ホモ・ナレディ
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2013年11月にリー・バーガー率いる発掘隊(ナショナルジオグラフィック/ウィットウォーターズランド大学ライジングスター遠征[1])は21日間の掘削で少なくとも15体分になる1,550以上の骨の断片を粘土堆積物の中から発見した[19][20]。これはこれまでにアフリカ大陸で発見されたヒト族の化石セットとしては最大規模である[21]

バーガーは迅速に分析を行うためにマラパの化石の分析に協力してくれた約20人のベテラン研究者に加え、30人余りの若手研究者にも声をかけた。ざっと15か国の研究者がヨハネスブルグで6週間ほど分析に没頭した[22]。骨の層状分布は彼らが長期間、おそらく何世紀にもわたって堆積してきたことを示唆している[2]。洞窟の空洞のわずか1m2の範囲から掘り出された。まだ他にも多数の骨が残っていると見られる[6][8][23][24]。化石には頭蓋骨肋骨、ほぼ完全なの骨、耳小骨が含まれる。高齢者、少年、乳児の骨が発見されている[2]。骨の一部は現生人類の骨に近く、それ以外の骨は初期の人類である猿人よりも原始的である。親指、手首、手のひらの骨は一見現生人類に似ているが、手の指の骨は湾曲していて木登りに適している[2]
公表

化石の発見とそれが新種を示すとする理論は2015年9月10日に開かれた記者会見で公表された[1][2][18]。同日にヨハネスブルグではリー・バーガーと研究チームの数人のメンバーによって、ガラスケースに並べられた人骨が披露された[25]。事前にウィットウォーターズランド大学で精選されたものであった[26]

2つの研究論文も学術誌『イーライフ(英語版)』でその日のうちに発表された[1]。1つは新種である説を提唱し[1]、もう1つは化石が発見された洞窟について記述している[10]

バーガーは化石はヒト属として最古のものの一つとみられ、人類と二足歩行霊長類とのミッシングリンクになり得る存在だと語り[27]古代エジプトツタンカーメン王に匹敵する発見だとしている[28]。発見された化石は南アフリカ国民の所有物として扱われ、今後も南アフリカ国内で管理されるものと見られている[26]
形態

『イーライフ』のウェブサイトによると、ホモ・ナレディの身体的特徴はヒト属に非常によく似ているが、アウストラロピテクス属よりやや原始的な特徴も合わせもつ。このような特性は既知の他のヒト族には見られないものである[1]。バーガーらは明らかにヒト属に分類できると考えたが、ヒト属のどの種とも異なる特徴をもつことから、新種だという結論に達した[3]

成人男性は身長約150cm(5ft)、体重約45kg(100lb)と推測されたが、この身長は背の低い現生人類の範囲内に含まれる。女性はそれよりも少し小柄だったとされる。その骨格の分析はホモ・ナレディが完全な直立二足歩行だったことを示唆する。フレア形状ののつくりは猿人に似ているが、足と足首はヒト属に類似している[1][21]。現生人類に似た足の形は長距離の歩行が可能だったことをうかがわせる[29]

しかし、頭蓋腔(英語版)容積は現生人類と比較して著しく小さかった。男性2人と女性2人のものと見られる4個の頭蓋骨が発見されたが、測定したところ、わずか450-550cm3(27-34in3)ほどであった。ホモ・エレクトスの平均は900cm3(55in3)なので、そのおよそ半分程度しかない。ホモ・ナレディの頭蓋骨の頭蓋腔容積は猿人の頭蓋骨のそれと同程度しかない[2]。いわば、オレンジの実ほどの大きさである[29]。それにもかかわらず、頭蓋骨の形状は猿人よりもヒト属に見られるものに類似しているように解説されている。その細長い顔だち、側頭部後頭部のふくらみ、ヒト以外の霊長類に顕著な後眼窩骨の狭窄(英語版)が見られないといった点がおもにあげられる[1]。歯と下顎(英語版)の筋肉組織はほとんどの猿人のものよりも小型で、これは激しい咀嚼を必要としない食事をしていたことを示唆する[1]。現生人類と同じく小さな歯を持つ一方で、猿人に見られるように第3大臼歯(親知らず)が他の大臼歯より大きい[21]

手は非常に発達しており、猿人より器用に物体を動かすことができた[1]はアウストラロピテクス属に近いと指を持つ一方で、ヒト属(原人以降)に近い手首と手のひらを持っていた[21]。上半身の構造はヒト属の他のどの種よりも原始的であったと見られている[2]アメリカ合衆国デューク大学古生物学者スティーブ・チャーチルは「腰に線を引いて上は原始的、下は現代的と分けられそうでした」「足の骨だけ見つけたら、現代のアフリカの奥地にいる狩猟民族の骨だと思うでしょう」と述べている[30]

その全体的な解剖学的構造は科学者らに種をアウストラロピテクス属ではなく、ヒト属に分類するように促した。ホモ・ナレディの骨格はヒト属の起源は複雑であり、多系統かも知れず、アフリカ大陸各地でそれぞれ別々に進化してきた可能性があることを示している[31]

ホモ・ナレディの頭部復元模型を作成したのは古生物を専門とする造形作家のジョン・ガーチー(英語版)である[32][33]。ガーチーは骨をスキャンし、約700時間かけてこの模型を制作した[33][34]。体毛にはクマの毛が使われている[34]
年代測定の課題

ライジングスターの化石群の年代測定(英語版)は2015年9月10日の時点で実施されていなかった。放射性炭素年代測定は化石の一部分を破壊しなければならないため、研究チームは化石について詳しく記述した論文を発表するまでは、年代測定を実施するわけにはいかないと判断した[5][35][36]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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