ホビットの冒険
[Wikipedia|▼Menu]
エルロンド(Elrond) - 裂け谷の領主の半エルフ。「最後の憩」館を訪れたビルボたちに知恵を授ける。

闇の森のエルフ王(Elvenking of Mirkwood) - 森に迷い込んだビルボたちを捕らえる。名前はスランドゥイル(Thranduil)。

ガリオン(Galion) - 闇の森のエルフ王に仕える。王の酒蔵の管理人。



人間

バルド(Bard) - 谷間の国の王ギリオンの子孫。弓の達人であり、五軍の合戦で人間軍を率いて活躍する。

湖の町の統領(Master of Lake-town) - 湖の町エスガロスを統べる領主。



熊人

ビヨルン(Beorn) - 大きな体を持つ、気性の荒い熊人。ビルボたちをもてなす。五軍の合戦にも参戦。


その他の動物

ワシの王(Lord of the Eagles) ‐大鷲族の長。アクマイヌに追い詰められたビルボたち一行を救出する。五軍の合戦にも参戦。『指輪物語』のグワイヒアと同一の存在かどうかは明らかにされていない。

ツグミ(Thrush) - 魔力を持つツグミ族の一匹。重要な局面でビルボやバルドを助ける。

ロアーク(Roac) - 言葉を理解する大ガラス族の長。トーリンやダインの伝言役として活躍する。



トロル

ウイリアム(William) - 旅の途中のビルボたちを捕らえて食料にしようとした3人組のトロルの1匹。

トム(Tom) - 同上。

バート(Bert) - 同上。


ゴブリン

大ゴブリン(The Great Goblin) - 霧ふり山脈のゴブリン族の王。

ボルグ(Bolg) - モリアのゴブリン族の長。祖先の復讐を果たすため一族を率いて、五軍の合戦に参上する。


アクマイヌ(Warg) - ゴブリンの手下の狼のような動物達。五軍のうち敵側の1軍。冒険中の一行を追い詰めたりもした。

ゴクリ(Gollum) - 霧ふり山脈の深奥の湖に住む奇怪な生物。ビルボになぞなぞ合戦を持ちかける。

スマウグ(Smaug) - 赤みがかった金色の鱗を持つドラゴン。谷間の町とはなれ山を荒廃させ、そのすべての宝を奪った貪欲な邪竜。

死人占い師(Necromancer) - 闇の森に居を構える謎の人物として、作中で言及される。実は指輪物語の冥王サウロン

構想と創作
背景

1930年代初めのトールキンは、学問の世界ではオックスフォード大学においてアングロ・サクソン語の「ローリンソン・アンド・ボズワース教授職」にあり、ペンブルク・コレッジのフェローとして活躍していた。創作に関しては、「ゴブリン・フィート」[1]、およびナーサリーライム (マザー・グース)の「ヘイ・ディドル・ディドル」を語り直した「猫とフィドル?未完のナーサリーライム、その呆れた秘密明らかに」[2]という二つの詩作品をすでに発表していた。この時期の創作活動としては、毎年クリスマスに彼の子供たち宛に送った『サンタ・クロースからの手紙』(“The Father Christmas Letters”)(エルフとゴブリンが争い、北極熊くんが登場する挿絵付きの手書きの物語)[3]の他、トールキンが1917年以来手がけてきたエルフ語とその神話世界の創造の発展がある。これらの作品はすべて彼の死後出版された[4]

1955年のW・H・オーデン宛の書簡で、トールキンは、『ホビットの冒険』は、1930年代初めのある日、学業修了検定試験の採点をしていた時に始まったと回想している。トールキンは白紙の解答用紙を見ると、ふと思いついてそこに「地面の穴のなかに、ひとりのホビットが住んでいました」と書いた。1932年の末までには物語は完成し、C・S・ルイスを含む数人の友人[5]とトールキンの学生だったエレイン・グリフィズが原稿を読んでいる[6]。1936年、オックスフォードにいるグリフィズのところに出版社ジョージ・アレン・アンド・アンウィンに勤めている友人のスーザン・ダグナルが訪ねて来た時、グリフィズはダグナルに原稿を貸したか[6]、もしくはトールキンから借りるといいと言ったとされている[7][8]。いずれにせよ、ダグナルは感心し、社長のスタンリー・アンウィンに見せ、彼はそれを息子のレイナーに読ませて書評を書かせた。10歳のレイナーが好意的な短い書評を書くと、トールキンの原稿はアレン・アンド・アンウィンから出版されることになった。
影響

19世紀のアーツ・アンド・クラフツ運動の旗手ウィリアム・モリスは、トールキンに大きな影響を与えた人物の一人である。トールキンはモリスの散文やロマンス詩を模倣し、作品全体のスタイルとアプローチを踏襲している[9]。スマウグの荒らし場で、竜を土地を荒廃させる存在として描いている箇所は、モリスの作品から借用されたわかりやすい例として指摘されている[10]。また、トールキンは、少年の頃にスコットランドの作家サミュエル・ラザフォード・クロケット(英語版)の歴史小説『ブラック・ダグラス(英語版)(The Black Douglas)』に感銘を受け、それに登場する悪役ジル・ド・レを死人占い師(サウロン)のモデルにした、と書き残しており[11]、『ホビットの冒険』と『指輪物語』に登場するいくつかのエピソードは文体や叙述の点でこの作品に共通点があり[12]、作品全体の文体と描写もトールキンに影響を与えたと考えられている[13]

『ホビット』のゴブリンの描写はジョージ・マクドナルドの『王女とゴブリン(英語版)(The Princess and the Goblin)』に強く影響を受けている[14]。しかし、マクドナルドの影響は単に登場人物の造形にとどまらず、彼の作品は、自分のキリスト教信仰においてファンタジーが果たす役割を考える上で、トールキンにとって大きな助けになった[15]

トールキンの作品はいずれも北欧神話の影響が強く見られる。これは彼の北欧神話に対する生涯かけての情熱と、大学でのゲルマン語文献学のキャリアを反映している[16]。『ホビットの冒険』も例外ではなく、本作にも北ヨーロッパの文学、神話、言語の影響が見られ[17]、とくに『詩のエッダ』と『散文のエッダ』に多大な影響を受けている。たとえば、13人のドワーフとガンダルフの名前は『詩のエッダ』に登場する小人の名前に由来する[18]。しかし、古ノルド語から名前を借用しているものの、ドワーフのキャラクターはそれよりも『白雪姫』や『白雪と紅薔薇』などといったグリム童話からとられている。『白雪と紅薔薇』はビヨルンの造形にも影響を与えた可能性がある[19]

"Misty Mountains"(霧ふり山脈)や"Bag End"(袋小路屋敷)といった説明的な名前の付け方は、古ノルド語のサガの命名法を連想させる[20]。ドワーフに味方するカラスの名前は、古ノルド語でカラスを意味する語に由来する[21]。ただし、『ホビット』のカラスの性質は古ノルド語や古英語での「戦死者の屍肉を漁る動物」というものとは異なっている。しかし、トールキンは単に演出として資料の表面を利用しただけではない。言葉の様式、とくに古語と現代語のつながりが物語の重要なテーマの一つになっている[22]。北欧のサガと『ホビット』に共通するもう一つの特徴は、文章入りの地図である[20]。トールキンが描いたドワーフの地図、口絵、ブックカバーなどイラストのいくつかはルーン文字アングロ・サクソン語のバリエーションが使われている。

古英語の文学作品、とくに『ベーオウルフ』に見られるテーマは、ビルボが足を踏み入れる世界を形作る上で大きな位置を占めている。『ベーオウルフ』の研究者だったトールキンは、この詩を『ホビット』を書く上で「もっとも価値ある資料」の一つだとしている[23]。彼は歴史的価値だけでなく、『ベーオウルフ』の文学的価値を高く評価した最初の学者とされており、トールキンの1934年の講義『ベーオウルフ 怪物と批評家(Beowulf: the Monsters and the Critics)』の講義録は、現在でも古英語の授業で使用されることがある。『ベーオウルフ』には、トールキンが『ホビット』で借用した、知恵を持つ巨大な竜などいくつかの要素が含まれており[24]、たとえば侵入者の臭いをかごうと竜が首を伸ばす描写は、若干の変更を加えているものの『ベーオウルフ』からそのまま使われている[25]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:123 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef