・多人種・多宗教国家における、それぞれの集団の尊厳と地位の平等化が強く意識される。

また宗教も民族同様の大きな問題となる。例として、アメリカ合衆国ではこれまで年末の挨拶として、当り前のように「メリー・クリスマス」が使われてきたが、近年はこれが政治家だけでなく一般人の間でもポリティカル・コレクトネスに配慮する必要性から「ハッピー・ホリデーズ」に言い換えられることが少なくない。クリスマスキリスト教の宗教行事であるため、これを無頓着に使うことはキリスト教、つまり多数派の価値観の押し付けとされる。

一方でメキシコ出身のアメリカ人がアメリカ合衆国の国歌を、スペイン語に改訳[注釈 8] して歌ったときは保守派から大きな反発が起こった[8][9]
同化主義

フランスタイでは、少数派のアイデンティティを守るというよりも、みなを同じに扱うという同化主義の考え方を採っている。つまり、黒人であっても少数民族であっても「その国民であること」を問題とする。即ち、アメリカのように国家における主流派を権威を認めた上で少数派を尊重するというよりも、同じ国民である以上は出身地や宗教といった点が異なっても「同じ国民ならば同じ扱いを受けるべきだ」とする考え方である。

こういった考え方を採用する例は、一定の宗教や民族が圧倒的な大多数ではない国に多い。例えば、フランスではカトリックプロテスタントが同じ程度存在していたり、太古から「フランス人」が存在していたわけではないという事情が一つあるのと、抱え込んだ植民地を統率する目的で、(「宗教的」に対する)「世俗性」と「フランス語の使用」を絶対条件にしており、この2点については絶対に譲らない。

フランスは宗教色を抑制した結果、無神論者も相当数存在する一方で、伝統的なキリスト教文化を完全に消去するような動きには抵抗感が強く、例えば、イスラム教徒の女学生が頭部を隠すことを法律で禁止したり、トルコのEU加盟に執拗に反対したりするといった強い行動に出る。多文化主義の観点からはフランスの一元主義に対する批判が多く存在する。移民のフランス文化に対する同化を国家政策として奨励しているが、移民社会、特に一部の二世の間では不評である。タイの場合は、王室への忠誠心があれば、個人間の差異が特に重要視されないという特殊な事情がある。
日本の例「日本の民族問題」および「部落問題」も参照

日本人の社会的弱者集団の代表である被差別部落民に対する政策は、同一民族内の差別であったことや対応策が同化であったことなどの理由により、欧米のような異文化の地位的平等を求める運動ではなく「同胞融和」の問題とされていた。

珍しい問題として、日本では血液型性格分類に基づいた偏見・差別問題が存在する。

欧米でのマイノリティ問題において(文化的)同化[注釈 9] と、社会的な統合[注釈 10] の問題は非常に活発に議論されているが、日本では外国人の少なさゆえ、文化という要素はこれまでほとんど見られなかった(一方で「日本人の平均的な期待よりも外国人の割合は多い」とする説もある[10]
少数派の亀裂

「声高な少数派」のノイジー・マイノリティー: noisy minority)が「静かな大衆」サイレント・マジョリティ: silent majority)の意見の声をかき消して問題になる事もある[11]。また、アファーマティブ・アクションやポリティカル・コレクトネスの対象の偏りの結果、マジョリティ内で底辺に位置する弱者からは、政府やインテリは移民や女性やLGBT等ばかりを優遇し自らをないがしろにしているという反発意識が強くなることがある[12]。顕著な例がアメリカ合衆国であり、アファーマティブアクションなどには白人の貧困階級が含まれないなどの軋轢から[13]、多くの白人底辺層の労働者がトランプ大統領の支持に流れた[12]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ : identifiability
^ : differential power
^ : differential and pejorative treatment
^ : group awareness
^ : minority group
^ : minority
^ 人口における異性愛者の割合には諸説ある。人口の90パーセントとも言われるが、イギリスの若者に対して行われた調査では約半数が「自分は完全な異性愛者ではない」と回答した[要出典]。
^ 西: Nuestro Himno
^ : assimilation
^ : integration

出典^ a b 岩間 暁子、ユ ヒョヂョン「『マイノリティとは何か?概念と政策の比較社会学』への中原洪二郎氏の「書評」に答える」『理論と方法』第25巻第1号、数理社会学会、2010年、161-164頁、doi:10.11218/ojjams.25.161 。 
^ “2019年度「東大院生によるミニレクチャプログラム 第12回」社会的マイノリティとは何か”. 主催:東京大学大学総合教育研究センター / 東京大学附属図書館企画・協力:附属図書館学生ボランティア Academic Commons Supporter (ACS)講師二羽泰子. 2021年3月24日閲覧。
^ a b c d “ ⇒What is a Minority Group? What is a Minority Group?”. Richard T. Schaefer. 2021年3月25日閲覧。
^ 宮丸裕二「集団の持つ数と力 -実態におけるマジョリティ/マイノリティとその認識の間にある相関性」『マジョリティとマイノリティ 「専門演習」論文集』、中央大学法学部、2010年。 
^ Dworkin and Dworkin, 1999: 17?24
^ 全永評、「マイノリティのアイデンティティ、タイプ、そしてマイノリティ政策研究観点」、『政府学研究』 第13巻第2号、高麗大学校政府学研究所。2007, p. 108.
^ Rivas-Drake, Deborah; Syed, Moin; Umana-Taylor, Adriana; Markstrom, Carol; French, Sabine; Schwartz, Seth J.; Lee, Richard; Ethnic and Racial Identity in the 21st Century Study Group (2014-01). “Feeling Good, Happy, and Proud: A Meta-Analysis of Positive Ethnic-Racial Affect and Adjustment” (英語). Child Development 85 (1): 77?102. doi:10.1111/cdev.12175. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/cdev.12175. 
^ Holusha, John (2006年4月28日). ⇒“Bush Says Anthem Should Be in English ? New York Times”. The New York Times. ⇒http://www.nytimes.com/2006/04/28/us/28cnd-anthem.html?hp&ex=1146283200&en=2247ec7d92f885d7&ei=5094&partner=homepage 2006年4月28日閲覧。 
^ “Bush: Sing 'Star-Spangled Banner' in English ? CNN.com”. ⇒オリジナルの2006年5月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20060504051210/http://www.cnn.com/2006/US/04/28/bush.anthem.ap/index.html 2006年4月28日閲覧。 
^ ニューズウィーク誌 2006年9月第二号


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