ヘリコプター
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一般的なシングルローター形態のヘリコプター(AS350

ヘリコプター(英語: helicopter、ドイツ語: Hubschrauber)は、回転翼機に分類される航空機の一種。漢字表記は螺旋翼機(らせんよくき)[1]

垂直方向のに配置したローター回転翼)をエンジンの力で回転させて揚力を得て、出力やローターの描く面(回転面・円盤面)を変化させることで進行方向への推進力を得たり、ホバリング(空中での停止)を含めて高度を調整したりできる。飛行にはローターで動かす大気の存在が前提となる。

世界初の安定して飛行できて実用に耐えるヘリコプターは、ナチス・ドイツ時代に開発され1936年6月26日に初飛行したフォッケウルフ Fw 61であるとされる[2]#歴史を参照)。

発着に滑走路が不要なため、現代においては民生と軍事攻撃ヘリコプターなど)を含む幅広い用途で使われている(#用途を参照)。無人ヘリコプターも実用化されているが、安定した飛行がしやすいようにローターを多数(4つや8つなど)備えた無人航空機はドローンに分類されることが多い[3]
名称

ヘリコプターという名称はギリシャ語のヘリックス (?λιξ helix・螺旋) とプテロン (πτερ?ν pteron・) を語源とする。このヘリックスに由来する接頭辞エリコ (フランス語: helico-・螺旋の)とプテロンを組み合わせて作られた造語・エリコプテール (フランス語: helicoptere) が1861年ギュスターヴ・ポントン・ダメクールによって命名された。この単語が英語ではヘリコプター (helicopter) という形になり、日本語のヘリコプターという表記も英語の発音に由来する[4]

日本語では英語を直接音訳して「ヘリコプター」と呼称される。漢字表記は螺旋翼機[1]。なお、丸岡桂は明治38年に自身の発明したヘリコプターを「昇空器」と名付けている。現代中国語や朝鮮語文化語北朝鮮)では直昇機(直升機、ちょくしょうき、垂直に昇るという意味)と呼ぶ。

本来の語源からは不自然な区切り方ではあるが、日本語および英語では「ヘリ(heli)」あるいは「コプター(copter)」と略される場合もある。そのほか、英語ではローターが大気を切る(chop)ことから「チョッパー(chopper)」とも呼ばれる。軍用ヘリが投入された朝鮮戦争時に俗語として発生し、ベトナム戦争で普及した[5]
概説

ヘリコプターは、機体の前後方向に垂直な(つまり通常は上下方向の)軸に(複数枚から成る)ローターを配置し、それをエンジンの力で回転させ、ローターの迎角(ピッチ角)と回転面の傾きを調整することによって、揚力を調整したりその運動方向を変えたりする航空機である。主たるローターの数が1つの物(シングルローター)の他に、2つの物(#ツインローターを参照)、3つ以上の物(#マルチローター式を参照)がある。

国土交通省航空局の『耐空性審査要領』[6] 第1部「定義」によれば、ヘリコプターは「重要な揚力を1個以上の回転翼から得る回転翼航空機の1つである」と定義されている。

ヘリコプターには空中のある位置に留まるホバリング(空中停止)や、ホバリング状態から垂直上昇や垂直降下、前方への水平飛行へ移ったり、機体の方向を保ったまま真横や後方や斜め方向に進むといった機動をできる。また比較的狭い場所でも着陸できる。

これらの特長から、きわめて広い用途で利用されている。たとえば山岳遭難海洋遭難での救助活動にも活用され(救助ヘリ)、また災害発生時には(飛行場が無い地域でも)被災者の救助や安全な場所への移送、被災地への救援物資の運搬 等々に用いられ、他にも、離島などに住む患者の病院への移送や救急搬送ドクターヘリ)、報道機関による空中からの取材(報道ヘリ)、(政府による)要人の移動、都市上空観光(遊覧飛行)、また(米国などでは)企業のエグゼクティブの効率の良い移動手段、森林火災などの空中消火逃亡する犯人警察による追跡等々にも利用されている。詳しくは#用途を参照。

軍隊でも、攻撃偵察ヘリボーンを含む人員や兵器・物資の輸送、捜索救難対潜哨戒など多用される。長大な飛行甲板がない軍艦でも艦載機として運用でき、多数のヘリコプターを搭載したヘリ空母もある。

なお、後述するローターヘッドの形式によっては、宙返りなどの曲技飛行ができる機体もある(#曲技飛行を参照)。

ただし、ヘリコプターは固定翼機に比べると、一般に速度が遅く、燃費も悪く、航続距離も短い[注 1]。一方で、固定翼機のように滑走路を必要とせず、ヘリパッドさえあれば離着陸が可能なので、飛行場と目的地の間の移動時間を含めれば、固定翼機よりヘリコプターの方が迅速に移動できる場合も多い。

また、北米ではヘリコプターの騒音が社会問題になっている。

なおヘリコプターには航空機メーカーが製造・販売する完成品だけでなく、GEN H-4のようなホームビルト機も存在する。
模型、無人機

ラジコンのヘリコプターも、電子ジャイロの小型化・高性能化により複雑な姿勢制御が容易となり、超小型の、に載せられるような機体も登場し狭い空間でも飛ばせるようになったので人気も高い。また農薬散布用の小型の遠隔操縦ヘリも長年に渡り多数の農家で実用的に用いられており、さらに自動制御のロボットヘリも登場した。観測用の遠隔操縦小型ヘリもあり、火山火口の観測など、危険で人を近付けるわけにはいかない場所の画像・映像や諸データの収集に役立ってきた歴史がある[注 2]
歴史ダ・ヴィンチのヘリコプター図案ヘリコプター 1922世界初の実用ヘリコプターであるフォッケウルフ Fw61冷戦期に開発されたMi-2火星で飛行したインジェニュイティ

ヘリコプターの研究は遠く紀元前中国竹トンボに始まって、ルネサンスヨーロッパにおけるレオナルド・ダ・ヴィンチスケッチ、さらには18世紀 - 19世紀ジョージ・ケイリーヤーコプ・デーゲンらの模型を経て、何人かの実験家による蒸気機関を積んだ試作機製作と進められた。実際にパイロットを乗せ、ローターを使って地上を離れたのは20世紀になってからの事である。トーマス・エジソン燃焼反動を利用したヘリコプターを研究したが爆発事故が発生し、幸い負傷者は出なかったが研究を打ち切っている。


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