前進飛行中に旋回を行う場合、右旋回ならサイクリック(操縦桿)を右へ倒し、機体を「右バンク」させると同時に、右ペダルを踏み込んで機首方向を変えるという操作を行なう。この時、バンク角に見合った適切なペダル操作を行い、機体が横滑りしないように旋回操作を行う。これらは、固定翼機と同様である。また、深いバンク角での旋回を行うと、鉛直方向の揚力が水平飛行時よりも不足し、高度が低下するので、CPレバーを引き、揚力の不足分を補う操作を同時に行う必要がある。 水平飛行から降下へ移るのは、単に巡航高度
降下と着陸進入
水平飛行から降下への移行
操作手順としては、まずCPレバーを下げて、機体に所望の降下率を与える。この時右ラダーペダルを踏んで(メインローターが上方からみて反時計方向回転の場合)、機体を横滑りさせないように操作しながら、サイクリック・スティックで所望の降下速度に調整をする。
一般にシングルロータのヘリコプタでは、CPを下げると機首が下がり、上げると機首が上がる傾向がある。従って、降下飛行に移行する場合は、機首下げによって速度が増えやすいので速度保持に注意しなければならない。 着陸進入の形態には大別して次の3種類があり、着陸場所の地形や、離着陸機の混雑度を考慮してパイロットの判断で使い分けられる。 最終進入とは、着陸に対して最終的に着陸点に正対して直線進入降下飛行をいう。着陸スポットに確実に到達するために、自ら設定した経路、進入角を外れないように特に正確な操縦操作が要求される。 通常進入は、速度VY(最良上昇速度)、進入角6 - 7度で開始する。正確な進入角に乗って降下した場合、対地高度150フィート(約50メートル)から着陸に備えて減速操作を始める。 減速降下中の速度と高度の関係は、そのヘリコプタの飛行規程に示されているH-V線図(高度-速度包囲線図 Height-Velocity Envelope)を考慮した諸元に従って操縦しなければならない。 VY以下に減速すると、減速につれて沈下が大きくなるので、CPを操作して進入角を保つ。着陸スポット上にホバリングするため一定の減速率で減速を続けるが、一般的に速度計は極低速(約20ノット以下)では信頼性に欠けるため、地面の流れなど、目視感覚で速度処理をしながらスポット上に、対地高度1 - 3メートルでホバリングして着陸進入を終了する。 飛行場のような障害物のない広い場所で、後続の進入機に早く進入コースを開放するなど、必要に応じて使用される進入方法である。速度約100ノットで、通常進入よりやや浅い4 - 5度の進入角で最終進入経路に入る。 対地高度150フィート(約50m)まで速度約100ノットを維持し、そこから急減速動作に入り着陸スポット上にホバリングする進入方法で、急減速過程では、減速のための機首上げ操作により、機体が上昇しないようにCPレバーを大きく下げなければならない。そして、次にホバリングに移るためCPレバーを大きく上げる操作が必要になる。 このため、ラダーペダルの操作もCPレバーの操作に合わせて、減速過程では大きく右ラダーを踏み、ホバリングに移行する時には、大きく左ラダーを踏んで機首方位を保たなければならない。 このように高速進入から急減速停止するために、機体姿勢が大きく変化する事になり、サイクリック・ピッチ・スティック操作による機体の動き(上昇または沈下)を見て、進入角と機首方位を維持するため、CPとラダーペダルの操作の切り替えのタイミングと操舵量を瞬間的に判断して、素早い操作が求められる。 エンジン故障などによって動力を失ったヘリコプターでもすぐには墜落しないように、オートローテーション(自動回転)と呼ばれる飛行方法によって緩やかに降下できるよう工夫されている。それは、カエデの種子が風を受けてクルクルと回転しながら舞い降りるように、ゆっくりと降下する方法である。 オートローテーションは、エンジンとローターとを切り離して、機体の降下によって生まれる空気の流れからメインローターの回転力を得る飛行方法であり、推力を生むメインローターだけでなくテールローターや補機類も駆動される。基本的に、ヘリコプターはオートローテーションによって、全てのエンジンが停止しても安全に着陸できる。ただし全ての飛行状態においてオートローテーションが行えるのではなく、前進速度や高度が不足している場合は、オートローテーションに移行する前に墜落してしまう可能性がある。パイロットは常にこれを念頭に置いて機体を操縦する必要がある。オートローテーションはヘリコプターの操縦に必須の技術とされており、ヘリコプターパイロットは必ず訓練を受ける。技能試験では、規定高度から地上の規定の広さの中へ安全に模擬着陸できることが要求される。 オートローテーション自体は水平速度がゼロ(つまり垂直降下)であっても可能だが、軟着陸をするためには前進速度が必要である(前進するエネルギーをメインローターの回転エネルギーに変換し、降下率を下げて軟着陸する)。 なお、機体の重量が軽すぎると、オートローテーション時にコレクティブピッチ (CP) を最大(CP レバーを最も下)にしてもローターの回転数が上がらないので、ヘリコプターには最小飛行重量が定められている。 全エンジンが停止した場合にはローターの駆動力が失われるので、メインローターのブレードの迎角を通常飛行時のままにしているとメインローターの回転数が急速に減少してブレードが揚力を失ってしまう。回転数の低下を防ぐため直ちにCP(コレクティブピッチ)レバーを下げてブレードをフルダウンにすると共に、右ペダル(メインローターの回転方向が上方からみて反時計回りの場合)を踏み込んで機首方向を維持し、次いでサイクリック・ピッチ・スティック(操縦桿)を操作し、希望する前進速度を得る。なお、ローターの回転数はオートローテーション時の常用最大値と最小値の間になるように、CPレバーを操作(アップ:回転数減、ダウン:回転数増)し、限界値を超えないようにする。着地時はサイクリックレバーをわずかに引いて下降速度を低下させ(このときローター回転数が上昇するので、これもCPレバーで抑える)、接地直前にCPレバーを大きく引き上げて軟着陸する。 高度-速度包囲線図(height-velocity-envelope、H-V線図)は、通常飛行からオートローテーションに安全に移行できる高度と速度との関係を表した図である。ヘリコプターが通常飛行からオートローテーションに移行するにはある程度時間がかかり、その間に高度が低下する。したがって、速度が低い場合は高度の制限が、高度が低い場合は速度の制限が設けられる。この制限内ではオートローテーションに移行しようとしても、適度の沈下率と前進速度を保つことができず、地面に安全に着陸することができない。双発エンジンの機体では、片発故障時に対してだけH-V線図が規定されていて、制限範囲は小さくなる。
最終進入から着陸
通常進入、高速進入、低速急角度進入
通常着陸進入
高速進入着陸
オートローテーション各モードの空気の流れ
上: 通常飛行
下: オートローテーション
操縦操作
飛行回避領域/高度-速度包囲線図
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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