ヘリコプター
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以降は電動機により伝達機構を廃したタイプの研究開発にシフトしており、2011年にはドイツの企業が16枚の回転翼を持つ有人の電動機を試作[27]、ロシアの企業が1人乗りのクワッドローター[28] を開発している。
テールローターNH90のテールローターの中心部分テールブームが上方にある例。BK117-B2

ヘリコプターはローターが回転し、揚力を生み出すことで浮遊する。機体側がローターを回転させることの反作用として、ローターが機体を逆方向に回転させようとするモーメントが生じる。これは「反トルク」、カウンタートルク、トルク効果などと呼ばれる。

このとき「メインローターが1つのシングルローター機」では2つのメインローターを持つ機体のように互いのトルクを相殺する手法が使えないため、回転翼の駆動に伴う反作用〔反トルク〕を打ち消すため、尾部に備えたローター(テールローター)により横向きの推力を生み出し、その推力によるモーメントで打ち消す。機体の回転方向と推力の向きの関係により、プッシャータイプ(推進式、テールローターの推進力で尾部を押す)とトラクタータイプ(牽引式、テールローターの推進力で尾部を引っ張る)がある。

テールローターはメインローターと異なり、比較的低い位置にある場合、乗降時に人がテールローターに接触する危険がある。このためテールブーム(胴体からテールローターへつながる構造部分)の取付け位置を高くし、テールローターが低い位置にならないよう設計された機体もある。これらの機体は、テールローターに人が接触する危険性が低いので、機体後部に安全に近寄る事ができる。また、胴体後部に観音開きのドアを取り付ける事で人員や貨物の収容性が良くなり、ストレッチャーなども収容し易くなるため、ドクターヘリ向けの機体に採用されている。

また空力的な致命的問題点としては、背風 (追い風)かつ前進(対気)速度が低い、発動機が高出力〔最大出力までの余裕が無い〕の条件では、テールローターは回転している(機能は有効)のに、その効果が失われる現象(効果は無効)が発生し、致命的な事故を引き起こす。詳細は「テールローターの効果喪失」を参照

現在のヘリコプターではテールローターが一般的であるが、下記のような方式も存在する。
ノーターMD500Nのノーター

ノーター[29] ではテールブーム基部のファンにより低圧縮高ボリュームの空気をテールブーム内に送り込む。この空気の一部を(メインローターが反時計回りの場合)テールブーム右側からテールブームに沿って下方向に噴出させ、テールブームの周りにコアンダ効果を利用した気流の循環を作り、メインローターから吹き下ろされるテールブーム左右の空気流に速度差が生じ、擬似翼型を成型することにより空力的揚力(エアロダイナミクスリフト)を発生させ、反トルクを得る。

テールブーム後端にはヨーコントロールペダルによりコントロールされるダイレクトジェット噴出口があり、横方向のコントロールに使用される。

ホバリング中のエアロダイナミクスリフトと、ダイレクトジェットによる反トルク効果は50%程度であるが、前進飛行速度が40-95km/mぐらいでは、吹き降ろす風が斜めになるためにブーム側面のサーキュレーション・ジェットは効果を失い、後端からのダイレクト・ジェットだけが有効となる。ただ、このくらいの速度からは後端の垂直安定板が風を受けることでトルクを打ち消す効果が生じるため、エンジン駆動のファンを弱くして燃費向上に寄与することが出来る[23]。また、騒音や振動が少なくなるという利点もある。
ダクテッドファンH135のダクテッドファン

垂直尾翼に相当する部分に、複数のファンを埋め込んだダクテッドファンと呼ばれるタイプも存在する。これは、テールローター周りをダクトで囲むことによりテールローターブレードの翼端損失を減少させ、テールローターの効率を上げると同時に、回転部分に対する接触の危険を低減させたものである。

かつてはアエロスパシアル特許であり商標からフェネストロンと呼ばれていたが、特許期間満了後は他のメーカーからも同じ方式が登場している。

ダクテッドファンの中には、テールローターブレードを意識的に不等間隔に配列する事で、各ブレードが発生する固有の可聴音を意図的に変更し、各ファンが互いの可聴周波数を相殺するようにして騒音を低減させたタイプもある。この技術は、日本のタイヤメーカーによる騒音低減技術を流用したものと言われている。
降着装置

ヘリコプターは離着陸時の滑走が不要で、当初は速度や航続距離も小さく空気抵抗が大きな問題にならなかったことから、金属の棒やパイプで構成される簡素な脚「スキッド」(Skid:)が利用され、牽引する際に車輪の付いた台に乗せて移動させていた。機体の大型化や空港での運用効率化の観点から車輪を備えた固定脚、近年ではさらに空気抵抗を軽減するため引き込み式の車輪を採用したモデルも存在する。小型機はスキッドが主流であるが、乗り降りの際に足をかけやすくするため上面に滑り止め加工を施したり、上下2本設置したり、空気抵抗を軽減するためスキッドの形状を工夫した機体もある。

スキッドが上下2本あるTH-135

台車に乗せられたスキッド式のEC145

固定式の車輪を採用したMi-35M

引き込み式を採用したアグスタ A109

車両で牽引されるAS 565

飛行速度の限界
前進飛行時

ブレードの対気速度は回転方位によって異なり、特に前進方位と後退方位(端的には機体の右に位置するか左に位置するか)ではその差が大きい。ブレードの迎角が同じであれば、揚力は速度の2乗に比例するので、左右のアンバランスが生じる。従って、前進方位にきた時には迎え角を小さくし、後退方位にきた時には迎角を大きくしてバランスをとる必要がある。これはブレードに周期的なピッチ変化(縦のサイクリックピッチ)を与えることによって行う。
限界速度付近

速度が増加すると、後退側ではますます対気速度が減少し、かつ逆流領域も増加するので迎角をより大きくする必要があるが、迎角が失速角に達するとそれ以上は揚力を増加できなくなる。一方前進側では前進速度と共に対気速度が増加し、ブレード上では音速を超える領域(端的には周速が速い先端部)が生じて衝撃波が発生し抵抗が急増する。従って、ローターを回転させるために必要なパワー(形状抗力パワー)は、後退側での失速による抵抗増大と相まって急増する。
限界速度

後退側ブレードでは、ほぼ全面が失速と逆流領域になって、揚力をほとんど発生できなくなる。そのため、前進側でもバランス上揚力を発生できないので、揚力を発生しているのは回転円面の前方と後方のみとなる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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