ベルリンの壁崩壊
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本来この政令は、この記者会見よりも後のタイミングで閣議決定を行い、11月10日に発表し、直ちに発効することになっており、シャボフスキーに渡された政令案の文書が10日に報道発表するための文書であったが[78]、細かい事情を把握していなかったシャボフスキーは、すでに閣議決定されており、また公表もされているものと勘違いしていた[注 18]。ちなみに実際に記者会見の後、政令は正式に閣議決定され、東ドイツ国営通信が政府報道官の発表として伝えている[79]

口頭で政令の内容を伝えた後、エールマンから発効のタイミングについての問いがあった。本来の発行日は翌10日であったが、シャボフスキーの手元の文書には、発効期日は書かれていなかった。

エールマン[注 19]

それはいつ発効するのですか。


シャボフスキー

私の認識では『直ちに、遅滞なく』ということです(Das tritt nach meiner Kenntnis… ist das sofort, unverzuglich.)[70][80][注 20][注 21]

映像外部リンク
「直ちに、遅滞なく、です」と答えるシャボフスキー
1989年11月9日
"Sofort, unverzuglich" - ARDターゲスシャウ(tagesschau.de)
問題の発言はリンク先の動画で55秒頃から。


この直後にアメリカNBC放送のトム・ブロコウ記者から「ベルリンの壁はどうなるのか?」「西ベルリンに東ドイツ市民は行けるのか?」との質問があった。シャボフスキーが文書を見ると、「西ドイツ及び西ベルリンへの越境は許可される」と書かれてあったため、「常時出国は東西ベルリン間を含む東西ドイツ間のどの国境検問所からでも行える」と答えて、質問に肯定する素振りを見せた[81][68]

これでシャボフスキーは「東ドイツ国民はベルリンの壁を含めて、すべての国境通過点から出国が認められる」と、勘違いで発表してしまったのである。「東ドイツの全ての国民が東ドイツの国境検問所を使って国を離れることを可能にする」「外国への個人旅行は現在のビザ要件を提示したり、旅行の必要性や家族関係を証明したりしなくても申請できます。旅行許可は短期間で発効されます」「遅滞なく発給するように指示されます」と述べたのであった。
マスメディアの報道

東ドイツでは言論統制で出版物や新聞・雑誌の発行及び西側からの持ち込みも禁止されていたが、唯一電波だけは防止することができなかった。東ドイツ領内の中心に位置するベルリンの西側から電波を発信していて東ベルリン120万人が西ドイツ側のテレビ放送局ドイツ公共放送連盟(ARD)と第2ドイツテレビ(ZDF)を視聴できた。この他に西ベルリンを含む東西ドイツ国境沿いで8カ所のテレビ塔を立てて東ドイツ国内に自国のテレビ番組が見られるように電波を飛ばしていて[注 22]、南東部のライプツィヒやドレスデン一帯には地上波は届かなかったが(その代わりパラボラアンテナで衛星放送が受信できた)、およそ東ドイツの7割近くが受信可能であった[83]

この11月9日夜の記者会見の模様は、東ドイツ国営テレビニュース番組において生放送されていた。東ベルリンも西ベルリンのテレビ電波が受信できるので東西市民は互いのテレビ番組を視聴することが可能であった。

またラジオも同様であった。西ベルリン市内に中継局が存在する西ドイツのラジオ局の他、夜になると電離層反射で遠くイギリスやスウェーデンの放送も受信することができた。短波放送に至ってはアメリカ合衆国日本のものさえ受信可能のケースがあった。

そしてこれを見ていた東西両ベルリン市民は戸惑い半信半疑となった。この発言が出た時、時刻は午後7時を少し回っていたが、それから4分後にはロイター通信ドイツ通信(DPA)・AP通信の各通信社は速報を出した。混乱してロイター通信とドイツ通信は『旅行に関する新しい取り決め』があった事実に重きを置いた打電であったが、AP通信は「境界が開かれる」と打電している[84]。7時17分にZDFがニュース番組「ホイテ(今日)」で放送し、7時30分からの東ドイツ国営テレビのニュース番組「アクトゥエレ・カメラ(今日の映像)」では2番目にこのニュースを伝えた。ただどちらも「旅行に関して新しい規則ができた」と報じただけであった。

しかし7時41分にドイツ通信(DPA)は「西ドイツと西ベルリンへの境界が開いた」と打電し、そして午後8時に西ドイツのARDがニュース番組「ターゲスシャウ」で冒頭にアンカーマンのハンス=ヨアヒム・フリードリッヒが「今日11月9日が歴史的な日となりました。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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