2006年9月、東京で開催されたWBA第85回年次総会の医事会議では、当時東日本協会の健康管理委員長だった渡辺均(ワタナベボクシングジム会長)がグローブの重量変更を提案した。ミニマム級からスーパーバンタム級までを6オンス、フェザー級からウェルター級までを8オンス、スーパーウェルター級以上を10オンスとする内容だったが、医学的データが添えられなかったこともあり、実現には至っていない。
ほぼ同時期にPABAでは、2006年12月1日から1年間の期限付きで、ミニマム級、フライ級、スーパーフライ級の3階級のタイトルマッチにおいて試験的に6オンスグローブを導入し、その結果によっては当時の上位団体だったWBAでも6オンスの使用を検討しようという動きがあった。PABAのアラン・キム事務局長は、小さいグローブで顔面を打撃する衝撃によりKOが多発する格闘技で事故が報告されていないことに触れ、大きいグローブによるダメージでは即座にKOに結びつかず、加撃され続けることでダメージが蓄積するためにかえって危険であり、早いKOの方が安全だとする考えで試験導入に踏み切ったとPABA内部の声を伝えた。しかし安全性と興行的演出の両面から見解が分かれる事案であり[3][4]、現状では6オンスグローブは復活していない。
男子プロボクサーの公式試合では前節にある通り、JBCの規定によりミニマム級からスーパーライト級までは8オンス、ウェルター級以上の階級では10オンスのグローブを使用するため、体とグローブサイズのバランス面で、ミニマム級とウェルター級の選手の負担が比較的大きい。同様に女子プロボクサーではアトム級、スーパーフェザー級の選手、アマチュアシニアではライトフライ級の選手、アマチュアジュニアではピン級、ウェルター級の選手の負担が大きい。
各グローブメーカーでは、ナックル部分の改良にとどまらず、素材や内部構造、縫製などによってカットや骨折を防止するための開発が行われている。
グローブでの殴打の安全性グローブでの頭部殴打
グローブを付けての殴打は、素手での殴打に比べて外傷を防ぐ事が出来るが、脳への衝撃が減少するわけではない[5]。また、グローブの有無、軽重での安全性(脳へのダメージ累積)やノックアウト発生率の変化に関する結論は出ていない[3]。
理学博士の吉福康郎は著書『格闘技「奥義」の科学』において「グローブを重くすればするほど、衝撃力、力積ともに大きくなる」とし、重いグローブ着用での殴打に警鐘を鳴らしている。新日本木村ボクシングジムの石井敏治トレーナーも重いグローブは「(重いグローブを使用したスパーリングは)打撃を受けた直後に症状が出にくいためにスパーリングはそのまま続行され、続けて受けたダメージが累積するのも事実である」としている[3]。しかし石井は、軽いグローブの方が安全であるという医学的な確証もまた存在しないことや、試合では選手がファイティングポーズを示し続ける以上試合が続行されるため、グローブの軽重と安全性は関連が薄いと考えられることなどを理由に前述のPABAのルール改正には反対を表明した[3]。
メーカー
ウイニング
レイジェス
エバーラスト
グラント
ボディメーカー
ツインズ
ウィンディ
ヴェノム
アディダス
イサミ
グローバルスポーツ
RDX SPORTS
脚注[脚注の使い方]
注釈^ JBCルールに上記の通り明文化されている現行の規定へは1996年1月1日から移行したが、2001年8月1日の改定以前のルールブックでは以下のように規定されていた(以下引用)。
ストロー級からジュニアバンタム級まで6オンス。ただし4回戦は8オンス
バンタム級からウェルター級まで8オンス
ジュニアミドル級からヘビー級まで10オンス
出典^ 初心者向け!キックボクシンググローブについて
^ 1920年のジョン・ウッドブリッジのグローブ。
^ a b c d 石井敏治 ⇒「軽量級で6オンス・グローブの使用、なぜ反対か」ボックスオン、2007年06月20日、2010年5月21日閲覧。[リンク切れ]
^ 三浦勝夫「10オンス使用はソフト化の前兆か?」 「月刊ボクシングワールド」オフィシャルサイト 2006年7月25日閲覧