ホルン
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ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は、このウィンナ・ホルン(F管シングル・ホルン)を原則として使用している。
ナチュラル・ホルンナチュラル・ホルン Victoria & Albert Museum, London.ナチュラルホルン

19世紀前半まではバルブを持たず、自然倍音のみを発音できるナチュラル・ホルンが用いられた。この楽器では普通の状態では自由に半音階を演奏することはできない。バロックから古典派前期のホルンのパートが比較的単純な音形に限られるのはこのためでもある。18世紀中期に、ハンドテクニックの開発すなわちベルの中の右手の位置を変える事により、自然倍音から音程を最大で長2度上昇もしくは下降させる奏法(ストップ奏法)が考案され、この技法と管体自体の調性を変えることで、開放音とストップ音、ハーフ・ミュートなどによる音色の犠牲はあるものの、半音階をある程度演奏できるようになった。この時代からソリストとして活躍する奏者が現れ出す。楽器も独奏者用のコール・ソロとオーケストラ奏者用のコール・ドルケストルの2種類に分かれ、前者の演奏家はサロンでもてなされ、後者は台所でビールを傾けるなど、身分的な差もあった。

ハイドンモーツァルトの協奏曲はこのような時代に書かれた。しかし、1814年のバルブの出現により、ナチュラル・ホルンは次第にバルブ付きホルンに取って代わられることとなる。それでもフランスのホルン奏者は、バルブ付きのホルンを好まずナチュラルホルンを愛用したため、ロマン派時代でもナチュラルホルンのために作曲されていることも多い。自身もホルンを演奏したブラームスは、当時のドイツでは殆どバルブホルンに代わっていたにもかかわらず、ナチュラルホルンを好んだ。ブラームスの管弦楽作品におけるホルンパートは、ナチュラルホルンを意識した擬古的な書き方になっている。また彼のホルン・トリオは完全にナチュラルホルンのために作曲されている。デュカスパリ国立高等音楽院のホルン科の試験のために作曲した「ホルンとピアノのための『ヴィラネル』」には、前半部にSans pistons(ピストンなしで)という指定があり、この部分はピストンホルンを使いつつもストップ奏法のみで演奏されるようになっている。作曲当時、同音楽院のナチュラルホルン専攻コースはすでに閉鎖されていたが、ホルン科の学生は専攻コースが無くなった後もナチュラルホルンを並行して学んでいたことが分かる。

ナチュラルホルンは現代の古楽復興の流れの中、ヘルマン・バウマンがモーツァルトの協奏曲集が録音してから、様々な演奏家によって演奏されるようになっている。創立当時より優れたホルン奏者を育ててきた前述のパリ国立高等音楽院のナチュラルホルン専攻のコースは、ピストンホルンの普及とともに19世紀末に廃止されたが、近年のピリオド・アプローチの復活とともに、パリ管弦楽団首席奏者のミッシェル・ガルサン=マルーによって数年前に再開された。彼の定年退職後、現在はクロード・モリーが教授として指導にあたっている。また日本人ホルン奏者根本雄伯もパリ郊外カシャン市の国立音楽院でナチュラルホルンを教えている。

再現楽器の中には、本来のナチュラルホルンには存在しなかったが、正しい音程を出すのを助けるための穴がいくつかあけられているものがある[5]
ホルンが活躍する楽曲
クラシック音楽
ホルン協奏曲等


テレマン:ホルン協奏曲 TWV 51:D8

ハイドン:ホルン協奏曲第1番 Hob. VIId/3、第2番 Hob. VIId/4(真偽未確定)、2つのホルンのための協奏曲 Hob. VIId/6 (真偽未確定、実弟のミヒャエル・ハイドンあるいはロセッティ作曲との説あり)

ロセッティ:ホルン協奏曲(多数作曲)

モーツァルトホルン協奏曲第1番-第4番オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットと管弦楽のための協奏交響曲(偽作)

ウェーバーホルン小協奏曲 op.45

シューマン4本のホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュテュック ヘ長調 op.86

フランツ・シュトラウス:ホルン協奏曲 op.8

サン=サーンスホルンと管弦楽のための演奏会用小品 ヘ短調 op.94

リヒャルト・シュトラウスホルン協奏曲第1番 op.11、第2番 AV132

グリエールホルン協奏曲 op.91

シェック:ホルン協奏曲 op.65

ヒンデミット:ホルン協奏曲

管弦楽曲・オペラ・バレエ等


テレマン:組曲「アルスター」TWV55:F11

ヘンデル:歌劇「ジュリアス・シーザー」 HWV17 - "Va tacito"

J.S.バッハ

ミサ曲 ロ短調 BWV232 - "Quoniam tu solus sanctus"

ブランデンブルク協奏曲第1番 BWV1046


ハイドン:交響曲第31番ニ長調「ホルン信号」 - 第2楽章

モーツァルト

交響曲第40番 - 第3楽章トリオ

歌劇「ポントの王ミトリダーテ」 - シファーレのアリア


ベートーヴェン

交響曲第3番 - 第3楽章トリオ

交響曲第5番 - 第3楽章

交響曲第6番「田園」 - 第3楽章、第5楽章冒頭

交響曲第7番 - 第1楽章第1主題、第4楽章

交響曲第8番 - 第3楽章トリオ

交響曲第9番 - 第2楽章トリオ、第3楽章

歌劇「フィデリオ」 - 序曲


ウェーバー

歌劇「魔弾の射手」 - 序曲導入部

歌劇「オベロン」 - 序曲冒頭


ロッシーニ

歌劇「イタリアのトルコ人」 - 序曲導入部

歌劇「セミラーミデ」 - 序曲導入部

歌劇「セビリアの理髪師」 - 序曲導入部および主部


シューベルト交響曲第8番「ザ・グレート」 - 第1楽章冒頭

メンデルスゾーン

交響曲第4番「イタリア」 - 第3楽章トリオ

夏の夜の夢 - 夜想曲


ショパンピアノ協奏曲第2番 - 第3楽章


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