『古エッダ』の『巫女の予言』において、最初の人間アスクとエムブラを創造した際には、ヘーニルとローズルはオーディンに力を貸した(オーディンは息を与え、ヘーニルは心を与え、ローズルは生命の暖かさと良い姿を与えたとされている)[5]。
しかしこの人間創造のエピソードについては、『スノッリのエッダ』第一部『ギュルヴィたぶらかし』ではオーディンの兄弟(ヴィリとヴェー)がヘーニルとローズルの代わりに登場している[6]。
スノッリは『巫女の予言』の内容を知っていたはずだが、「ヘーニル」とは「ヴィリ」のもう1つの名前であった可能性がある[注釈 1]。
また、『巫女の予言』によれば、ヘーニルはラグナロクを生き残る数少ない神の一人とされている[7](神々と巨人が戦う間に彼がどのようにしていたかは不明である)。
ヘーニルは、『スノッリのエッダ』第二部『詩語法』での若さの女神イズンが誘拐されるエピソード[8]、および、『古エッダ』の『レギンの歌』[9](『詩語法』でもこの物語が語られる[10])にも脇役として登場している。また『詩語法』の冒頭にも、エーギルの開いた酒宴に集まったアース神族の一人として登場する[8]。 木星の衛星の1つであるカリストの表面にあるHoenirクレーターの名は、彼の名前からとられている。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 『北欧のロマン ゲルマン神話』(ドナルド・A・マッケンジー著、東浦義雄、竹村恵都子訳、大修館書店、1997年、ISBN 978-4-469-24419-9)においては、ヘーニルの別名が「ヴェー」とされている。
出典^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』などにみられる表記。
^ 『北欧神話と伝説』(ヴィルヘルム・グレンベック著、山室静訳、新潮社、1971年、ISBN 978-4-10-502501-4)などにみられる表記。
^ a b 『エッダ 古代北欧歌謡集』19頁。
^ 『ヘイムスクリングラ - 北欧王朝史 - (一)』37-38頁。
^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』10頁。
^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』229、231ページ。
^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』15頁。
^ a b 『「詩語法」訳注』1頁。
^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』133頁。
^ 『「詩語法」訳注』45頁。
参考文献
スノッリ・ストゥルルソン『ヘイムスクリングラ - 北欧王朝史 -(一)』谷口幸男訳、プレスポート・北欧文化通信社、2008年、ISBN 978-4-938409-02-9。
谷口幸男「スノリ『エッダ』「詩語法」訳注」『広島大学文学部紀要』第43巻No.特輯号3、1983年。
V.G.ネッケル他編『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、1973年、ISBN 978-4-10-313701-6。
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