ベータマックス
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ソニーの社員手帳(文庫本)サイズ[3]

テープとヘッドの相対速度が大きく、画質面で有利(VHSの5.8m/sに対し、βI:6.973 m/s、βII:6.993 m/s)。

初期の機種でも特殊再生が行えた。

テープがデッキに挿入されている間は常にメカにローディングされている「フルローディング」が基本である。このため早送り・巻き戻し動作と再生動作の切替が俊敏であり、操作性に優れていた。また、テープの情報が常にヘッドから読み取れるため、テープカウンターを秒単位で時間表示する「リニアタイムカウンター」も搭載できた。これに対してVHSは、再生時だけテープをローディングする「パートタイムローディング」が基本であった[注釈 2]

常用の標準画質録画(βIIモード)において、L-830テープで200分録画できた。

VHSの最長テープは長年T-160(標準モードで160分)だったため、β最末期に至るまで残された数少ないアドバンテージのひとつだった。ソニーのベータ撤退から更に下り、VHS自身も終焉の見え始めた頃になってT-210が発売され、ようやく覆された。


長時間録画モード(βIII)の録画時間ではVHS(3倍モード)の方に分があったが、画質ではβIIIの方が遥かに優れていた。

VHSの3倍モードの画質は1987年のS-VHS導入を皮切りとして90年代に様々な技術的改良が行われて実用に耐えるレベルとなっていったが、その頃にはすでにベータは市場から事実上撤退していた。


テープのリーダー(先端・終端)部分はアルミテープになっており、センシングコイルにより先端と終端を検出、自動停止するためセンサーの耐久性に優れ、巻き戻しや早送り時にテープ自体を傷めない構造となっている。なおVHSビデオ規格はリーダー部分が透明になっており、光検出により自動停止する。この光検出手法はテープの作成が安価になる反面、フォトトランジスタの耐久性の問題、カセットハーフの構造自体を変えにくい(ハーフの色や確認窓を変えられない)ためデザイン面で制約が出るなどの欠点があった。ベータテープには当初からグレーや白、藍色などのハーフが存在したが、VHSテープが1990年頃まで黒しか発売されなかったのはこのためである(しかし、後にカラーカセットでも不透明ならば光検出に問題ないことが判明している)。

値段がそれぞれ、60分用テープが4500円で30分用テープが3000円となり、性能的にも優れたものだったが、VHSより部品点数が多く、調整箇所も高い精度を要求される構造により、家電メーカーにとって家庭用ビデオの普及期に廉価機の投入が難しかったという欠点も持ち合わせていた。東芝や三洋電機からは思い切って機能を省いた廉価機も初期から発売されていた。とは言え規格主幹のソニーが性能重視の姿勢で、廉価機の開発が出遅れたこともあって思いの外シェアを伸ばすことができなかった。それゆえに「性能が優れているものが普及するとは限らない例」として、初期のレコードの例[注釈 3]とともによく引き合いに出されることも少なくない。

しかし、ベータ方式を基に策定された放送用規格「ベータカム」は、20年以上に渡り世界の放送業界のデファクトスタンダードとなり、デジタルベータカムHDCAMなど、再生互換性を持つ製品バリエーションを増やしながら2016年3月末まで販売されていた[4][5]。また、ベータ方式の録画用ビデオテープソニーマーケティングが運営するソニーストアで注文可能だったが[6]、この録画用ビデオテープも2016年3月をもって出荷終了することがアナウンスされた[2]

2009年、「VHS方式VTRとの技術競争を通じて、世界の記録技術の進歩に大きく貢献した機種として重要である。」として、家庭用ベータ方式VTR1号機「SL-6300」が国立科学博物館の定めた重要科学技術史資料(未来技術遺産)として登録された[7]
名称

『Betamax』の名称は、記録方式として磁気テープ上の未記録領域であるガードバンドを廃し(βIsモードにはガードバンドあり)、記録再生ヘッドのアジマスを互い違いにずらしてフィールド単位の信号を隣接して記録する「アジマス記録方式」が「情報を詰めてベタに記録している状態」から通称「ベタ記録」と開発現場で呼ばれていたこと、テープローディング時の形状がβの字に似ている、英語の「better(ベター、より良い)」に響きが通じ縁起が良い、などから「ベータ」案が提言され、それに最高・最大という意の「MAX」を組み合わせて命名された[3]
フォーマット概要ベータマックスのビデオテープ

記録方式:FM ヘリカルスキャンアジマス方式

記録ヘッド数:2

ヘッドドラム径:74.487 mm

ヘッドドラム回転数:約30 Hz(約1800 rpm

テープ幅:12.65 mm(1/2インチ

テープ送り速度:βI・βIs - 40.0 mm/s / βII - 20.0 mm/s / βIII - 13.3 mm/s

記録トラック幅:βI - 約58 μm / βIs - 39 μm(ソニー機)・33 μm(NEC機) / βII - 29 μm / βIII - 19.5 μm

信号方式:(ノーマルモード、その他のモードは記録モード一覧を参照)

映像信号:周波数変調(FM)シンクチップ:3.6 MHz/白ピーク:4.8 MHz:クロマ信号:低域変換方式

音声信号:2チャンネル長手方向記録(ノーマル音声トラック)、FM変調記録(Beta hi-fi)


テープ仕様

厚み:L-500以下 - 19.0 μm / L-750 - 14.5 μm / L-830 - 12.5 μm / EL-500・EL-750(ED Metal)- 19.0 μm

保磁力:60kA/m(Betamax)、124kA/m(ED Metal)

残留磁束密度:180mT(Betamax)、260mT(ED Metal)


規格の経緯

一般的に画質の良さが特徴として謳われていたが、本来の基本規格(後にβI・ベータワンと命名)から、VHSとの競合で生まれた2倍モードであるβII(ベータツー)へと実質的標準モードが移行した時点でVHS標準モードとは大差がなくなり、ソニー製ベータが解像感優先の再生画でVHSがSN比ノイズの少なさ)優先の再生画といった「再現性の差異」がそれぞれの特徴となった。

画質についてはソニー製機種の傾向が大きく取り上げられていたが、東芝は解像感とSN比のバランスを重視した平均的な調整で、NEC・三洋電機がβIIIモードの再生画質に配慮するためSN比を重視しVHSに近い画質、といったメーカー毎の傾向もあった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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