マイケル・クライトン
[Wikipedia|▼Menu]
これ以降、テクノロジーが重要な主題になっていく。本作で1969年のアメリカ探偵作家クラブエドガー賞 長編賞を受賞した。

1969年には3作品を出版した。まず『生存率ゼロ』はアメリカ人放射線医が休暇でスペインに滞在中、貴重な美術品を捜しているギャング間の殺人的抗争に巻き込まれる話である。次は『アンドロメダ病原体』で、この作品でベストセラー作家として認識されるようになった。致死性の地球外微生物を研究する科学者チームを描いた小説で、この微生物に感染すると血が固まり2分で死にいたる。そのコード名が「アンドロメダ」で、成長するに従って生物学的性質を変化させる。ベストセラーとなり、2年後にはロバート・ワイズ監督で『アンドロメダ…』として映画化された。2008年には『アンドロメダ・ストレイン』としてテレビシリーズ化されている(製作総指揮はリドリー・スコットトニー・スコットフランク・ダラボン)。1969年の3作目は『毒蛇商人』で、医学的研究のために製薬会社や大学で使う蛇の輸入業者が蛇使いとしての特殊な技能を利用して密輸するという話である。蛇にメキシコの貴重な工芸品を飲み込ませるという手口である。また1969年にはJ・マイケル・クライトン名義でカート・ヴォネガットの『スローターハウス5』のレビューも書いている。

1970年にも3作品、『エデンの妙薬』、『ジャマイカの墓場』、Dealing: Or the Berkeley-to-Boston Forty-Brick Lost-Bag Bluesを出版。『ジャマイカの墓場』は翌年のMWA賞にノミネートされた[10]

1972年には2作品を出版。『サンディエゴの十二時間』は、中流のビジネスマンがアメリカ合衆国大統領暗殺を企て、致死性神経ガスの原料となる2つの化学物質を軍から盗み出す話である。『ターミナル・マン』は、発作を起こすと凶暴になりそれが収まったときその間の記憶を無くしているてんかん患者を描いた話である。その男の脳に電極を埋め込むというクライトンらしい話である。この作品は1974年に『電子頭脳人間』として映画化もされたが、小説も映画も評価はあまり高くない。

1975年に『大列車強盗』で19世紀を舞台にした歴史小説という新たなジャンルに挑戦した。これもベストセラーになった。1855年にヴィクトリア朝のイギリスで実際に起きた列車強盗事件(グレートゴールド強盗)を題材にしている。物語の大部分はロンドンで進行する。この小説は1979年にクライトン自身が監督して映画化され、ショーン・コネリードナルド・サザーランドが出演した。この映画はアメリカではアメリカ探偵作家クラブのエドガー賞最優秀映画賞を受賞し、イギリス撮影監督協会のBest Cinematography Awardにノミネートされた。

1976年の『北人伝説』は10世紀のムスリムヴァイキングの一団と共に旅をし、ヴァイキングの居住地を訪れる話である。古い文献に科学的論評を加えた形式で語られる物語であり、2つの文献が発想の元になっている。前半3章はアフマド・イブン・ファドラーンの北方への旅行記とルーシ族との出会いに基づいており、後半は『ベーオウルフ』に基づいている。クライマックスで敵となるグレンデルの正体をネアンデルタール人の生き残りとしている。この小説は『13ウォーリアーズ』として映画化された。当初ジョン・マクティアナンが監督を務めていたが、クライトンが監督を引き継いだ。

1980年の『失われた黄金都市』はコンゴの熱帯雨林でのダイヤモンドを求める探検を描いた話で、伝説の都市を発見し、凶暴なゴリラの種を発見する。これを原案として1995年に映画『コンゴ』が製作された。7年後に出版された小説『スフィア 球体』は、ある心理学者がアメリカ海軍に招かれアメリカ合衆国連邦政府の結成した科学者チームの一員となり、太平洋の海底で見つかった約300年前の異星人のものと思われる巨大宇宙船を調査する話である。この小説はSFとして始まるが、すぐに心理スリラーに変貌し、最終的には人間の想像力を探究するものになっている。この小説は1998年に『スフィア』として映画化され、バリー・レヴィンソンが監督した。クライトンの『ジュラシック・パーク』とその続編は映画化され大人気となった。これに関連したテーマパークは世界各地に作られた。写真はポーランドのテーマパークのもの

1990年にクライトンは『ジュラシック・パーク』を出版した。『アンドロメダ病原体』や『北人伝説』でも採用した偽書の体裁で書かれている。さらにコスタリカの西方にある島に作られた恐竜のテーマパークの崩壊した原因をカオス理論やその哲学的含意を使って解説している。コハクに閉じ込められたが吸った恐竜の血からDNAを抽出し、様々な恐竜が再生されたという設定である。

元々は大学院生が恐竜を再生させるという脚本を書いたクライトンだったが、結局恐竜やクローンについての興味を追究して長編小説にすることにした[11]スティーヴン・スピルバーグは1989年10月、クライトンと後にテレビドラマ『ER』となった脚本について議論していてこの小説のことを知った。本の出版前にクライトンは部数に応じた印税の他に150万ドルの原稿料を要求した。ワーナー・ブラザースティム・バートン監督)、ソニー・ピクチャーズリチャード・ドナー監督)、20世紀フォックスジョー・ダンテ監督)も映画化権争奪戦に加わったが[12]ユニバーサル・ピクチャーズとスピルバーグが50万ドルで映画化権を獲得した[13][14]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:79 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef