ポロニウム210
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210Poは自然放射性核種として魚介類に多く含まれるが、日本人は魚介類の消費量が多いこととその内臓を食する食習慣のため210Po の摂取量が220Bq/年と他国より多く、40Kよりも年間実効線量に対する寄与は大きい[18][19]UNSCEARの2000年報告書では食品摂取による210Poの預託実効線量の世界平均は年間摂取量30Bqについて0.021mSVと評価されているが、日本分析センターの2005年の評価では、日本人一人当たりの食品摂取による210Poの預託実効線量は年間摂取量85Bqについて0.058mSVである[20]

先述したとおり、210Poは崩壊時にほぼ純粋なアルファ線を放出し、ガンマ線はわずかしか伴わない[5]。210Poの検出には210Poを純粋分離した試料からアルファ線を測定するのが普通であるが、床に付着したものは、アルファ線が空気中をほとんど進まないため、2cm以内に検出器を置かないと検出が出来ない[4]。これらの性質は、暗殺目的に210Poを投与させるには極めて都合が良い。なぜなら、210Poを含ませた食品等を容器に入れると、アルファ線は紙1枚でも容易に遮断されるほど透過性が低いため外部に漏れず、透過性の強いガンマ線は微量過ぎてガンマ線測定器による検出は不可能であるため、検査を容易にすり抜ける事が可能であるためである。また、同様の理由で運搬者は被曝しないことも都合が良い。2004年に死亡したパレスチナ自治政府大統領のヤーセル・アラファート(ヤセル・アラファト)、2006年に死亡した元ロシア連邦保安庁職員のアレクサンドル・リトビネンコは、210Poが暗殺目的で使用されたものと疑われているケースである。両者はどちらも内臓系の障害が原因で死亡しており、体内や遺品から210Poが検出されている[8][21][22][23]。なお、先述したとおり210Poは静電気除去装置に使われるが、これの分解によって210Poを取り出すのは、特殊な装置が必要なことと、量が微量すぎるので現実的ではないとされる。210Poの投与による急性中毒で死亡させるには一般人には入手不可能なほどの大量の210Poが必要であり、したがって暗殺目的で210Poを使用する人は、原子力発電所で生成した多量の210Poを入手できる環境に関われる、例えば国家機関に従事している人物に限られる事になる[8][4]。なお、体内に摂取された210Poの推定には、排泄物からのバイオアッセイが唯一の方法である[4]。また、わずかな量で致死量に達し、自己の熱で容易に揮発し、しかも検出が困難である性質は、テロリストが汚い爆弾として利用するには都合が良いため、セキュリティの強化が検討されている[14]
その他[ソースを編集]

漸近巨星分枝星の内部で発生する元素合成であるs過程において、210Poは出現する最も重い元素である。実質的な安定同位体である209Biが中性子捕獲をすることで210Biに変化し、それがベータ崩壊することによって210Poが生成されるが、s過程における中性子捕獲は速度が遅いため、210Poが更なる中性子捕獲によってより重い元素を生み出す前に、210Poがアルファ崩壊してしまう。ウランやトリウムのようなより重い元素を生み出すのは、超新星爆発で発生するr過程においてである[24]
脚注[ソースを編集][脚注の使い方]
注釈[ソースを編集]^ ウランの地殻濃度は約2.4ppm
^ 210Poの原子量と半減期が既知のため、任意の質量あたりの放射能の値は計算が可能である。具体的には、1gの210Poは166兆Bqの放射能を持つ。詳しい計算はベクレルの項目を参照。
^ 天然ウランに含まれる234U235U238Uの1トンあたりの放射能はそれぞれ約230兆Bq、約800億Bq、約124億Bqであり、それらに同位体比をかければ合計の放射能が求まる。
^ ポロニウムの融点は254℃、沸点は962℃である。
^ いわゆる青酸カリ。

出典[ソースを編集]^ a b c d 桜井弘『元素111の新知識 第2版』講談社、2009年、.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-4-06-257627-7
^ a b c d e f セオドア・グレイ『世界で一番美しい元素図鑑』創元社、2010年、ISBN 978-4422420042
^ a b c d eThe NUBASE evaluation of nuclear and decay properties National Nuclear Data Center Archived 2008年9月23日, at the Wayback Machine.
^ a b c d e f g h i j k l m14.ポロニウム-210(210Po) 原子力資料情報室
^ a bPo Laboratoire National Henri Becquerel
^ a b c d John Emsley『元素の百科事典』丸善株式会社、2003年、ISBN 4-621-07262-5
^アルファ線イオナイザー IDEMA Japan
^ a b c d e Fact Sheet on Polonium-210 United States Nuclear Regulatory Commission
^Radioisotope Power: A Key Technology for Deep Space Exploration cdn.intechopen.com


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