ベジタリアン
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

オウム真理教 - 動物に留まらず、イースト菌ヨーグルト菌までも禁じる徹底した菜食主義をとっていた[33][34]。「オウム食」も参照。

倫理「動物福祉」も参照

一般的に、倫理による菜食主義は、動物を殺すこと自体に反対する場合と畜産動物の取り扱いに問題があるとして反対する場合に分かれる。

ピーター・シンガーのように、倫理学説から倫理的菜食主義をとるものもいる。1975年に、プリンストン大学教授だったシンガーは『動物の解放』[35]において、畜産は動物虐待が行われている数が多いと主張した。工業化されすぎた畜産のシステムは、省スペースで高効率を求めるため、過密状態での飼育、病気の放置、豚の尾や鶏のの切断が行われる。

シンガーの『実践の倫理』や『私たちはどう生きるべきか』によれば、動物に知能がなければ殺していいという考えでは、知能の低い人間を殺すことを正当化してしまうと主張し、こうした20世紀後半の功利主義の立場からは痛覚を持つ脊椎動物には苦痛を与えず、痛覚のない貝類は許容している。『実践の倫理』では工場畜産を認めないとしても必ずしも菜食主義にはならず、放牧の動物であれば苦痛を与えるような生育環境ではないため、放牧は許容する場合がある。こうした議論も論じられている。

一方で哲学者のMcMahanのような人物は、精神障害者は健常者と同等の人権は持たないと述べた[36]。しかし昔は精神障害者は残虐に取り扱われてきたが、人権の議論と法律の整備とともに、ほとんどの人は精神障害者も生きる権利と治療を受ける権利があると考えている。道徳哲学が日進月歩で進む中で、精神障害者以上の知能を持つ動物の生きる権利を奪うことは、道理に反し、欲と慣れによる一方的かつ差別的な振る舞いだと考えている。
ビーガンとベジタリアンの違い

主な違いは、ミルク、チーズ、バター、ヨーグルトなどの乳製品と卵の両方を避けることである。倫理的なビーガンは、「その生産が動物の苦しみや早死にを引き起こす」と考え、乳製品や卵を一切食べない。乳牛から牛乳を生産するためには、子牛は出産直後に母親から離されて屠殺されるか代用乳で育てられる。不要な雄の子牛は、出生時に屠殺されるか種牛とされる。乳牛は牛乳を出し続けるためにほぼ一生を通じて人工授精で妊娠と出産を繰り返す。約5年後、牛乳の生産量が落ちると、牛肉とその皮のために屠殺される。乳牛の自然な平均寿命は約20年。卵については、バタリケージまたはフリーレンジでの卵の生産のために、不要な雄の雛は殺される。

その他、「畜産家が愛情込めて育てたのに、最後に殺すのは動物への裏切り」と批判する者もいる[37]
環境保護・人道主義詳細は「エンヴァイロンメンタル・ベジタリアニズム」を参照

菜食主義者には環境問題を根拠とする者もいる。
効率性

畜産物1kgを生産するために必要な穀物等の量(試算)[38]牛肉豚肉鶏肉鶏卵
11 kg7 kg4 kg3 kg

1970年代、フランシス・ムア・ラッペは、畜産はタンパク質を得る目的としては効率が悪いと述べた[39]。植物から畜産物へのタンパク質変換効率は鶏肉が40%、豚肉が10%、牛肉が5%というデータがある。[40]

穀物や牧草を家畜飼料にして得られる食肉より、同じ土地面積に人間が直接食べる農作物を作付けする方がより多くの人の食料を生産できる。食用作物を全て人間が直接食べることで、人口扶養力が世界平均haあたり6人(バイオ燃料などその他消費を飼料の4分の1含む)から10.1人に上昇するという試算がある[40]。詳細は仮想水(別名:バーチャルウォーター)を参照。

しかし、家畜飼料は人間の食用種とは品種が異なるため、食用農作物を育てることが難しい土地でも飼料用農作物を作付けすることができる場合がある[41]。なお、通常の肉と培養肉を比較すると、培養肉の方がエネルギー使用量を7%以上、水使用量を8割以上、土地を99%、二酸化炭素排出量を8割以上削減できる[42]
食料問題

日本での畜産も、資源の浪費や環境危機といった側面を持っている。輸入飼料を必要とする畜産物の消費量が増えたことは食料自給率が低下した一因である[38]。飼料自給率は25%程度で推移し(H28は27%)[43]、畜産物の自給率は15%程度で推移している(H28は16%)[44]

日本での食料自給率の低下は、海外で枯渇が懸念される地下水を使うことにつながり[45]フードマイレージ(食料の輸送距離)を増加させ輸送のためのエネルギー消費を増やしている。しかし、日本での農産業も資源の浪費や環境危機といった側面を持っている。大量の肥料を必要とする農産物の消費量が増えたことは食料自給率の低下の一因である[46]

肉類の消費量増加の意味は、飼料用の穀物消費量が増える→国際市場における穀物の価格が上昇→貧しい人々が必要とする穀物を買えなくなる、ことである。

十分に栄養の取れない飢餓人口は約8億人いる(2014年)[47]。1997年から2003年の世界の食用作物41品目の収穫物のうち36%は家畜飼料とされた。[40]

しかし、地域的な貧困や食料分配の不公平も解決しなければ、菜食社会でも飢餓は発生し得る。このため、フランシス・ムア・ラッペはのちに、『食糧第一-食糧危機神話の虚構性を衝く』の運動を起こした[48][49]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:168 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef