ホモ・ナレディ
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1つは新種である説を提唱し[1]、もう1つは化石が発見された洞窟について記述している[10]

バーガーは化石はヒト属として最古のものの一つとみられ、人類と二足歩行霊長類とのミッシングリンクになり得る存在だと語り[27]古代エジプトツタンカーメン王に匹敵する発見だとしている[28]。発見された化石は南アフリカ国民の所有物として扱われ、今後も南アフリカ国内で管理されるものと見られている[26]
形態

『イーライフ』のウェブサイトによると、ホモ・ナレディの身体的特徴はヒト属に非常によく似ているが、アウストラロピテクス属よりやや原始的な特徴も合わせもつ。このような特性は既知の他のヒト族には見られないものである[1]。バーガーらは明らかにヒト属に分類できると考えたが、ヒト属のどの種とも異なる特徴をもつことから、新種だという結論に達した[3]

成人男性は身長約150cm(5ft)、体重約45kg(100lb)と推測されたが、この身長は背の低い現生人類の範囲内に含まれる。女性はそれよりも少し小柄だったとされる。その骨格の分析はホモ・ナレディが完全な直立二足歩行だったことを示唆する。フレア形状ののつくりは猿人に似ているが、足と足首はヒト属に類似している[1][21]。現生人類に似た足の形は長距離の歩行が可能だったことをうかがわせる[29]

しかし、頭蓋腔(英語版)容積は現生人類と比較して著しく小さかった。男性2人と女性2人のものと見られる4個の頭蓋骨が発見されたが、測定したところ、わずか450-550cm3(27-34in3)ほどであった。ホモ・エレクトスの平均は900cm3(55in3)なので、そのおよそ半分程度しかない。ホモ・ナレディの頭蓋骨の頭蓋腔容積は猿人の頭蓋骨のそれと同程度しかない[2]。いわば、オレンジの実ほどの大きさである[29]。それにもかかわらず、頭蓋骨の形状は猿人よりもヒト属に見られるものに類似しているように解説されている。その細長い顔だち、側頭部後頭部のふくらみ、ヒト以外の霊長類に顕著な後眼窩骨の狭窄(英語版)が見られないといった点がおもにあげられる[1]。歯と下顎(英語版)の筋肉組織はほとんどの猿人のものよりも小型で、これは激しい咀嚼を必要としない食事をしていたことを示唆する[1]。現生人類と同じく小さな歯を持つ一方で、猿人に見られるように第3大臼歯(親知らず)が他の大臼歯より大きい[21]

手は非常に発達しており、猿人より器用に物体を動かすことができた[1]はアウストラロピテクス属に近いと指を持つ一方で、ヒト属(原人以降)に近い手首と手のひらを持っていた[21]。上半身の構造はヒト属の他のどの種よりも原始的であったと見られている[2]アメリカ合衆国デューク大学古生物学者スティーブ・チャーチルは「腰に線を引いて上は原始的、下は現代的と分けられそうでした」「足の骨だけ見つけたら、現代のアフリカの奥地にいる狩猟民族の骨だと思うでしょう」と述べている[30]

その全体的な解剖学的構造は科学者らに種をアウストラロピテクス属ではなく、ヒト属に分類するように促した。ホモ・ナレディの骨格はヒト属の起源は複雑であり、多系統かも知れず、アフリカ大陸各地でそれぞれ別々に進化してきた可能性があることを示している[31]

ホモ・ナレディの頭部復元模型を作成したのは古生物を専門とする造形作家のジョン・ガーチー(英語版)である[32][33]。ガーチーは骨をスキャンし、約700時間かけてこの模型を制作した[33][34]。体毛にはクマの毛が使われている[34]
年代測定の課題

ライジングスターの化石群の年代測定(英語版)は2015年9月10日の時点で実施されていなかった。放射性炭素年代測定は化石の一部分を破壊しなければならないため、研究チームは化石について詳しく記述した論文を発表するまでは、年代測定を実施するわけにはいかないと判断した[5][35][36]。放射性炭素年代測定は5万年程度前まで計測が可能であり、化石が5万年前よりも古いものかどうかについてのみ判定することができる[36]。しかし、年代などの重大な情報が得られていない段階で発表に踏み切った研究チームに多くの科学者が失望を隠せない様子だという[4]

骨は洞窟の床に横たわっているか浅い堆積物に埋もれた状態で発見された。2つの化石年代測定技術(火山灰の成している層に含まれる化石の年代を調べる方法と流水作用によって堆積した方解石の成している層に含まれる化石の年代を調べる方法がある)は化石が火山灰あるいは流れ石(英語版)の層に埋もれていなかったので、いずれも使用することができない[2]。例えば、東アフリカの年代測定が可能な火山灰層では320万年前のルーシーなどの化石の年齢を判定するのに役立てられている[2]

ある地質学者は洞窟の中で発見された化石は300万年前よりは新しいものだと考えている[37]

リー・バーガーはその解剖学的分析がホモ・ナレディは280-250万年前、ヒト属の始まりかあるいは始まりに近い時期に出現したことを暗示していると述べている[38]。これに対し、ティム・ホワイト(英語版)は化石が100万年前より古いかどうかを知るのは困難であると述べている[35]
研究チームの仮説

ウィスコンシン大学マディソン校で教える人類学者のジョン・ホークス(英語版)は洞窟から回収された骨はフクロウのものが1体ある以外はすべてヒト科の骨だという科学的な事実があると述べている。捕食の兆候が見られず、ヒト科のみが堆積して捕食者が存在しない。骨は一度にまとめてそこに堆積したわけではなかった。表面内の任意の開口部から洞窟内にや土砂が落下した形跡はない。洞窟の中に骨を運ぶような、洞窟内にが流入した形跡もない[39]。ホークスは意図的に体がそこに置かれたとするのが最良の仮説であると結論づけた[40]
儀式的な行動

バーガーらは洞窟内に遺体を配置する行為は儀式的な行動と象徴的思考(英語版)の表れであったと推測する[41]。ここで言う「儀式」とは意図された反復の習慣(洞窟内に遺体を処分する)であり、宗教的な儀式のいずれかのタイプを意味しない[40]


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