ホモ・ナレディ
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2つの化石年代測定技術(火山灰の成している層に含まれる化石の年代を調べる方法と流水作用によって堆積した方解石の成している層に含まれる化石の年代を調べる方法がある)は化石が火山灰あるいは流れ石(英語版)の層に埋もれていなかったので、いずれも使用することができない[2]。例えば、東アフリカの年代測定が可能な火山灰層では320万年前のルーシーなどの化石の年齢を判定するのに役立てられている[2]

ある地質学者は洞窟の中で発見された化石は300万年前よりは新しいものだと考えている[37]

リー・バーガーはその解剖学的分析がホモ・ナレディは280-250万年前、ヒト属の始まりかあるいは始まりに近い時期に出現したことを暗示していると述べている[38]。これに対し、ティム・ホワイト(英語版)は化石が100万年前より古いかどうかを知るのは困難であると述べている[35]
研究チームの仮説

ウィスコンシン大学マディソン校で教える人類学者のジョン・ホークス(英語版)は洞窟から回収された骨はフクロウのものが1体ある以外はすべてヒト科の骨だという科学的な事実があると述べている。捕食の兆候が見られず、ヒト科のみが堆積して捕食者が存在しない。骨は一度にまとめてそこに堆積したわけではなかった。表面内の任意の開口部から洞窟内にや土砂が落下した形跡はない。洞窟の中に骨を運ぶような、洞窟内にが流入した形跡もない[39]。ホークスは意図的に体がそこに置かれたとするのが最良の仮説であると結論づけた[40]
儀式的な行動

バーガーらは洞窟内に遺体を配置する行為は儀式的な行動と象徴的思考(英語版)の表れであったと推測する[41]。ここで言う「儀式」とは意図された反復の習慣(洞窟内に遺体を処分する)であり、宗教的な儀式のいずれかのタイプを意味しない[40]。この発見の前は一般的に、儀式的な行動はこれよりもずっと後、ホモ・サピエンスホモ・ネアンデルターレンシスの間の時期に始まったと考えられていた[2]。これまでに確認されている最も古い、ネアンデルタール人の埋葬は10万年前に行われたものである[39]

バーガーは複雑な洞窟システム内で体の意図的な処分を行うからには暗闇の通路を通って再び戻るために種のメンバーの助けを借り、間隔を置いてたいまつを掲げたり焚き火をおこすなりして、明かりを必要としていたはずと推測している[2][42]
他の専門家の意見

古人類学者ティム・ホワイトは年代測定が完了し、さらに以前から知られている化石との解剖学的比較が行われるまでは発見の意義が不明であることを示唆している
[35]。また、ホモ・ナレディは初期の小さなホモ・エレクトス(原人)に非常によく似ていると述べている[35]。なお、研究チームのリーダーであるリー・バーガーは発表時の記者会見でホモ・エレクトスの化石である可能性を否定している[38]

スミソニアン博物館国立自然史博物館の古人類学者リック・ポッツ(英語版)は年齢もわからないのに、「私たちがこの発見の進化的意義について判断することはできない」と述べている[38]。発見された遺体については「単に穴の上から放り込まれ、処分された」ものと見ている[38]

ニューヨーク大学の人類学者スーザン・アントンは古人類学には正確にヒト属を定義するために使われるコンセンサスが形成されていないため、おそらく年代測定をした後も、適切な結論が出せるまで専門家は多くの年月を費やすことになるだろうと指摘している[38]

ジョージ・ワシントン大学の古人類学者バーナード・ウッドは遺骨が新種を示すものであることに賛同する一方で、インドネシアフローレス島で発見された小脳種のホモ・フローレシエンシスがそうであったように比較的孤立して、南アフリカでその奇妙な特性を独自に進化させていった種かもしれないと考えている[21]

ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の人類学者ウィリアム・ジャンガース(英語版)は「年代が分からなければ、これらの化石は人類史を書き換える発見ではなく、単なる骨董品です」と批判し[4]、骨が発見された空洞に到達するためのより簡単な方法が存在した可能性を示唆した[20]。ジャンガースは現代人よりはるかに脳の容量が小さいホモ・ナレディが埋葬を行っていたとする説についても否定的な見方を示している[20]

人類学者クリス・ストリンガー(英語版)は「脳の容量の小ささ、湾曲した指や肩の形状、胴体股関節は人類出現以前の猿人と初期人類のホモ・ハビリスに似ています。しかし、手首、手、、足はネアンデルタール人と現生人類のものに一番近いです。歯はいくつかの原始的な特徴がありますが、比較的小さく単純なもので、軽い造りの顎骨がはまっています。全体的に私の見たところ、物質はグルジアドマニシの180万年前と年代測定された、小さな体をしたホモ・エレクトスの例に一番近いです」と書いた[31]

ピッツバーグ大学進化生物学者ジェフリー・シュワルツ(英語版)は回収された資料が単一種であることを表現するにはあまりにも多様性に満ちていると主張している[43]

ルイス・リーキーの息子で自身も古人類学者であるリチャード・リーキーはヨハネスブルグを訪れて化石を調べ、洞窟奥深くに埋葬するには明かりが必要だったとするバーガーの仮説に対し、「(バーガーがまだ見つけていないだけで)もう一つ入り口があるはずです」と断言している[44]

南アフリカ国内の反応

南アフリカ共和国大統領ジェイコブ・ズマと同共和国副大統領のシリル・ラマポーサは研究チームを祝福した[45][46]

一方で、ソーシャルメディア上では人種差別的な動機が背景にあったのではないかとの批判が噴出した[47]。マトール・モチェハ(英語版)は「アフリカ人ヒヒの子孫だとする擬似科学」にもとづく動機があったと主張した[48]。ツベリチマ・バビ(英語版)は「かつてはヒヒだったという理論を裏付けるために古い類人猿の骨を発掘する者はいないだろう」と述べた[49]
メディア「人類の夜明け」も参照

映像外部リンク
ホモ・ナレディの頭部模型を作成する作業(National Geographicによるアップロード)
6人の女性洞窟探検家が新人類の祖先の化石を回収した方法(National Geographicによるアップロード)

ホモ・ナレディの発見について解説するPBS NOVA(英語版) ナショナルジオグラフィックのドキュメンタリー人類の夜明け』が2015年9月10日にオンライン上で公開され、2015年9月16日にアメリカ全土でテレビ放送された[40]


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