ベネディクト16世
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遺体は2023年1月2日にサン・ピエトロ大聖堂に安置され[58]、葬儀は1月5日にサン・ピエトロ広場で執り行われ、遺体はサン・ピエトロ大聖堂の地下墓地に埋葬された[52][59]
批判
性的虐待事件への対応「カトリック教会の性的虐待事件」も参照

2009年になってアイルランドドイツ、アメリカ合衆国におけるカトリック聖職者による児童性的虐待事件が報道されるようになった。このスキャンダルに関してカトリック教会およびベネディクト16世への批判が高まり教会への不信は戦後最悪ともされる状態にまで陥り、教皇の辞任を求めるデモも発生していた。

アイルランドにおける事例については2009年末にアイルランド政府が公表した報告書が騒動のきっかけとなった。この中では1930年から80年代にかけて、教会の運営する施設において数百人の聖職者が少なくとも2500人の少年少女に性的虐待を加えたと述べられており、さらに組織的な隠ぺいがあったと結論している。ベネディクト16世は事件のもみ消しを図ったショーン・ブレイディー枢機卿の処罰を行っていないことが批判された。

300人以上もの被害者が報告されているドイツにおける事件では、教皇が大司教であった1980年の南部ミュンヘン教区においても被害者が存在すること、教皇の実兄が指揮者を務めたレーゲンスブルク聖歌隊においても虐待があったこと、さらに性的虐待に関与した神父の教会施設受け入れを認めたと報道されている。

アメリカ合衆国における事例では、ある神父が1950年から1974年にかけて聴覚障害を持つ児童200人に対して性的虐待を行ったとの報告が1996年に教理省に届けられたにもかかわらず、当時長官であった現教皇はこれに何の回答も行わなかったと報道されている[60]

これらのカトリック教会への批判に対して、教皇は3月の日曜礼拝において「つまらないゴシップにおびえることはない」と述べ隠蔽への関与を否定した。教皇に近い司教らは、報告されている聖職者による性的虐待は「一部の者の過ち」に過ぎず、「性的虐待はカトリックだけの問題ではない」「何者かの陰謀だ」などと反論している[61]。ベネディクト16世の説教師を務めるカプチン会のRaniero Cantalamessaは、“教会への批判は反ユダヤ主義に基づくユダヤ人迫害に似ている”と述べ、不適切な発言であると再度批判を受けた[62]

2013年2月11日、ベネディクト16世の退位の発表に対し、これら性的虐待被害者の団体(英語版)は、「性的虐待をするという恐怖の状態を終わらせるのにほとんど何も手を尽くさなかった」として退位を歓迎している[63]
人物・逸話

カトリック教会公用語の
ラテン語、また常用語のイタリア語はもちろんのこと、母語ドイツ語の他にも、フランス語英語スペイン語での会話ができ、片言ながらポルトガル語の素養もある。また古代ギリシア語古典ヘブライ語の文献を読解することもでき、フランス語は第一外国語だったこともあり特に堪能で、1992年以来フランス倫理学アカデミーの会員でもある。

趣味はピアノで、特にドイツ語圏の作曲家であるモーツァルトベートーヴェンの曲を好んで演奏する。またサッカー好きで、ドイツのFC バイエルン・ミュンヘンのファンクラブ会員であることも知られている。

映画『スター・ウォーズシリーズ』に登場する悪役でイアン・マクダーミドが演じる銀河帝国皇帝パルパティーンと外見がそっくりなことが、2005年にニューヨークの週刊紙『The Village Voice』で取り上げられた。ネット上には多くの「指先からフォースライトニングを出すベネディクト16世」「ライトセーバーを持つベネディクト16世」などパロディコラージュが作られた。

異例の自発的理由による退位を表明した日の夜、落雷がサンピエトロ大聖堂のバシリカの尖塔を直撃した[64][65]

2020年9月4日、生後93年4か月16日になり既存のレオ13世を超えてローマ教皇経験者史上最高齢となった。伝説上の存在としては103?104歳まで生きたとされるアガトがいるが、西ローマの帝政廃止前後の人物で生年がはっきりしない。そのため生年月日が明白な中世以降の教皇に限れば、この日以降歴代最高齢の教皇経験者である。

著書

日本語訳著作

『信仰と未来』(田淵文男 訳、あかし書房)

『まことの兄弟とは ― キリスト教的兄弟観』(吉田聖 訳、エンデルレ書店)

『キリスト教入門』(小林珍雄 訳、エンデルレ書店、
ISBN 4-7544-0013-5

『典礼の精神』(濱田了 訳、サンパウロ、ISBN 4-8056-6121-6

『新ローマ教皇 わが信仰の歩み』(里野泰昭 訳、春秋社、ISBN 4-393-33246-6)…半生が綴られた自伝。

『ベネディクト16世  黙想と祈りによる十字架の道行き』(女子パウロ会、ISBN 4-7896-0605-8

『教皇ベネディクト16世  回勅  神は愛』(カトリック中央協議会司教協議会秘書室研究企画 訳、カトリック中央協議会ISBN 4-87750-125-8

『信仰について ― ラッツィンガー枢機卿との対話』(V. メッソーリ 著、吉向キエ 訳、ドン・ボスコ社、ISBN 4-88626-095-0)…枢機卿時代のインタビュー。

『ポスト世俗化時代の哲学と宗教』(J. ハーバーマスとの共著、三島憲一 訳、岩波書店、ISBN 978-4-00-024758-0

『教皇ベネディクト16世 霊的講話集2005』(カトリック中央協議会司教協議会秘書室研究企画 編訳、カトリック中央協議会、ISBN 978-4-87750-131-0

『教皇ベネディクト16世 霊的講話集2006』(カトリック中央協議会司教協議会秘書室研究企画 編訳、カトリック中央協議会、ISBN 978-4-87750-132-7

『教皇ベネディクト16世 霊的講話集2007』(カトリック中央協議会司教協議会秘書室研究企画 編訳、カトリック中央協議会、ISBN 978-4-87750-140-2

『使徒的勧告  愛の秘跡  ?教皇ベネディクト16世?』(カトリック中央協議会司教協議会秘書室研究企画 訳、カトリック中央協議会、ISBN 978-4-87750-138-9

『回勅  希望による救い』(カトリック中央協議会司教協議会秘書室研究企画 訳、カトリック中央協議会、ISBN 978-4-87750-139-6

『ナザレのイエス』シリーズ(里野泰昭訳、春秋社)- 教皇在任中に教皇の職務とは関係なく執筆・出版されたシリーズ。「教皇ベネディクト16世ヨゼフ・ラツィンガー」名義。日本語訳のうち後期2冊は退位後の発刊のため、名誉教皇名義になっている。

『ナザレのイエス』(ISBN 978-4-39333-277-1

『ナザレのイエスII:十字架と復活』(ISBN 978-4-39333-316-7

『ナザレのイエス プロローグ:降誕』(ISBN 978-4-39333-333-4


『使徒  教会の起源』(カトリック中央協議会、サンパウロ、ISBN 978-4-87750-136-5

『教父』(カトリック中央協議会、サンパウロ、ISBN 978-4-87750-143-3

『聖パウロ』(カトリック中央協議会、サンパウロ、ISBN 978-4-87750-144-0

脚注[脚注の使い方]^ “Benedict XVI will be 'Pope emeritus'”. The Vatican Today. 2013年3月1日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2013年2月28日閲覧。 “Benedict XVI will be "Pontiff emeritus" or "Pope emeritus", as Fr. Federico Lombardi, S.J., director of the Holy See Press Office, reported in a press conference on the final days of the current pontificate. He will keep the name of "His Holiness, Benedict XVI" and will dress in a simple white cassock without the mozzetta (elbow-length cape).”
^ Petin (2013年2月26日). “ ⇒Benedict's New Name: Pope Emeritus, His Holiness Benedict XVI, Roman Pontiff Emeritus”. 2018年6月23日閲覧。
^ Walsh, Mary Ann (2005). From Pope John Paul II to Benedict XVI: an inside look at the end of an era, the beginning of a new one, and the future of the church. Rowman & Littlefield. p. 135. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 1-58051-202-X 


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