2004年5月、陸軍電子通信司令部はシラキュース・リサーチと1330万ドルの契約を結び、UHFにより森林地帯の群葉を貫通できるリアルタイム目標追跡装置と合成開口レーダーをA160用に発注した[11]。後のフォレスターレーダー(DARPA FORESTER)である。
A160のメインローターブレードは、スパン(長手)方向位置によって剛性と断面形状(翼型)が異なる(一定でない)設計となっている。低円盤荷重かつ高剛性でヒンジレスなメインローターにより、従来のヘリコプターのようにピッチを変化させるだけでなく、飛行速度や高度に応じて、回転数も140 rpmから350 RPMの間で可変とした[12]。これによって、同クラスのヘリコプターよりも低出力すなわち低燃費での飛行を実現している。
2005年8月、「軍用の汎用で冗長性に富み多様な搭載能力を有する垂直離着陸が可能なUAVの評価」として5000万ドルの契約を海軍航空戦センター(英語版)(Naval Air Warfare Center)の航空機部門から得た[11]。
2007年10月、国防高等研究計画局と630万ドルでA160T(Tは、タービンのT)とARGUS-IS(自律化リアルタイム対地汎用捜索画像システム)の契約が結ばれた。
2010年に入っても開発テストは継続されているが、これまでのテスト飛行では、従来よりも高高度の飛行、より長時間の飛行、より多くの積載量、より高い自律性といった点を実証している。目標は2,500マイル(4,000km)、24時間、高度30,000フィート(9,100m)。飛行は大きく自律化されており、人の手によるリアルタイムの操縦なしに、目標の達成のためにどう飛行すればよいかを航空機が自ら判断し決定する。最高時速140ノット以上。 2002年1月29日に4気筒のスバル製エンジンで初飛行[1][13][14]、ボーイングによる買収後の初飛行は2004年9月20日である[15]。テストはカリフォルニア州ヴィクターヴィルのサザンカリフォルニア・ロジスティックス空港で行われた[16][17]。 2005年11月30日、6気筒290kWのガソリンエンジンによる30分間のホバリングに成功した[13]。 ターボシャフトエンジン採用型のA160Tがこれに続き、2007年6月15日に初飛行[18]、2007年9月27日には1,000ポンドを積載して8時間の飛行に成功した。10月12日には500ポンドを積載して12時間飛行し、各種センサーを用いた偵察任務のシミュレーションを行ったが、これは燃料消費量が満載から60%未満で成し遂げている[19]。 2007年12月10日、ヴィクターヴィルのボーイング・アドバンスト・システムズの施設内で飛行テスト中のA160Tが墜落した[20][21]。ボーイングの調査により、センサーからのデータがフライトコンピュータへ送られなくなったために発生したと結論づけられた。制御システムへのフィードバックループが停止したため、A160は「制御された飛行から逸脱し、ほぼ垂直に地面と衝突した」。科学捜査に適した証拠の多くは墜落後の火災により焼失していた。フィードバックの送信を停止してしまう可能性のある箇所を洗い出し、対処が行われた。飛行試験は中断し、2008年3月26日に再開された[22]。 5月9日、A160Tはアリゾナ州のユマ試験場
運用
飛行テスト
2009年8月、A160Tはカマン K-MAXと共に海兵隊によって3日連続6時間以下の条件下で積載量6,000ポンドの輸送実証試験に選定された[25]。2010年3月初頭には再補給の実証試験を成功裏に終わらせた[26]。12月、海軍航空システムコマンド(NAVAIR:Naval Air Systems Command)は、2990万ドルで2機のA160Tの調達契約を行った(カマン・エアロスペースも4600万ドルで同様の契約を獲得した)[27]。
2010年7月28日、サザンカリフォルニア・ロジスティックス空港でA160Tが墜落した。これはオートローテーションにより降下し着陸したが、そのまま横転したものである[28]。
2010年8月、ベリーズでジャングルにおける飛行試験を行った[29]。2機が密林におけるフォレスターレーダーの性能試験も行ったが、カヨ郡のセントラルファーム飛行場(Central Farm airfield)で1機が9月4日に墜落したことで中断した[30][31]。
2012年6月、ARGUS-ISを装備したA160Tがアフガニスタンに展開する予定だった。しかし月初には、技術的・スケジュール的な遅れが継続する可能性を理由にボーイングに作業停止を指示した。費用とリスクが増大し、政府はA160Tに対する興味を失いつつあったのである。その後停止命令は解かれたが開発中の扱いであり、計画中止に近いものである[32]。 出典: A160T Hummingbird[34] 諸元 性能
バリエーション
A160:ピストンエンジン搭載型。初期型はスバル4気筒、後期型は6気筒エンジン。
A160T:ターボシャフトエンジン搭載型。プラットアンドホイットニー PW207Dを搭載。
YMQ-18A:アメリカ合衆国軍の型番、2009年4月にA160Tに対して付与[33]。
要目
乗員: 0
ペイロード: 1,134kg (2,500ポンド)
全長: 10.7m (35ft)
全高:
ローター直径: 11m (36ft)
翼型: 回転翼
最大離陸重量: 2,948kg (6,500lb)
動力: プラットアンドホイットニー PW207D[35] ターボシャフト、427kW (572hp) × 1
最大速度: (165kt)
航続距離: (2,250nm)
実用上昇限度: 6,100m (20,000ft)
*飛行時間:20時間以上
テンプレートを表示 使用されている単位の解説はウィキプロジェクト 航空/物理単位をご覧ください。