ボストンは世界でも有数のイノベーション都市である[97][98]。市内に本社を置く大企業としては、リバティ・ミューチャル保険会社、ジレット(現在はプロクター・アンド・ギャンブルが保有)などもある。半導体その他の電子試験用品の世界的メーカーであるテラダインは2006年に撤退した。ニューバランスも市内に本社を置く。経営コンサルタント会社のボストン・コンサルティング・グループ、モニター・グループ、ベイン・アンド・カンパニー、プライベート・エクイティ・グループであるベインキャピタルもある[99]。市外、特に州道128号線沿いにある大企業もある[100]。128号線は、この地域のハイテク産業の中心地としての役割を果たしている。2006年において、ボストンおよび同都市圏は、19万1700人のハイテク産業従事者を有し、全米第4のサイバーシティとしてランクされた。これを上回るハイテク部門を有するのは、ニューヨーク都市圏、ワシントンD.C.首都圏、シリコンバレーのみである[101]。ボストン港は、アメリカ合衆国東海岸の主要な港であるとともに、西半球で最も古くから運営を続ける工業港・漁港でもある[102]。ボストン海軍工廠は港の遺産である。 ローガン国際空港は、イーストボストン地区にあり、ボストンのほとんどの定期旅客便を取り扱っている[103]。また南北アメリカやアジア、ヨーロッパとの国際線が乗り入れている。 市を囲んで、ゼネラル・アビエーション(輸送事業以外の一般民間航空)の大きな飛行場が三つあり、北がベバリー市営飛行場、西がベッドフォードのハンスコム・フィールド、南がノーウッド・メモリアル飛行場である。ロードアイランド州プロビデンスのT・F・グリーン空港と、ニューハンプシャー州マンチェスターのマンチェスター・ボストン地域空港も、ボストン圏に定期旅客便を提供している。 ボストン市民の3分の1近くが、通勤に公共交通機関を使っている[104]。アメリカ最初の地下鉄網であるマサチューセッツ湾交通局(MBTA)の地下鉄を運営が運営されており、これは現在全米で4番目に繁忙な地下鉄であり[9]、線路の全長は105kmにまで延伸し[105]、北はモールデン、南はブレイントリー、西はニュートンにおよぶ。この地下鉄網は「T」という愛称で呼ばれている。交通局はこれ以外に、繁忙度全米第6位のバス網(MBTA Bus)のほか、水上往復便、そして繁忙度全米第5位のコミューター・レールも運営している。コミューター・レールは、営業距離321km超[105]、北はメリマック・バレー、西はワーススター、南はプロビデンスまで伸びる。 長距離旅客列車を運行するアムトラックのターミナル駅は路線によってサウス・ステーション(ボストン南駅)とノース・ステーション(ボストン北駅)の2箇所に分かれている。北東回廊とシカゴ・ラインは、ボストンのサウス・ステーション(ボストン南駅)から出発し、バックベイ駅で停車する。北東回廊の列車はニューヨーク、ワシントンD.C.およびその間のいくつかの駅に停車し、ボストン南西郊外のルート128駅にも停車する[106]。また、メイン州に向かうアムトラックのダウンイースターはノース・ステーション(ボストン北駅)から出ている[107]。 ボストンのダウンタウン地区の街路は、碁盤目状に整備されておらず、17世紀初頭以来、曲がりくねった形で成長していった。その時々の必要に応じて道が作られ、また波止場と土地の埋立てによって、小さかったボストンの半島が徐々に拡大してきたからである[108]。いくつかのロータリー交差点があるのに加え、一見でたらめに道の名前が変わったり、車線が途中で増減したりする。一方、バックベイ地区、イーストボストン地区、サウスエンド地区、サウスボストン地区では格子状の都市設計がされている。ボストンの道路の多くは、17世紀からの馬車道がもとになっている。馬車は今日でもたまに見かけることができる。 ボストンは、州間高速道路90号線(I-90)の東の終点である。90号線は、マサチューセッツ州内ではマサチューセッツ・ターンパイク(高速道路)と併走している。市を取り巻くように走る州間高速道路95号線(I-95)は、この地域では、州の伝統的な付番に従って、マサチューセッツ128号線(ルート128)と呼ばれている。合衆国1号線(U.S.1)、州間高速道路93号線(I-93)およびマサチューセッツ州3号線(ルート3)は、チャールズタウンからドーチェスターへと市内を南北に走る中央幹線をなしている。以前は、中央幹線の高架がダウンタウンを走っており、交通渋滞が絶えなかったが、ビッグ・ディグと呼ばれる工事が2006年初頭に大部分完成し、地下トンネルに置き換えられた。 ボストンには「ウォーキング・シティ(歩く街)」という愛称があるように、他の同規模の街に比べ徒歩での通勤・通学が大きな役割を果たしている。コンパクトな街であること、学生人口が多いことから、人口の13%が徒歩で通勤・通学しており、この割合は主アメリカの主要都市の中で最大である[注釈 4]。「バイシクリング」誌は2006年3月号で、ボストンを自転車には最も向いていない都市の一つとしているが[109]、それでも自転車通勤・通学の割合は最高クラスである[110]。2007年9月には市長により、自転車で走りやすい街にすることを目標とした「ボストン・バイクス」と呼ばれる計画が着手された。 現在、カトリックはボストンにおける最大の宗教的コミュニティとなっている[111]。 ボストンの文化的伝統は、周りのニューイングランド全体と多くの点で共通している。ボストン・イングリッシュと呼ばれる、音節末尾や子音の前の/r/を発音しない東ニューイングランドなまりや、魚介類、塩、乳製品に重点を置いた地域料理もそうである。ボストンの政治的・宗教的風土には、アイルランド系アメリカ人の及ぼした影響が大きい。土壌は20世紀初頭以来、ケネディ家、ティップ・オニール また、ボストンには「ボストン・スラング」と呼ばれる新語がある[113]。スラングといっても現在のボストン市はそれなりに大きいので、割と開かれた表現である。
交通
空港
鉄道サウス・ステーション(ボストン南駅)。大ボストン都市圏の中では最大の鉄道駅・バスターミナルである。
道路
文化