ボーイング777
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とりわけリタイヤが進んでいた3発ワイドボディ機ロッキード L-1011 トライスターマクドネル・ダグラスDC-10の後継機争いでは、同じくマクドネル・ダグラスのMD-11、エアバスが1982年に構想を発表したTA9(後のA330)、TA11(後のA340)などへの対抗機種を持っていなかった。

そこで1986年暮れに、ボーイング社は767-300747-400の間の座席数の差を埋める機体の開発の為、機体需要の市場調査を開始した。世界中の多くの航空会社に調査を行い、特にその中でもローンチカスタマーユナイテッド航空全日本空輸ブリティッシュ・エアウェイズ日本航空キャセイパシフィック航空アメリカン航空デルタ航空カンタス航空には機体の設計についても意見を求めた(ワーキング・トゥゲザー)。そして、1989年12月8日にボーイング社の取締役会の承認を経て正式に新型機「767-X」として航空会社に提案されることが決まった。

計画名の通り、当初ボーイング社はこの旅客機を767の派生型として計画しており、コックピットも従来の767とあまり変わらないものが考えられていた。しかし767の後に作られた747-400の方がより進んだコックピットを有しており、ボーイング機を多数使用してきたユナイテッド航空や全日本空輸などはこの従来の767と同系のコックピットを拒否し、747-400スタイルのコックピットにするよう求めたため、ボーイング社は747-400のコックピットレイアウトをベースに、さらに最新技術を盛り込んだコックピットを計画した。777-200ERのコックピット試験飛行中の777-200

また、機体規模についても航空会社などと詳細にすり合わせを行って調整した結果、767の胴体を捨て、標準で横に2通路9席を配置できる、より太い真円断面を用いた大きな胴体を採用することにした。この767-Xに対して、アメリカのユナイテッド航空が1990年10月15日に34機発注し、機体名も「ボーイング777」に変更された。続いて全日本空輸、ブリティッシュ・エアウェイズ、日本航空も発注した。

なお、世界初のボーイング777型機(登録記号:B-HNL)は最終的に香港のキャセイパシフィック航空で運航されていたが2018年に現役を引退し航空博物館に寄贈された[3]
特徴777の客室(エバー航空・エコノミークラス)777のコックピット窓

777-300ERの翼幅、胴体長は747-400よりも大きく、双発機としては世界最大である。直径が737の胴体に匹敵するほど大きく強力なジェットエンジンを備えている。着陸装置としては、2本の主脚にボーイングの旅客機部門としては初めてタイヤが6輪ずつ装備されたボギー式の着陸装置が採用されているが、タキシング時に前輪の操向装置が大きい操向角を取ると、主脚に大きな横方向の荷重とタイヤの横滑りが発生するため、操向角が10度以上になるとコンピュータ処理によりボギー最後端の車軸を左右に最大8度まで操向させる、主輪操向装置を装備している。太い胴体の中央部を1階の客室に充てたため、その下の貨物室も広く確保できた上に、客室天井と機体上辺との間のかまぼこ型の空間には、前部と後部にそれぞれコックピット・クルー用とキャビン・クルー用の休憩室を設けることができるため[4][5]、長距離便でも交代乗務員用に客室や貨物室内に座席等を割り当てる必要がない。このように旅客と貨物の両面で収益が得られるよう考慮された飛行機であり、夜間に貨物専用便として運航されることもある。

777はボーイング社の旅客機としては初めて操縦系統にフライ・バイ・ワイヤを採用した。しかし、同じフライ・バイ・ワイヤ方式でもサイドステックを用いたエアバス社製の機体と違い、従来型の操縦桿を操縦席正面中央に残し、動翼面に掛かる振動や重さといった要素を操縦桿へフィードバックすることで擬似的に再現しており、従来のボーイング社製の機体を運航してきた航空会社でもパイロットが違和感なく最小のトレーニングで本機へ移行できるよう配慮されている。また、コックピットの表示装置は747-400と同じく6つのディスプレイで構成されているが、飛行管理装置 (FMC) や自動操縦制御の表示パネルを含めて、従来のブラウン管から液晶に変更されている[6]。のちにメーカーオプションでヘッドアップディスプレイが装備されていたり、従来は操縦桿にクリップしていた航空路チャートを側面のモニターで表示できるようになっていたり(EFB=エレクトロ・フライトバッグ)、自動操縦の方位設定パネルが横長に変更されるなどマイナーチェンジも行われている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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