ボール_(野球)
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次に、それを知った近鉄バファローズ1979年に導入し、リーグ1位の打率・本塁打数を記録して初のリーグ優勝を遂げた。1980年にはパシフィック・リーグ3球団でチーム本塁打数が200本を超え、リーグ全体で1196本(1球団平均199.3本)もの本塁打が出た。この事態を重く見た、時のプロ野球コミッショナー下田武三の指示により、反発力テストの規定を見直した[18]
2000年代前半の飛ぶボール問題
2001年頃のミズノ社製のボールが他社製のボールと比べ反発係数が高く、飛距離が出やすいと言われていた。例えば、東京ドームでの1試合あたりの平均本塁打数(公式戦)は1988年は1.31本(112試合で147本)だったのに対して2004年は3.43本(76試合で261本)と本塁打率が2.6倍以上に増加していた。また、2004年、規定打席に到達した3割打者は36人(セ21人、パ15人)にものぼった。その他、2003年にミズノ社製に切り替えた横浜ベイスターズは、本塁打数を前年比95本増加させた。2004年のシーズンで中日ドラゴンズは本拠地のナゴヤドームで使用するボールの一部を対戦相手によってミズノ社製からサンアップ製(ミズノ社製のものより飛ばないとされている)に切り替えた[19]。これらが問題視された2005年にはミズノ社が新開発した「低反発球」が巨人、横浜、ソフトバンクら8球団に採用された。その結果、2005年の総本塁打数は247本減少した。2010年には、両リーグ11球団でミズノ社製が採用されていたが、依然、他社製に比べると打球の飛距離が伸びやすいと言われている。
2010年代前半の統一球に関する問題

2011年と2012年に使用された統一球および2013年の統一球変更問題2013年に日本プロ野球で使用された統一球。時のコミッショナー・加藤良三のサインが印刷されている。

上記の通りそれまでは球団ごとに異なるボールが使われていたことに対する批判や、WBCなどの国際試合で採用されるボールに近づけるという目的などから、2011年度から12球団全てでミズノ製の低反発ゴム材を用いた統一球を採用した。ミズノ社は飛距離を約1メートル抑えられると説明している[13]が、ストライクゾーンの変更など諸条件と合わせた結果、両リーグあわせて2010年の本塁打数と比べると1605本から939本に激減した[20]

統一球は、MLBの球よりも飛ばないとされており、実際にMLBの公式球と統一球を同じ高さから落とした場合、MLBの公式球がより高く弾む傾向があった[21]。特に2012年は開幕から4月25日まで全球団で123試合中38試合が完封試合という異常な投高打低を記録した[21]他、日本で行われた読売ジャイアンツ及び阪神タイガースシアトル・マリナーズ及びオークランド・アスレチックスとの親善試合において統一球を打ったMLBの打者やMLBの使用球を打ったNPBの打者複数から「明らかにメジャー球の方が飛ぶ」との証言も踏まえ[22]、4月24日に選手会が統一球を検証する要求を出した[20]。: また、もう1つの目的であった国際大会への順応という面でも、2013 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の使用球とは全く異なるものであり、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}目的を果たしたとは言い難い結果に終わった[要出典][23]

2013年6月11日、NPBは会見で過去の反発力検査でボールの反発係数が基準値以下になることがあったと発表した。2011年の抜き打ち検査ではほぼ基準内に収まっていたが、2012年の検査では複数の球場から集められたボールの反発係数の平均値が、NPBの基準である平均反発係数の0.4134 - 0.4374を大幅に下回る0.408を記録することもあったという[24]。しかし、実際には2011年の検査4回、2012年の検査3回の全てで平均値が規定を下回っており、2010年以前にも規定を下回るボールが使用されていた事が判明した[25]。また、飛距離の低下は仕様上1メートル程度であったが、専門機関の調査では3メートル短くなるという実験結果も出た[24]。それに伴い、2013年度より下限値を下回らないよう2012年の夏にミズノ社に要請した事も明らかになった。元々、選手の間では2013年になってボールが飛びやすくなったのではないかと噂されており、アンケートでは73パーセントの選手が「今年(2013年)のボールは飛ぶ」と回答していた[26]。1試合あたりの平均本塁打も2011年、2012年よりも増加していた[27][28]。実際に2012年のボールと2013年のボールを割って調べてみたところ、球の中心にあるコルク材の感触が2013年になって硬くなっているという調査結果もあった[29]

NPB側はミズノ社側に「ボール仕様の調整は公表しないでほしい」と要請するなど、この事実を隠蔽、また選手会には「仕様は変わっていない」と虚偽の説明をしていたが、6月11日の記者会見で変更したことを認めた[24][30]

統一球変更によって生じた本塁打の記録を以下に記す[31]

4月29日に横浜スタジアムで行われた横浜DeNAベイスターズ東京ヤクルトスワローズ戦で、ウラディミール・バレンティンが放った2本と、トニ・ブランコが放った1本、計3本が場外へと消えた。なお、この試合は両チーム合わせて7本の本塁打を記録した。

5月3日にクリネックススタジアム宮城で行われた東北楽天ゴールデンイーグルス北海道日本ハムファイターズ戦で、中田翔が1試合3本塁打を記録した。統一球導入後、日本人による1試合3本塁打は初。

5月18日に行われた全6試合で、合わせて22本塁打を記録した[注 3]

6月5日に東京ドームで行われた読売ジャイアンツ対北海道日本ハムファイターズ戦で、陽岱鋼が放った本塁打がJR東日本の看板を直撃した。統一球導入後、東京ドームでの看板直撃本塁打は初。ただし2012年9月11日に広島東洋カープブラッド・エルドレッドが看板を超える本塁打を放っている。

加藤良三コミッショナーは混乱を招いたことについて謝罪する一方で、加藤の了承の上で変更が行われたという下田事務局長の主張について「昨日まで全く知りませんでした。」と否定し、責任を追及する記者に対しては「不祥事を起こしたとは思っていません」と答えた[32][33]。しかし、実際には統一球検査の報告を随時受けていたことが取材で発覚しており[34]、これにより加藤コミッショナーが辞任に追い込まれる事態にまで発展した。
2014年以降

2014年1月20日、NPBは統一球の反発係数基準値を従来の「0.4134 - 0.4374」から「0.4034 - 0.4234」に変更した[4]。2014年シーズンが開幕すると、NPBによる抜き取り検査の平均値が基準値「0.4034 - 0.4234」を上回った「0.426」であることが明らかになり、ボールメーカーであるミズノ社によってボールの回収と在庫品の選別、今後の製造工程における対策が発表された[35]。その結果、基準値に基づく検査は許容範囲が狭く「違反」になる球が多すぎるというプロ野球選手会の抗議もあり、2015年に「0.4134を目標値とする」と改正、上下限は撤廃されると同時に、従来、納品後に行われていた抜取り検査を、納品前検査に切り替えた[36]
その他の加工
シリアルナンバー付のボール
MLBでは、特に注目度の高い打撃記録の更新が迫ってきた際に、リーグ機構が特別にシリアルナンバーホログラムシールのついた試合球を用意する。これは記録達成時に使用されたボールを特定する印をつけることで、オークション等へ偽物が出回ることを防止するための処置である。これまでシリアルナンバー付のボールが使用された例としては、バリー・ボンズの通算本塁打記録達成時、アレックス・ロドリゲスの最年少500本塁打達成時(いずれも2007年)、イチローのシーズン最多安打記録達成時(2004年)などがある。


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