ボイジャー1号
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星間ミッション1990年2月14日に撮影された「太陽系家族写真」

2機のボイジャー探査機は2025年頃まで、少なくとも観測装置の一部については十分稼動できる電力を供給できると見られている。

1990年2月14日、ボイジャー1号は2号の進行方向の観測を兼ねて、太陽系の各惑星を60枚の連続写真に収める「太陽系家族写真」の撮影を行っている。しかし水星は太陽に近すぎて、火星は太陽の光に霞んで写らず、冥王星(当時は惑星に分類されていた)は遠すぎて視野に入らなかった。

ボイジャー1号は、ボイジャー2号と共に、太陽系の外から来る紫外線の波長域の1つ「ライマンα線」を観測していた。その中には、地球からの観測では知られていなかった線源も含まれている。ライマンα線は、地球からの観測では、星間物質に散乱される太陽放射のせいでうまく捕らえることができないものである。
ヘリオシース2005年5月当時のボイジャー1号の航行位置。2021年現在は太陽圏外にある。

ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究室の研究者は、ボイジャー1号は2003年2月に末端衝撃波面を通過したと考えている。しかし他の研究者の中にはこれに異議を唱えている人もあり、『ネイチャー』2003年11月6日号で議論を行っている。2005年3月25日ニューオーリンズで行われたアメリカ地球物理学連合総会での科学セッションで、エド・ストーン博士はボイジャー1号が2004年12月に末端衝撃波面を通過した明らかな証拠があることを示した[7]。ボイジャーの太陽風検出器は1990年に機能を停止しているため、この問題に決着が付くまでには他の観測データが得られるまでなお数ヶ月かかるものと思われた。しかし2005年5月にはNASAのプレスリリースにおいて、ボイジャー1号は当時ヘリオシースを飛行中であり、間もなくヘリオポーズに到達するとされた[8]
ヘリオポーズ

2012年8月25日ヘリオポーズに到達した[2]。ボイジャー1号が星間空間を目指して飛行する間、探査機の観測装置は太陽系の調査を続けていた。ジェット推進研究所の研究者はボイジャー1号・2号に搭載されているプラズマ波実験装置を用いてヘリオポーズの検出を試みていた。

2012年3月の太陽からの大量の質量放出が2013年4月にボイジャー1号に到達し、ボイジャー1号周辺のプラズマの密度が、太陽圏の果ての40倍高いことが分かり、ボイジャー1号が太陽圏外に出て、星間空間にすでに到達していたことが判明した。過去のデータを調べ、2012年8月25日にヘリオポーズに到達していたことが分かった[2]
飛行距離

2006年8月、NASAはボイジャー1号が100AUの距離に到達したと発表した[9]

2010年12月13日、NASAはボイジャー1号が観測している太陽風の速度がゼロになったと発表した。これは太陽圏の端に近づいていることを示しているとしている[10]

2016年12月29日現在、ボイジャー1号は太陽から約216億3000万km(143.855AU)の距離にあり[11]、ボイジャー1号の速度は太陽との相対速度で16.977km/s(3.581AU/年)で、ボイジャー2号より約10%速い。

ボイジャー1号の現在位置の変遷[11]日付太陽からの距離
(億km)太陽との相対速度
(km/s)
1996年01月05日92.3717.445
1997年01月03日97.7817.395
1998年01月02日103.1617.351
1999年01月01日108.5417.314
2000年01月07日114.0317.283
2001年01月12日119.5117.258
2002年01月04日124.7817.236
2003年01月03日130.1517.216
2004年01月02日135.5717.203
2005年01月07日141.0417.180
2006年01月06日146.4117.159
2007年01月05日151.7617.136
2008年01月04日157.1217.110
2009年01月02日162.4717.093
2010年01月01日167.8117.074
2011年01月07日173.2617.060
2012年01月06日178.5917.049
2013年01月04日183.9317.042
2014年01月03日189.2717.035
2015年01月16日194.8117.027
2016年12月29日205.2517.015
2022年08月28日235.2216.999

ボイジャー1号は地球から最も遠くに到達した人工物となっている。特定の恒星をまっすぐ目指しているわけではないが、仮に太陽系に最も近い恒星系であるケンタウルス座α星に向かったとしても、到着するまでには約8万年かかる。実際にはへびつかい座の方向へ飛行を続けており、約4万年後にはグリーゼ445から約1.7光年の距離まで接近し、約5万6000年後にはオールトの雲を脱出するとされる[12]
脚注[脚注の使い方]

注釈^ 本機に限ったことではないが、銀河系を脱出するわけではないので、長い目で見れば楕円軌道ではある。遠い将来に太陽系に戻ってくる可能性も完全にゼロというわけではない。

出典^ ロイター2012年6月24日閲覧
^ a b c “ ⇒NASA Spacecraft Embarks on Historic Journey Into Interstellar Space”. NASA (2013年9月12日). 2013年9月13日閲覧。
^ a bVoyager Mission Operations Status Report # 2013-09-06 Week Ending September 6, 2013
^ a bVoyager - Spacecraft Lifetime
^ “37年も休眠のエンジン動く”. ロイター. (2017年12月2日). https://jp.reuters.com/article/idJP2017120201001311 2017年12月2日閲覧。 
^ “ ⇒惑星科学のための宇宙探査機”. The Nine Planets (1995年10月31日). 2016年6月29日閲覧。
^Voyager in the Vicinity of the Termination Shock
^Voyager Enters Solar System's Final Frontier
^Voyager 1: 'The Spacecraft That Could' Hits New Milestone
^NASA Probe Sees Solar Wind Decline
^ a bVoyager Weekly Reports
^ “Voyager at 40: Where Will the NASA Spacecraft Go Next?”. (2017年9月6日). https://news.nationalgeographic.com/2017/09/voyager-40-years-nasa-interstellar-space-science/ 2018年10月11日閲覧。 

関連項目

ボイジャー計画

ボイジャー2号

ボイジャーのゴールデンレコード

太陽系を離れる人工物の一覧

外部リンク.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキメディア・コモンズには、ボイジャー1号に関連するメディアおよびカテゴリがあります。

公式ウェブサイト

Mission Status - 現在位置、速度。

Spacecraft escaping the Solar System - 現在位置、軌道図


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