歴史上のペンギン分類には大きく分けて、いずれかの海鳥の仲間だとする説と、他に類縁のない独特のグループだとする説とがあった。
Nitzsch (1840) はペンギンを、アビ類・カイツブリ類・ウミスズメ類と共に Pygopodes に分類した。ほぼ同じグループを Garrod (1873; 1874) は Anseres、Reichenow (1882) は Urinatores と呼んだ。
Gray (1849) はやや異なり、海鳥・水鳥の大半を含む Anseres に含めた。
それらに対し、Huxley (1867) はペンギンを、他の海鳥から分離し Spheniscomorphae とした。Sclater (1880) は、独立したペンギン目 Impennes とした。Stejneger (1885) は、独立したペンギン上目Impennes とした。Menzbier (1887) は、鳥類を4グループに分けたうちの1つ Eupodornithes をペンギンに当て、ペンギンは爬虫類の祖先の段階で他の鳥類とは分かれていたと示唆した。
Furbringer (1888); Gadow (1893); Pycraft (1898); Boas (1933) などは、(現在知られているとおり)ペンギンはミズナギドリ目に最も近いとした。それ以降は、ペンギンは目をなし、ミズナギドリ目に近縁だとする説が主流となった。ただし、独立したグループを形成するという説も後々まで残った。
Verheyen (1961) はペンギン目を、ミズナギドリ目・ウミスズメ目(ペリカン科・ウミスズメ科・アビ科)と共に Hygrornithes 上目に分類した[9]。
Bock (1982) はペンギン目を、新顎上目・古顎上目に並ぶ第3の上目であるペンギン上目 Impennes に分類した。
Sibley & Ahlquist (1990) はペンギン目を廃し、現在の water birds 全体を拡大したコウノトリ目に含めた。ペンギン科はグンカンドリ科・アビ科・ミズナギドリ科(現在のミズナギドリ目)と共にミズナギドリ上科に含めた。最古のペンギン ワイマヌ・マンネリンギの想像図フンボルトペンギン属の化石種2種とフンボルトペンギン(下)の頭骨
Clarke et al. (2003) はペンギン科とペンギン目を系統的に再定義し、ペンギン科は現生ペンギンの最も新しい共通祖先の子孫、ペンギン目はペンギンの祖先が飛翔能力を失ってからの子孫とした。
さらに彼らは、ペンギンの祖先が他の現生鳥類から枝分かれして以降の子孫として Pansphenisciformes も定義した。ただし、化石が発見されている最古のペンギンもすでに飛翔能力を失っており、Pansphenisciformes とペンギン目は現状では同じである。
ペンギン科(Clarke et al. の意味での)に含まれる化石属は発見されておらず、ペンギン科には現生属のみが含まれる[10]。ただし、ケープペンギン属の化石種2種 S. megaramphus と S. urbinai がペンギン科に含まれる。
ペンギンの絶滅属については、以下の系統が求まっている[10][11](属分類と矛盾する部分は簡略化している)。ただし遺伝子による系統に比べれば分岐は不確実である。
ペンギン目
ワイマヌ Waimanu
デルフィオルニス Delphinornis
マランビオルニス Marambiornis
メセタオルニス Mesetaornis
ペルディプテス Perudyptes
アンスロポルニス Anthropornis
パレユーディプテス Palaeeudyptes
イカディプテス Icadyptes
ジャイアントペンギン Pachydyptes
アルケオスフェニスクス Archaeospheniscus
ダントルーノルニス Duntroonornis
パラプテノディテス Paraptenodytes
アルスロディテス Arthrodytes
プラティディプテス Platydyptes
パレオスフェニスクス Palaeospheniscus
エレティスクス Eretiscus
デゲ Dege
マープルソルニス Marplesornis
ペンギン科(現生ペンギン)
Simpson (1946) は化石ペンギンを4亜科、現生ペンギンをペンギン亜科 Spheniscinae、計5亜科に分類していた。
パレオスフェニス亜科 Palaeospheniscinae - パレオスフェニスクス Palaeospheniscus
パラプテノイディテス亜科 Paraptenodytinae - パラプテノディテス Paraptenodytes, アルスロディテス Arthrodytes
パレユーディプテス亜科 Palaeeudyptinae - パレユーディプテス Palaeeudyptes
アンスロポルニス亜科 Anthropornithinae - アンスロポルニス Anthropornis, デルフィノルニス Delphinornis, ジャイアントペンギン Pachydyptes
その後 Marples (1952) はアンスロポルニス亜科をパレユーディプテス亜科に統合した。しかし系統解析では、Simpson や Marples の枠組みは否定されている。
生態トボガンするキングペンギン
(2009年2月:旭川市旭山動物園)海面から飛び出すヒゲペンギン
陸上ではフリッパーをばたつかせながら歩く姿がよく知られているが、氷上や砂浜などでは腹ばいになって滑る。これをトボガンという[12]。
海中では翼を羽ばたかせて泳ぐ。ペンギン類で最も速いジェンツーペンギンの水中速度は最大36 km/hに達する。イルカのように海面でジャンプすることもあり、水中から陸上に戻るときにはいったん深く潜り、勢いを付けて飛びあがる。独特の体型は泳ぐことに特化しており、海中を自在に泳ぎ回る様はしばしば「水中を飛ぶ」と形容される。
一方、天敵はシャチ・ヒョウアザラシ・サメなどである。ヒゲペンギンの群れ 陸上で繁殖する。卵は1個?3個を産み、オスとメスで抱卵をする。またコウテイペンギンのように、ある程度成長したヒナ同士で集まり「クレイシュ」(creche。フランス語で託児所の意。クレイシとも)を形成するものがある。また、羽毛が抜け替わる換羽期には海に入らず、絶食状態で陸上にとどまる種もいる。 ほとんどのペンギンは他の鳥類と同様に春から夏にかけて繁殖するが、最大種のコウテイペンギンは、?60℃に達する冬の南極大陸で繁殖する。そのため、世界で最も過酷な子育てをする鳥と言われる。 ペンギンの西洋世界での認知は、温帯産ペンギンについては大航海時代に始まる。亜南極産は18世紀以降、南極産は19世紀以降のようである。日本では江戸時代後期に蘭書
人間との関係
過去には、肉や脂肪から摂れる油を採取するために、主に南極探検の調査隊がペンギンを捕獲していた時代があった。