ポリポジオゾア綱
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外側の覆いの部分はTrophamunionと呼ばれる(Tropho-;栄養の/amnion;羊膜)、この膜は厚みが6-10?で、卵黄を含んだ卵細胞の細胞質に密着している[8]。この膜の表面は1層の細胞膜からなるが、この膜は多数の突出部を持ち、それらは時に著しく長くなって宿主細胞の細胞質に入り込んでいる。Trophamunion の細胞質には多数の微小管が含まれ、特に核の周囲と外側の表面近くに集中する。またミトコンドリアも多く存在し、それらは管状のクリスタと濃密なマトリックスを含む。クリスタは往々に縦方向に配置し、その形は宿主細胞のものともこの胚の他の部分とも異なっている。またその細胞質には宿主細胞から取り込まれた卵黄の小球が多数含まれる。
体制

寄生中のストロン状態では内外二層の細胞からなり、内側が外胚葉、外側が内胚葉である。
分布

本種は19世紀末にロシアから発見され[9]、主要な河川で報告され、またルーマニアからも知られている[10]。北アメリカではHoffman(1974)がミシガン州で最初に報告し、またイランからの報告もあり、これらの宿主はチョウザメ属のものである[11]。また北アメリカではヘラチョウザメにも感染することが知られており、この両者に寄生して発見される北アメリカにおける本種の分布域はカナダとアメリカ合衆国に跨がり、太平洋岸からハドソン湾、それに太平洋岸へと流れる河川までにわたる[11][3]
系統と分類の問題

この動物の分類上の位置については、現在も議論が多い[12]

その一つはこの動物が刺胞動物(それ以前には腔腸動物)に所属する、との判断である。文献でも表題に「Cnidarian Parasite(刺胞動物の寄生体)」を取ったものが数多くある。これはその形態からの判断であり、特に刺胞を持つことが重視され、古くから定説とされた。例えばLipinは1925年に鉢虫綱 Schyphozoaに含まれるとの判断を出し、あるいはBerrillは1950年に剛クラゲ目 Narcomedusaeの1つとの判断を示していた[13]。他方で刺胞動物ではあるが独立の群、Polypodiozoa とする判断もあった。ただし自由生活の成体の形態を見ると、それは確かに刺胞動物らしく思われるものの、それがクラゲとポリプのどちらに当たるものかははっきりしない。この仮説は20世紀末になされた形態とリボソームRNAの塩基配列に基づく分岐分類的解析でも支持され、この動物は刺胞動物のクレードに収まった。ただしこのときの結果では明らかに刺胞動物ではないセンモウヒラムシもここに収まってしまい、問題があることも明かだった。

もう1つの仮説はこの動物が粘液胞子虫の姉妹群ではないか、というものである。粘液胞子虫とは魚介類に被害を与える病原微生物として発見され、古くは原生動物の胞子虫類とされた。特徴はその胞子に刺胞に似た長い糸の入った袋である極嚢を持つことであり、また単細胞の状態が生活の中心でありながら生殖細胞には複数細胞からなる構造を作る例がある。近年の分子系統から単細胞生物ではあるが後生動物が起源と考えられるようになったものである。この類とポリポジウムが姉妹群をなす、との判断は18s rRNA を用いた分子系統の研究から出された。ただしポリポジウムも粘液胞子虫も、いずれもが18s rRNA の塩基配列が通常より高い塩基置換率を持つことから、ロングブランチアトラクションによって正しい結果が得られない恐れが高いと複数者からの指摘がある。

現時点では刺胞動物に含まれるとする判断が支持されている。この動物が刺胞動物であるとすれば、唯一の細胞内寄生性の刺胞動物ということになる。
出典^ 引用含め寄生虫館監修(2013),p.80
^ Hoffman(1974)、ちなみにこの時点では種名は確定されておらず、後に北アメリカ産も同種とされた。
^ a b Choudhury & Dick(1993)
^ a b Holloway, Jr. et al.(1991)
^ 以降、主としてPaikova(1973)
^ Reicova et al.(2007)
^ 以下、主としてRaikova(1973)
^ 以下、Rikova(1980)
^ Raikova(1973),p.165
^ Hoffman(1974),p.550
^ a b Holloway, Jr. et al(1991)
^ 以下、主としてEvans et al.(2007)p.2-3
^ Chang(2013),p.4

参考文献

目黒寄生虫館監修、『寄生蟲図鑑』、(2013)、飛鳥新社

Glenn L. Hoffman, 1974. Polypodium sp. (Coelenterata) Found in North American Sturgeon. The Journal of Parasitology, vol.60(3):p.548-550.

Elizabeth S. Chang, 2013. Transcriptomic evidence that enigmatic parasites Polypodium hydriforme and Mixozoa are cnidarians. Submitted to the graduate degree program in the Department of Ecology and Biology and the Graduate Faculity of the University of Kansas in partial fulfilments for the degree of Master of Arts.

E. V. Paikova, 1973. Life cycle and Systematic position of Polypodium hydriforme Ussov (Coelenterata), A Cnidarian Parasite of the Eggs of Acipenseridae. Publications of the Seto Marine Biological Laboratory (1973),20:p.165-173.

E. V. Raikova, 1980. Morphology, Ulyrastructure, and Development of the Parasitic Larva and Its Surrounding Trophamnion of Polypldium hydriforme Ussov (Coelenterata). Cell Tissue Res. 206, p.487-500.

E. V. Raikova et al. 2007. Muscular system of a peculiar parasitic cnidarian Polypodium hydriforme: A. Phalloidin fluorescence strudy. Tissue and Cell 39 :p.79-87.

Choudhury A. & T. A. Dick, 1993. Parasites of lake sturgeon, Acipenser fulvescens (Chndrosteri: Acipebseridae), from central Canada. Journal of Fish Biology 42: p.571-584.

Harry L. Holloway,Jr. et al. 1991, Polypodium hydriforme (Coelenterata) in Paddlefish from the Upper Missouri River Drainage. Journal of Aquatic Animal Health 3;p.210-212

Nathaniel M. Evans et al. 2007. Phylogenetic placement of the enigmatic parasite, Polypodium hydriforme, within the Phylum Cnidaria. BMC Evolutionary Biology 8:139

典拠管理データベース: 国立図書館

イスラエル

アメリカ


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