ホウレンソウ
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食味は東洋種の方が葉が柔らかくて甘味が出てよいが、長日条件下でトウが立ちやすいため、秋まきに適している[4]。西洋種は灰汁が強く加熱調理向きであるが[4]、トウが立ちにくいという利点がある[15]。日本では、100種以上のホウレンソウの品種が作られているが[16]、東洋種と西洋種の交配からできた品種が主流で、一代交配種(F1)が大半で[2][12]、外見では西洋種のような丸葉のタイプや、東洋種のような深い切れ込みがある葉のタイプがある[4]。葉の軸(葉柄)や葉脈が赤い品種群は、赤茎種とも呼ばれ、灰汁が少なくあっさりした味わいで、生食にも向く[4]

東洋種

日本ホウレンソウ - 日本在来種。葉の切れ込みが多く、柔らかくて甘味があるのが特徴[14]。株はあまり大きくならずに、葉を地面に広げて育つ[17]。アクが少なめでお浸しに向く[16]

山形赤根ほうれんそう - 山形県特産の東洋系の品種で、葉身は薄くてギザギザした切れ込みがあり、1株から10本以上の茎が出るのが特徴。根の部分は紅く、土臭さがない。[12]

交雑種(交配種)

剣葉ほうれんそう - 東洋系で葉先が尖り、切れ込みが深いのが特徴で、葉身は薄くて柔らかく、アクが少なくて甘味がある[12]。「豊葉」「次郎丸」などの品種が知られる[11]

丸葉ほうれんそう - 葉に丸みがあり柄が太いのが特徴で、葉身は厚く土臭さがある。現在の主流は東洋系と西洋系の交配種[12]

その他

縮みホウレンソウ - 「寒締め栽培」で寒さに当たって、肉厚の葉に細かなチジミが入るのが特徴。アクが少なく、甘味が強い。[14]

赤茎ホウレンソウ - ヒユ科のスイスチャード(和名:フダンソウ)との交配で作られた品種で、茎が赤いのが特徴。生食用でアクが少なく、ベビーリーフとしても市場に出回っている。[14]

サラダほうれんそう - 生食用に改良された品種で、全体的に葉の色が薄く、茎は細くて赤いものと緑色のものがある。多くは水耕栽培されている[16]。葉が柔らかくでアクが少なく、甘味があってそのまま生食できる。[14][12]

栽培ほうれん草畑

ホウレンソウは種まきから約1か月で収穫でき[4]、生長の度合いは栽培期間中の日照時間の合算で決まる[9]。耐寒性は極めて強く、0℃以下でも生育を続け、?10℃の低温にも耐える[18]。栽培時期は3月 - 6月(春まき)、または9 - 2月(秋まき)がある[19]。栽培に適した土壌酸度は pH 6.5 - 7.0で、生育適温 15 - 20℃、発芽適温15 - 20℃とされ、冷涼な気候を好み、酸性土壌や過湿を嫌う性質がある[4]。栽培難度はふつうで、春まきよりも秋まきのほうが育てやすい[16]連作は可能とする文献や[16]連作障害があるので輪作は1年あけるようにする必要があるとする文献もある[3]。ホウレンソウの種子は外殻に包まれており、そのままでは発芽率が悪いことから、経済的な栽培にはネーキッド種子と呼ばれる裸種子が用いられる。移植を嫌う直根型であるので、種子は圃場に直接播かれる[3]。子葉展開後本葉が展開し、葉伸長20 - 30センチメートルの頃に収穫期を迎える。種まきは春まきなら3 - 5月、秋まきなら9 - 11月に行う。収穫は春まきなら4 - 6月、秋まきなら10月 - 翌2月に行う[20]。種子をすじまきか点まきにして、発芽まで水切れしないように管理し、間引きしながら育てていくのが大切なポイントになる[19]。また、種をまく時期によって、時期に合った品種を選ぶことも大切となり、春まきはとうが立ちにくい西洋種、秋冬まきは寒さに強い東洋種が向いている[16]

種まきは、酸性土壌では育たないため苦土石灰を多めにまいたり[19]、完熟堆肥をすき込んで調整した中性土壌に畝を作り、種を筋まきして薄く土を被せるが、被土の厚さが薄く均一でないと発芽しなかったり、発芽してもうまく育たない場合がある[21]。栽培期間が短いホウレンソウは、発芽を揃えることが重要で、種を一昼夜水につけてから、水を切って発根させる「芽だし」をさせた種をまく方法もある[10]。発芽後の本葉が1 - 2枚のころに、葉が触れ合わない程度に3 - 4センチメートル (cm) 間隔で間引きを行い、株元に土寄せを行う。1週間を目安に繰り返し間引きを行い、2回目は本葉が3 - 4枚で行い間隔を6 cmほどにする。その際に、追肥、土寄せも行う[19][21]。さらに本葉が4 - 5枚になった頃に、追肥と土寄せを行う[21]。草丈が25 cm内外になったら収穫適期で、株ごと抜き取って根を切り落とすか、株元を掘り下げてハサミで根を少し残すように切り取る方法で収穫を行う[21][22]。ホウレンソウは、昼間の時間が長くなる「長日条件」になると薹(トウ)が立ち、花茎が伸びて葉が固くなり、味が落ちてしまう性質がある[21]。そのため、街灯などの影響を受けにくい夜間に暗くなる場所で栽培する[21]

ホウレンソウがおいしくなる時期は冬である[注 2]。寒さや霜に当たると、ロゼットの様に地面に葉を広げて栄養と甘味を蓄えて肉厚になる性質があり[22]、収穫前に冷温にさらすこともしばしば行われ、これらの処理は「寒締め(かんじめ)」と呼ばれている。これは農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)(旧東北農業試験場)が確立した栽培方法である[23][24]。寒締めを行ったホウレンソウは、低温ストレスにより糖度の上昇、ビタミンCビタミンEβカロチンの濃度の上昇が起こる。寒締め栽培は平均気温が低い群馬県青森県などで盛んに行われている。

病虫害には、アブラムシハスモンヨトウ(ヨトウムシ)、べと病、立ち枯れ病[注 3]などがある[4][10]


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