ヘリコプターには空中のある位置に留まるホバリング(空中停止)や、ホバリング状態から垂直上昇や垂直降下、前方への水平飛行へ移ったり、機体の方向を保ったまま真横や後方や斜め方向に進むといった機動をできる。また比較的狭い場所でも離・着陸できる。
これらの特長から、きわめて広い用途で利用されている。たとえば山岳遭難や海洋遭難での救助活動にも活用され(救助ヘリ)、また災害発生時には(飛行場が無い地域でも)被災者の救助や安全な場所への移送、被災地への救援物資の運搬 等々に用いられ、他にも、離島などに住む患者の病院への移送や救急搬送(ドクターヘリ)、報道機関による空中からの取材(報道ヘリ)、(政府による)要人の移動、都市上空観光(遊覧飛行)、また(米国などでは)企業のエグゼクティブの効率の良い移動手段、森林火災などの空中消火、逃亡する犯人の警察による追跡等々にも利用されている。詳しくは#用途を参照。
軍隊でも、攻撃や偵察、ヘリボーンを含む人員や兵器・物資の輸送、捜索救難、対潜哨戒など多用される。長大な飛行甲板がない軍艦でも艦載機として運用でき、多数のヘリコプターを搭載したヘリ空母もある。
なお、後述するローターヘッドの形式によっては、宙返りなどの曲技飛行ができる機体もある(#曲技飛行を参照)。
ただし、ヘリコプターは固定翼機に比べると、一般に速度が遅く、燃費も悪く、航続距離も短い[注 1]。一方で、固定翼機のように滑走路を必要とせず、ヘリパッドさえあれば離着陸が可能なので、飛行場と目的地の間の移動時間を含めれば、固定翼機よりヘリコプターの方が迅速に移動できる場合も多い。
また、北米ではヘリコプターの騒音が社会問題になっている。
なおヘリコプターには航空機メーカーが製造・販売する完成品だけでなく、GEN H-4のようなホームビルト機も存在する。
模型、無人機
ラジコンのヘリコプターも、電子ジャイロの小型化・高性能化により複雑な姿勢制御が容易となり、超小型の、掌に載せられるような機体も登場し狭い空間でも飛ばせるようになったので人気も高い。また農薬散布用の小型の遠隔操縦ヘリも長年に渡り多数の農家で実用的に用いられており、さらに自動制御のロボットヘリも登場した。観測用の遠隔操縦小型ヘリもあり、火山の火口の観測など、危険で人を近付けるわけにはいかない場所の画像・映像や諸データの収集に役立ってきた歴史がある[注 2]。
歴史ダ・ヴィンチのヘリコプター図案ヘリコプター 1922世界初の実用ヘリコプターであるフォッケウルフ Fw61冷戦期に開発されたMi-2火星で飛行したインジェニュイティ
ヘリコプターの研究は遠く紀元前の中国の竹トンボに始まって、ルネサンス期ヨーロッパにおけるレオナルド・ダ・ヴィンチのスケッチ、さらには18世紀 - 19世紀のジョージ・ケイリーやヤーコプ・デーゲンらの模型を経て、何人かの実験家による蒸気機関を積んだ試作機製作と進められた。実際にパイロットを乗せ、ローターを使って地上を離れたのは20世紀になってからの事である。トーマス・エジソンも燃焼の反動を利用したヘリコプターを研究したが爆発事故が発生し、幸い負傷者は出なかったが研究を打ち切っている。
固定翼機が登場した後、ヘリコプターが実用化されるまでの間にオートジャイロが現れ、回転翼の挙動に関する空気力学や機械工学的な知見が得られた。
1901年にドイツのヘルマン・ガンズヴィントは現在のヘリコプターに相当する動力で回転する回転翼を装備した航空機に2名を乗せて、15秒間の浮上を実演した[7]
1907年にフランスのモーリス・レジェ、ルイ・ブレゲー、ポール・コルニュらが相次いで多少のホバリングに成功した。オーストリア=ハンガリー帝国にて、1917年にPKZ-1(英語版)という4つのローターを持ったヘリコプターが、1918年にはPKZ-2(英語版)という同軸反転ローターのヘリコプターがセオドア・フォン・カルマンらによって開発され、それぞれがホバリングに成功した。