ルース・ペンシリング、すなわち「ざっくりした描き方」と呼ばれる流儀では、鉛筆画に特有のあいまいさをあえて残しておき、インカーに意図を解釈させる。この場合、クレジット表記ではペンシラーが「ブレークダウン」もしくは「レイアウト」を行ったと記され、インカーは「エンベリッシャー」もしくは「フィニッシャー」と呼ばれるのが通例である[4]。これに対し、原稿を細部まで描き込んでペン画に反映されるべきニュアンスをすべて指定することを好むペンシラーもいる。この流儀はタイト・ペンシリング、すなわち「かっちりした描き方」と呼ばれる。 通常、コミックブックのペンシラーは編集者との密な連携のもとで作業を行い、編集者はライターに依頼したスクリプトをペンシラーに伝える。 コミックブックのスクリプトの形式はさまざまである。ライターの中でもアラン・ムーアなどは、ページごとに精緻な長文による完全な梗概を作成する。逆にプロットの概略しか伝えないライターは、重要なシーンを短く描写するだけで、セリフも断片的だったり書かないこともある。後者の形式は、マーベル・コミックの編集長を長く務めたスタン・リーが好んでいたことから、マーベル・メソッドという名で知られるようになった[5]。 ライターやほかのアーティスト(アートディレクターなど)がスクリプトに「ブレークダウン」と呼ばれるコマ割り案を付ける場合があり、ペンシラーはそれにならってシーンの描き方を決める。ブレークダウンがなければ、各ページのコマ割りを、たとえばコマの数や形と配置を決定するのはペンシラーの役目となる。スクリプトが作画の細部を指定していても、ペンシラーがもっといい構図の取り方があると感じ、スクリプトを無視することがある。ただし、それには編集者やライターとの協議が必要なのが一般的である。
ワークフロー
脚注^ Fox, Margalit