ベータマックス
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Beta hi-fi

元来から音声記録トラックの問題で音質が優れているとは言い難かった各ビデオ規格だったが、ベータフォーマットにおいてはβIIモードがVHS標準モードよりテープ速度が遅くなることからなおさらに不利となった。そのため再生イコライザの調整で音質のバランスを取ろうとしたがヒスノイズが目立つなどしたため、ソニーは一部の上位機種(SL-J7・SL-J9などのステレオ対応機)にβNR(ベータノイズリダクションdbx、および東芝が開発したadres、三洋電機が開発したSuper Dに限りなく近い音声ノイズリダクションシステム)を搭載するなどし、音質面での劣勢をカバーすべく努力していた。

1983年には、音質面での不利を克服し更なる差別化を図るため「Beta hi-fi」(音声FM記録)を開発しベータ陣営各メーカーが採用、圧倒的な改善が図られてVHSとの大きな差別化となった。しかしわずか1ヶ月後にはVHSも独立ヘッドで磁気深層記録を行うVHS-HiFiを導入し、これに追随した。

Beta hi-fi方式は映像ヘッドでBeta hi-fi記録を行うため、VHS-HiFi方式に見られる映像・HiFi音声のトラッキング不一致が原理的に発生せず、他機での再生時も安定して再生が行えるメリットがあった(ただし、他機再生ではDCノイズが発生しやすい欠点もあった)。また、VHS-HiFi方式で問題となったヘッド切り替えタイミングのスイッチングノイズは原理的に発生しない。しかしその一方、映像用と同一のヘッドを用いて映像信号帯域の隙間に記録する方式としたため、音声記録帯域を確保する必要から映像信号帯域が若干削られ、それが画質劣化を招くこととなった(映像記録帯域の狭小化や、hi-fi音声信号が映像信号に干渉することによる解像度低下など)。また、映像記録帯域を若干削っているため、hi-fiでない従来のベータデッキでhi-fi記録のビデオを再生すると、hi-fi音声記録帯域の一部も映像信号として出力してしまうため、映像にビートノイズが入る弊害も起こった[10]

Hi-Fi化による画質劣化を本格的に改善するため、当時の磁気テープ性能の目覚ましい向上を背景として、一部機種(SL-HF300など)ではFMキャリア周波数を3.6MHzから4.0MHzへと400kHz高周波数化することで解像度低下を補い(後述のHi-Bandベータ導入以後に「隠れハイバンド」などと呼ばれた)、併せて従来よりギャップの狭いヘッドを用いることでβIIモードで問題となっていた隣接トラックからの影響を減らすことに成功、さらにβIIモードでの特殊再生対応として追加ヘッドを搭載するなどした結果、これまでと違った再生画質を追求することが可能となった。

Hi-Fi化による画質劣化は、第1号機のSONYのSL-HF77においては発売当初から既に問題となり、画質改善キットと呼ばれる追加対策が行われた。キットはFMキャリア周波数を3.6MHzから4.0MHzへシフトアップするハイバンド化と、それに伴う基板の部品交換・設定変更だったようで、メーカーでの改造(取付)対応としていた。

ユニークなところでは、映像ヘッドでBeta hi-fi記録を行うという特性を生かして、Hi-Fi回路を別売り(HiFiプロセッサー)にして、追加増設することでBeta hi-fi対応可能なノーマル音声対応デッキ「BetaPlus」もソニー、およびアイワからそれぞれ発売された。
Hi-Bandベータ

ハイファイ音声導入後に行ったFMキャリアの高周波数化の実績を踏まえ、正式にFMキャリアのさらなる高周波数化を施して解像度低下を補い、狭幅ヘッド使用による隣接トラックの影響排除と併せた再生画の再調整を施し、総合的な画像の品質向上を図ったものが「Hi-Bandベータ[注釈 5]」フォーマットである。同時に、より高画質な記録と当時流行しつつあったビデオ編集時のダビングによる画質劣化を抑える目的で、テープ速度をβI相当に速めることで磁気情報量を増した「βIsモード」を開発(旧βI規格とは異なる)、それのさらなる高解像度化を図った「SHB Hi-Bandモード」(SHB-βIs、当初はスーパーハイバンドと銘打たれていたが商標登録に支障したため名称を変更)も続けて開発・搭載し、「高画質録画ならベータ」というイメージ戦略を展開した。
EDベータEDベータテープ。誤消去防止用のツメがスライド式になっており、場所も異なる。元の場所には穴が開いており、ツメが折れた状態となっている

詳細は「EDBeta」を参照。

その後も更なる「高画質記録」を目指し、VHS陣営が一歩先に開発したS-VHS方式に対抗すべく、記録方式を再設計したEDベータ(ED-βII・ED-βIII)を開発した。その名前が示すとおり、単なるS-VHSの後追いではなく、EDTVへの対応を見越した規格だった。

EDベータは高価なメタルテープを使用して高度な記録領域を得て、FM輝度信号の白ピークレベルを9.3MHzに拡張し、水平解像度500TV本を実現するなど、S-VHS方式より高解像度を得た。だが、結果としてテープの価格を高く設定せざるを得ず、酸化鉄磁性体(従来方式用と同じテープ素材)の高性能テープ使用を前提として開発されたS-VHSには、テープ価格で最終的に大きな差を付けられた[注釈 6]

地上波アナログ放送水平解像度は330本、BSアナログ放送で350本、レーザーディスクは430本程度が限界であり、S-VHS規格の水平解像度400本で十分対応でき、EDベータの水平解像度500本は明らかにオーバースペックだった。しかもこれは輝度信号の話であり、色信号についてはS-VHSもEDベータもハイバンド化は行っていない。逆にハイバンド化が著しいEDベータは色信号のハイバンド化を行っていないという欠点が、S-VHSよりも更に目立ってしまった。

このEDベータの高解像度を活かすには、EDTVの普及が前提だったが、結局の所は放送局側は将来のデジタル放送への対応に手一杯であり、過渡期の規格であるEDTVにあえて力を注ぐことは無く、ほとんど普及せずに終わった。あるいはビデオソフトの発売が不可欠になるが、ほとんど発売されずに終わった(後述の「四季の丘」シリーズなど一部のみ)。1988年6月にEDベータ方式カムコーダ・EDC-50を発売したが、発売当時の本体価格が73万円と高額だったため、ハイアマチュア及び一部の業務用に使われるのみだった。ようやく1995年DV規格を採用したカムコーダが発売され、DVからの編集にEDベータの高画質が活かされることになった頃には、もはや手遅れとなっていた(そもそも編集においては、DV同士をi.LINK接続してデジタル信号でダビングを行ったほうが、遥かに画質が良い)。
記録モード一覧

ノーマルベータフォーマット - ソニー(全モード)・ベータフォーマット参入各社(βII・βIIIのみ対応)

βI(本来のベータマックスの基本モード・録画は最初期のソニー機のみ対応)

βII(ベータマックス・ベータフォーマットの実質的標準モード、βI に対する2倍モード)

βIII(ベータマックス・ベータフォーマットの長時間モード、βI に対する3倍モードで、βIIからは1.5倍に相当)


Beta hi-fiフォーマット - ソニー及びベータフォーマット参入各社

βII(高音質記録対応のフォーマット・ノーマルベータ機での再生では画像にノイズが入る弊害あり)

βIII(高音質記録対応のフォーマット・ノーマルベータ機での再生では画像にノイズが入る弊害あり)


Hi-Bandベータフォーマット - ソニー・NEC・パイオニア(βIs対応)、アイワ・東芝・三洋電機(輸出用機)(βII・βIIIのみ対応)

βIs(Hi-Band βIIを基本としてテープ速度を高めた規格で、βIモードとの互換性はない)

SHB-βIs(βIsモードを更にハイバンド化・βIsモードでの再生も可能 ソニーの中・高級機のみに搭載)

βII(Beta hi-fiフォーマットをベースにした高画質モード・ノーマル音声機もあり)

βIII(Beta hi-fiフォーマットをベースにした高画質モード・ノーマル音声機もあり)


EDベータフォーマット - ソニー

ED-βII(EDベータ対応機種のみで録画再生可能)

ED-βIII(EDベータ対応機種のみで録画再生可能)

記録モード一覧ノーマルBeta hi-fiHi-BandSHB Hi-BandED Beta
FM輝度信号シンクチップ3.6MHz4.0MHz4.4MHz4.8MHz6.8MHz
FM輝度信号白ピーク4.8MHz5.2MHz5.6MHz6.0MHz9.3MHz
周波数偏移1.2MHz2.5MHz
水平解像度240本270本280本500本
録画モードβI(一部機種)
/ βII / βIIIβII / βIIIβIs(一部機種)
/ βII / βIIIβIsβII / βIII
テープ
酸化鉄メタル


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