ベルギー
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この投票ではかろうじて君主制維持が過半数を占めたものの、とくに南部で批判票が強く、これを受けてレオポルド3世は退位し、ボードゥアン1世が即位した[47]。1950年代には経済の復興が進む一方、1951年の欧州石炭鉄鋼共同体への参加以来、首相のポール=アンリ・スパークを中心に積極的にヨーロッパ統合の動きを推進し、のちにスパークは欧州連合の父の1人に数えられるようになった[48]。1958年に成立したガストン・エイスケンス政権は学校教育問題の解決などで大きな成果を上げたが[49]、コンゴ植民地の独立時の対応を誤り、コンゴ動乱を招くこととなった。

1960年代に入ると、ワロン地域の経済低迷とフランデレン地域の経済成長によって両地域の経済的地位が逆転し、これに伴って言語問題が激化していった[50]。これを解決するためにベルギー政府は分権化を進め、1963年には言語境界線が確定され、1970年には3つの言語共同体と3つの地域が成立し、1980年には言語共同体とブリュッセルを除く2つの地域に政府が設置され、1988年にはブリュッセル地域政府を設置した上で1993年には正式に連邦国家へと移行した[51]

現在、首都ブリュッセル欧州委員会などの欧州連合の主要な機関が置かれており、欧州連合の「首都」にあたる性格を帯びている。ブリュッセルは2014年、ビジネス、人材、文化、政治、識字率などを総合評価した世界都市ランキングにおいて、特に「政治的関与」が高く評価され、世界11位の都市と評価された[52]
政治連邦議会議事堂詳細は「ベルギーの政治(英語版)」を参照

ベルギーは国民的立憲君主制を採用している。国家元首である国王は、立法権を連邦議会とともに行使し、行政執行権を憲法に基づき行使する。1990年妊娠中絶が合法化される際に、当時の国王ボードゥアン1世は自身の信念に基づき中絶法案への署名を拒否したが、一時的に国王を「統治不能」状態として内閣が代行することにより、立憲君主制の原則を守ったという出来事があった。

連邦議会両院制である。上院である元老院は、地域議会および言語共同体議会を通じた間接選挙で選出される50議席と、間接選挙議員によって指名される10議席、国王の子女に割り当てられる3議席からなる。下院である代議院の議席数は150で、比例代表選挙により選出する。いずれも任期は4年で、同日に投票が行われる。

連邦政府の長である首相は、議会の総選挙後に国王から指名された人物が組閣責任者となり、最大15名からなる内閣を組閣する(議院内閣制)。組閣責任者は必ずしも第1党から選任されるとは限らない。もしも、このあとに下院の承認を得られない場合は、国王に対して辞表を提出することになる。

1995年3月23日にホロコースト否認を認めないことを公式見解とし、非合法化する法律を制定している。しかし国内にはVrij Historisch Onderzoek(ドイツ語版) のような否認主義組織も存在する。
政治空白

前回の総選挙は2010年6月に行われ、12の政党が議席を獲得した。しかし北部のオランダ語圏と南部のフランス語圏の対立を背景とした連立交渉は難航を極め、正式な政権が541日も存在しないという事態となった[53]。これは正式な政権が存在しない世界最長記録である[54]。この政治空白の間の首相職は、総選挙で敗退したキリスト教民主フランデレン党イヴ・ルテルムが引き続き暫定的に務めた。

2011年11月26日、新政権樹立の連立協議で、主要6政党が2012年予算案で合意に達した。当時の国王アルベール2世は、ワロン系社会党エリオ・ディルポ党首に組閣を指示[55]。12月5日、ディ・ルポを新首相に任命し[56][57]、政権は12月6日に発足した。

政治的な空白は2018年以降も発生。2018年12月に移民政策をめぐり与党内が対立、連立政権が崩壊すると2019年5月の下院選挙を経ても、どの党も主導的な立場を取ることができず暫定政権が続いた。2020年3月、新型コロナウイルス感染拡大の緊急対策が求められる状況下で、ようやく小政党出身のソフィー・ウィルメス首相が率いる内閣を各党が容認。ただし、ウイルス対策以外の政策決定はほとんど認められず暫定政権的な色合いが強く[58]、10月になってようやく7政党によるアレクサンダー・デ・クローを首相とする連立政権が発足した[59]
主な政党詳細は「ベルギーの政党」を参照

自由党、社会党、キリスト教民主党、環境政党がオランダ語系(フラマン系)とフランス語系(ワロン系)に分離するなど、地域で政党が分かれているのがベルギーの政党の特徴である。
オランダ語系政党


キリスト教民主フラームスフラマン系キリスト教民主党

フラームス自由民主フラマン系自由党

フラームス・ベランフ(移民排斥を掲げる極右政党)

社会党・別フラマン系社会党

新フラームス同盟

リスト・デデッケル

フルン(フラマン系環境政党)

フランス語系政党


改革運動ワロン系自由党

社会党ワロン系社会党

民主人道主義中道派ワロン系キリスト教民主党

エコロ(ワロン系環境政党)

国民戦線(移民排斥を掲げる極右政党)

国際関係詳細は「ベルギーの国際関係(英語版)」を参照「日本とベルギーの関係」も参照
国家安全保障ベルギー陸上構成部隊詳細は「ベルギーの軍事」を参照

1949年以降、ベルギーは中立主義を放棄し、北大西洋条約機構に加盟、集団安全保障体制を構築している。軍は2002年に単一の統合軍に再編成されており、その下に陸上部隊COMOPSLAND(ベルギー陸上構成部隊)・海上部隊COMOPSNAV(ベルギー海洋構成部隊)・航空部隊COMOPSAIR(ベルギー航空構成部隊)・医療部隊COMOPSMED(ベルギー医療構成部隊)の4部隊が編成されている。冷戦期までは徴兵制が敷かれていたが廃止された。現在の兵力は現役約4万人、予備役約10万人。

また、ベルギーに駐留しているアメリカ軍アメリカ合衆国連邦政府)とニュークリア・シェアリングをしており、独自の核戦力は保持していないが核抑止力を持っている。
地理詳細は「ベルギーの地理」を参照平野部の干拓地

一般的に北部のフランデレン地域は平野が広がっているのに対し、南部のワロン地域はアルデンヌ高地を中心に丘陵地帯が多い。北部は豊かな土壌が広がり、野菜や果実などの近郊農業や、農耕飼料を必要とする養豚・養鶏業等が営まれているのに対し、南部はアルデンヌ高地を中心に冷涼な気候で、酸性土壌も多く、肉牛、乳牛などの放牧による畜産業や、ビート栽培などが主流である。


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