ボディビル
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1996年カナダ議会は「規制薬物及び物質法」(The Controlled Drugs and Substances Act)を制定し、「一覧表IV」にアナボリック・ステロイドの名前を記載した[27]

アナボリック・ステロイドの副作用として、?瘡(にきび)、脱毛、心臓病発症の危険性の増加、腎臓と肝臓の機能不全、高血圧、性的不能が報告されている[19]

また、アナボリック・ステロイドの服用行為は、1960年代には既に始まっていた。1980年代になると、複数の種類のステロイドに加えて、筋肉を肥大させる目的から、インスリン(Insulin)の服用も増えるようになった[8]

デイヴィッド・ロブスン(David Robson)は、ボディビルダーの多くがステロイドを服用している点、ステロイドの服用の問題点を認めながらも、「薬物の服用を完全に禁止した場合、ボディビルの魅力が奪われてしまうだろう」「IFBBがボディビルからステロイドを排除するのは現実離れしており、事実上、不可能だ」と力説している[5]

アナボリック・ステロイドのような薬物の服用により、ボディビルダーは筋肉の大きさや力強さと引き換えに、長期的には健康を危険に晒す恐れがあり、それによって、ボディビルの正当性は消滅の危機に直面している[1]
ヴィンス・マクマホン

1990年プロレスの普及推進を目指すヴィンス・マクマホン(Vince McMahon)は、「世界ボディビル連盟」(The World Bodybuilding Federation, WBF)の設立を考えていた。マクマホンは、この連盟の人材開発部長としてトム・プラッツを雇った。1990年9月15日、第26回ミスター・オリンピア競技会が開催された。マクマホンはトム・プラッツと一緒に会場に姿を見せ、雑誌『Bodybuilding Lifestyles』を宣伝していた。優勝したリー・ヘイニー(Lee Haney)が、ミスター・オリンピアの称号を授与されようとしていたその矢先、トム・プラッツが舞台の上で即興の演説を行い、WBFの設立と、IFBBの打倒を宣言した。この翌日、マクマホンは記者会見を開き、ウイダー兄弟を公然と批判し、「自分のWBFこそ、ボディビルの本来のあるべき姿』だ」と主張した。マクマホンの言葉は、IFBBが薬物検査を行おうとしない現況をそれとなく伝えるものであった。1990年、IFBBは厳格な薬物検査を実施し、出場選手の二割が「不合格」と認定された。マクマホンは、「ボディビルの行事を今よりも劇的なものにし、ボディビルダーたちが受け取る賞金をさらに増やす」と宣言し、ボディビルダーたちと高額の資金契約を結んだ[28][29][30]

ウイダー兄弟は、IFBBに所属する選手に対し、「WBFに加盟した者は、IFBBが主催する競技会において即座に失格とする」「新たな団体に加盟した場合、IFBBに戻ることは決して許可しない」と述べた[28][29]。ウイダー兄弟は、『ミスター・オリンピア』の優勝者に贈呈する賞金を10万ドルに増やし、さらに、マクマホンに対抗するため、有料放送番組の検討を始めた[28]。しかし、医師のジョージ・ザホリアン(George Zahorian)が、能力向上薬をWBFの選手たちに配布した容疑で逮捕・起訴され[28]、懲役三年の実刑判決を言い渡された[29]。その後、マクマホンは、選手たちの薬物検査を実施する趣旨を発表した。1992年7月15日、マクマホンはウイダー兄弟と電話会議を行い、ボディビル雑誌の生産を中止し、WBFを解団する趣旨を伝えた[29]。ザホリアンに対する実刑判決は更なる調査につながり、WBFの選手たちに薬物を配布することを共謀した容疑でマクマホンが起訴されるまでに至った。1994年7月23日、マクマホンはすべての容疑で無罪となった[29]。この一連の過程で、マクマホンは1500万ドルを失った、と伝えられた[29]
2000年代

2003年、ジョー・ウイダーは、『Weider Publications』を『American Media, Inc. AMI』に売却した。2008年10月にベン・ウイダーが亡くなったのち、IFBBの会長はラファエル・サントンハ(Rafael Santonja)が務めていた。2004年、ウェイン・デミリア(Wayne DeMilia)がIFBBから去ったのち、AMIがミスター・オリンピア競技会の宣伝を引き継ぐことになった。2017年には、別の企業と共同で行事を執り行っている[31]

ソ連崩壊後の東ヨーロッパにおいて、消費や娯楽の様式が広まるにつれて、ボディビルが普及するようになった[32]

ソ連においては、スティーヴ・リーヴスが主演した映画『ヘラクレス』が公開され、リーヴスの肉体が映し出されると、多くの男性がそれに影響され、身体を鍛えるようになった。1973年の春、国家競技委員会(ソ連競技省)の会議にて、当局者の一人は「ボディビルだって?筋肉を鍛えて、鏡の前で構えをきめる?我がソ連国民は、そんなことをしてどうしようというのだ?鏡に映った自分の姿を見て褒め称えるつもりか?」と述べた。ソ連において、ボディビルは公式に禁止となった[33]
オリンピック

国際オリンピック委員会は、ボディビルを「運動競技」とは見做していない。ボディビルダーたちによる薬物乱用の問題が基本的な焦点となっている[7]。主流のスポーツ界も、ボディビルを「運動競技」とは見做していない[1]
部門チェコ出身のボディビルダー、ルカーシュ・オスラギル(Luka? Osladil)ロニー・コールマン(2009年10月17日)構えをきめるニッキー・フラー(Nikki Fuller)
Professional

ボディビルの世界において、「Professional」という言葉は、ボディビル愛好家の立場で予選大会を勝ち抜き、ボディビル団体から「プロ・カード」(Pro Card)と呼ばれる厚紙を受け取ったボディビルダーを指す。これを獲得した者は、「Professional」(「本職、専門職」)という立場で、賞金が贈られる競技会に出場する権利を得られる。ただし、条件を満たせば自動的にこの地位が得られるわけではなく、自国内の連盟による推薦も必要となる[34]。出資者と契約を結べば、金銭面で援助も受けられる。
Natural

費用、健康問題、服用の違法性に対する懸念から、ボディビル団体の多くは、筋肉増強剤の服用を禁止とする「Natural」(「自然体」)と題した部門を設立している。アイヴァン・ブラスケス(Ivan Blazquez)は、「重要なのは、体調を整えることだ」と力説している[35]
Men's Physique

2012年に初めて導入された[36]。Physique(体格や身体付き)と言う単語の意味のとおり、体型、均整美(釣り合いの取れた美しさ)、筋肉質、身体の健康状態が審査の対象となる[37]。出場選手たちは、舞台に上がったあとも、冷静さを維持しつつ、存在感を示し、自信に満ち溢れていなければならない。構えをきめ、様々な角度から筋肉を見せる[37]。全体が均衡の取れた身体でなければならない[36][37]
Classic Physique

2016年、全米体格委員会(The National Physique Committee, NPC)と、国際ボディビル連盟は、新たな部門「Classic Physique」(「第一級体格」)を導入した。身長と体重に制限が課される。出場選手は、筋肉量や体格のみならず、「体調・健康状態、均整美・調和の取れた美しさ」も審査の対象となる[37]

1990年代に現われたドリアン・イェイツ(Dorian Yates)は、均整美を犠牲にして筋肉の大きさを追求した。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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