ベータマックス
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ハイファイ音声導入後に行ったFMキャリアの高周波数化の実績を踏まえ、正式にFMキャリアのさらなる高周波数化を施して解像度低下を補い、狭幅ヘッド使用による隣接トラックの影響排除と併せた再生画の再調整を施し、総合的な画像の品質向上を図ったものが「Hi-Bandベータ[注釈 5]」フォーマットである。同時に、より高画質な記録と当時流行しつつあったビデオ編集時のダビングによる画質劣化を抑える目的で、テープ速度をβI相当に速めることで磁気情報量を増した「βIsモード」を開発(旧βI規格とは異なる)、それのさらなる高解像度化を図った「SHB Hi-Bandモード」(SHB-βIs、当初はスーパーハイバンドと銘打たれていたが商標登録に支障したため名称を変更)も続けて開発・搭載し、「高画質録画ならベータ」というイメージ戦略を展開した。
EDベータEDベータテープ。誤消去防止用のツメがスライド式になっており、場所も異なる。元の場所には穴が開いており、ツメが折れた状態となっている

詳細は「EDBeta」を参照。

その後も更なる「高画質記録」を目指し、VHS陣営が一歩先に開発したS-VHS方式に対抗すべく、記録方式を再設計したEDベータ(ED-βII・ED-βIII)を開発した。その名前が示すとおり、単なるS-VHSの後追いではなく、EDTVへの対応を見越した規格だった。

EDベータは高価なメタルテープを使用して高度な記録領域を得て、FM輝度信号の白ピークレベルを9.3MHzに拡張し、水平解像度500TV本を実現するなど、S-VHS方式より高解像度を得た。だが、結果としてテープの価格を高く設定せざるを得ず、酸化鉄磁性体(従来方式用と同じテープ素材)の高性能テープ使用を前提として開発されたS-VHSには、テープ価格で最終的に大きな差を付けられた[注釈 6]

地上波アナログ放送水平解像度は330本、BSアナログ放送で350本、レーザーディスクは430本程度が限界であり、S-VHS規格の水平解像度400本で十分対応でき、EDベータの水平解像度500本は明らかにオーバースペックだった。しかもこれは輝度信号の話であり、色信号についてはS-VHSもEDベータもハイバンド化は行っていない。逆にハイバンド化が著しいEDベータは色信号のハイバンド化を行っていないという欠点が、S-VHSよりも更に目立ってしまった。

このEDベータの高解像度を活かすには、EDTVの普及が前提だったが、結局の所は放送局側は将来のデジタル放送への対応に手一杯であり、過渡期の規格であるEDTVにあえて力を注ぐことは無く、ほとんど普及せずに終わった。あるいはビデオソフトの発売が不可欠になるが、ほとんど発売されずに終わった(後述の「四季の丘」シリーズなど一部のみ)。1988年6月にEDベータ方式カムコーダ・EDC-50を発売したが、発売当時の本体価格が73万円と高額だったため、ハイアマチュア及び一部の業務用に使われるのみだった。ようやく1995年DV規格を採用したカムコーダが発売され、DVからの編集にEDベータの高画質が活かされることになった頃には、もはや手遅れとなっていた(そもそも編集においては、DV同士をi.LINK接続してデジタル信号でダビングを行ったほうが、遥かに画質が良い)。
記録モード一覧

ノーマルベータフォーマット - ソニー(全モード)・ベータフォーマット参入各社(βII・βIIIのみ対応)

βI(本来のベータマックスの基本モード・録画は最初期のソニー機のみ対応)

βII(ベータマックス・ベータフォーマットの実質的標準モード、βI に対する2倍モード)

βIII(ベータマックス・ベータフォーマットの長時間モード、βI に対する3倍モードで、βIIからは1.5倍に相当)


Beta hi-fiフォーマット - ソニー及びベータフォーマット参入各社

βII(高音質記録対応のフォーマット・ノーマルベータ機での再生では画像にノイズが入る弊害あり)

βIII(高音質記録対応のフォーマット・ノーマルベータ機での再生では画像にノイズが入る弊害あり)


Hi-Bandベータフォーマット - ソニー・NEC・パイオニア(βIs対応)、アイワ・東芝・三洋電機(輸出用機)(βII・βIIIのみ対応)

βIs(Hi-Band βIIを基本としてテープ速度を高めた規格で、βIモードとの互換性はない)

SHB-βIs(βIsモードを更にハイバンド化・βIsモードでの再生も可能 ソニーの中・高級機のみに搭載)

βII(Beta hi-fiフォーマットをベースにした高画質モード・ノーマル音声機もあり)

βIII(Beta hi-fiフォーマットをベースにした高画質モード・ノーマル音声機もあり)


EDベータフォーマット - ソニー

ED-βII(EDベータ対応機種のみで録画再生可能)

ED-βIII(EDベータ対応機種のみで録画再生可能)

記録モード一覧ノーマルBeta hi-fiHi-BandSHB Hi-BandED Beta
FM輝度信号シンクチップ3.6MHz4.0MHz4.4MHz4.8MHz6.8MHz
FM輝度信号白ピーク4.8MHz5.2MHz5.6MHz6.0MHz9.3MHz
周波数偏移1.2MHz2.5MHz
水平解像度240本270本280本500本
録画モードβI(一部機種)
/ βII / βIIIβII / βIIIβIs(一部機種)
/ βII / βIIIβIsβII / βIII
テープ
酸化鉄メタル

ビジネス戦略の失敗
ビデオ戦争

ソニーはVTR機器に関して1960年代から方式・規格の統一を企図しており、統一規格としてU規格を制定した経緯もあり、1/2インチVTRでもこの方針を継続して各社に働きかけた[11]1974年にはU規格で提携した松下電器日本ビクターにソニー側から試作機・技術・ノウハウを公開するなど規格統一に向けた取り組みを行ったが、両社からは反応がなく、1976年9月には日本ビクターから「VHS規格」VTRが発表され、結果的に規格争いビデオ戦争)が発生した[11][12]。松下電器は1973年に発売した独自規格「オートビジョン」が全く市場に受け入れられなかったこと[13][14]やグループ内会社でのVX方式VTRの開発・発売、松下幸之助のベータに対する興味などもあり、販売力のある同社の選択が注目されていたが、1976年末に松下幸之助により最終的な判断が下され、後発組のハンディキャップを取り返すため「製造コストが安い」部分を重視してVHS方式の採用を決定[11]、松下電器のベータ陣営取り込みに失敗した。
技術への偏りとアンチ・ユーザーフレンドリー

VHS陣営との競争による技術向上の結果とはいえ、合計で11もの録画再生規格ができ、またBeta hi-fiやHi-Bandモードで旧機種での再生で画像に影響が出る方式[注釈 7]としたり(VHSではノーマル・Hi-Fiで完全な再生互換がある)、ソニー以外のメーカーが採用しなかったβI・βIsモード(一部例外あり)やβNR(ベータノイズリダクション・初期のノーマル音声デッキに搭載)など、再生対応機種が限られるフォーマットやノイズリダクションシステムが混在したことから、普及期においてユーザーの混乱を招くこととなった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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