ヘリコプターのローター
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ピッチ角の設定に必要な情報は、3本の非回転コントロール・ロッドにより、下部スワッシュ・プレートに伝達される

メイン・マスト:メイン・ギアボックスに接続されている。

スワッシュ・プレート

ローターが回転すると、メイン・ローター・ブレードのピッチ角は周期的に変化する。この変化を制御することにより、ローター・ディスクの最大推力が発生する部分を移動させ、ローター推力の方向を変えることができる。コレクティブ・ピッチは、ローター・ディスク全体の推力を同時に増減する。これらのピッチ角の変更は、操縦系統を介して、スワッシュ・プレートを傾けたり、上下に動かしたりすることにより行われる。多くのヘリコプターは、ローター速度(RPM)を一定に維持したまま、ブレードの迎え角だけを変更することにより推力を調節する。

スワッシュ・プレートは、同軸上で回転する2枚のディスクまたはプレートで構成されている。そのうち1枚のプレートはアイドル・リンクでマストに結合されてマストと共に回転する。もう一方のプレートは回転しない。回転プレートは、ピッチ・リンクおよびピッチ・ホーンで各ブレードに結合されている。非回転プレートは、パイロットの操縦(コレクティブおよびサイクリック)により操作されるリンクに結合されている。スワッシュ・プレートは、上下に動いたり、前後左右に傾いたりできるようになっており、その動きや傾きにより、操縦系統の操作を非回転プレートから回転プレートに伝達し、各ブレードのピッチを制御する。
全関節型全関節型のメイン・ローター・ヘッド

全関節型ローターは、フアン・デ・ラ・シエルバオートジャイロ用に開発したものであったが、その設計の基礎は、ヘリコプターの開発に貢献することとなった。全関節型ローターの各ローター・ブレードは、ヒンジを介してローター・ハブに取り付けられ、各々独立して運動できるようになっている。このローター形式には、通常、3枚以上のブレードが装備される。各ブレードは、それぞれ独立して、フラッピング、フェザリングおよびドラッギングを行うことができる。フラッピング・ヒンジと呼ばれる水平ヒンジは、ブレードが上下方向に運動することを可能にしている。この運動は、フラッピングと呼ばれ、揚力の不均衡を打ち消すために必要なものである。ローター・ハブからフラッピング・ヒンジまでの距離は機種によって様々であり、複数のヒンジが設けられる場合もある。ドラッギング・ヒンジまたはリード・ラグ・ヒンジと呼ばれる垂直ヒンジは、ブレードが前後に運動することを可能にしている。この運動は、ドラッギング、リード・ラグまたはハンチングを呼ばれる。ドラッギング・ヒンジを軸とした前後方向の運動を制限するため、ダンパーが装備される場合が多い。ドラッギング・ヒンジおよびダンパーは、コリオリ効果によって生じるブレードの加速および減速を補正する。近年のヘリコプターにおいては、従来型のベアリングに代わって、エラストメリック・ベアリングが使用されることが多い。エラストメリック・ベアリングは、損傷した場合でも安全性が高く、摩耗が急激に進行せず、かつ目視による点検が容易である。また、従来型のベアリングと異なり、金属同士の接触がないため、潤滑が不要である。フェザリング・ヒンジと呼ばれる全関節型の3番目のヒンジは、フェザリング軸まわりの運動を可能にする。このヒンジは、コレクティブまたはサイクリックへのパイロットの入力に応じて、ローター・ブレードのピッチ角を変更する。

全関節型の派生型として、「ソフト・イン・プレーン」型がある。OH-58Dカイオワ・ウォーリアなどのベル・ヘリコプター社製の機体に使われているこの形式は、各ブレードが独立してドラッギング可能であり、かつ、その動きが抑制されている点で全関節型に類似している。全関節型との相違点は、複合材料製のヨークが用いられていることである。ヨークは、マストに結合され、シア・ベアリングを介してブレード・グリップに結合されており、一方のブレードの運動を別のブレード(通常は反対側のブレード)に伝達する。この形式を用いることにより、全関節型とほぼ同等の飛行特性を維持しつつ、整備時間や経費を節減できる。
航空機

アグスタウェストランドAW109

ヒューズTH-55オセージ

MDヘリコプターズMD 500

シコルスキーS-300

無関節型

無関節型(リジッド・ローター)という用語は、通常、ブレードが柔軟性を有した状態でハブに取り付けられたヒンジレス・ローターに対して用いられる[21][22]。無関節型は、ロッキード社のアーブ・カルバーらによって初めて開発され、1960年代から1970年代にかけて、数種類のヘリコプターで開発試験が行われた。無関節型ローターのフラッピングおよびドラッギングは、各ブレードの根元部にある柔軟な部分で行われる。無関節型は、全関節型よりも構造を単純にできる。フラッピングやドラッギングによる荷重は、ヒンジではなく、ローター・ブレードのたわみによって吸収される。また、ヒンジがないことによって、ハブ・モーメントによって生じる操舵反応の遅れを小さくすることができる[23]。このため、半関節型(シーソー型)ローターで問題となるマスト・バンピングの発生を回避することができる[24]
航空機

ベルコウBo 105

ユーロコプターEC 135

HALドゥルーブ/HALルドラ

HAL軽戦闘ヘリコプター

シコルスキーS-97レイダー

ウェストランド リンクス

半関節型半関節型ローター・システム

半関節型ローターは、シーソー・ローターとも呼ばれる。この形式においては、通常、2枚のブレードが各ブレード共通のフラッピング・ヒンジ(シーソー・ヒンジ)のすぐ下方で結合されている。このため、各ブレードは、シーソーのように同時に反対方向にフラッピングすることとなる。ブレードをシーソー・ヒンジの下にぶら下げるように取り付け、適切なコーニング角を持たせることにより、各ブレードの重心位置が描く軌跡のローター回転軸から変位量を最小限に抑え、コリオリ効果が生じさせる抗力の荷重によるブレードへの負荷を小さくできる。上下の揺動を抑制するため、フラッピング・ヒンジを追加して、柔軟性を持たせる場合もある。ピッチ角の変更は、ブレードの根元にあるフェザリング・ヒンジによって行われる。
フライバー(スタビライザー・バー)

スタビライザー・バーまたはフライバーを用いることにより安定性が向上することは、アメリカのアーサー・M・ヤングやドイツのラジコン製作者ディータル・シュルーターなどの多くの設計者たちによって発見された。フライバーの両端には、重りまたはパドル(小型のヘリコプターにおいては、さらに安定性を増加させるため、その双方)が取り付けられ、回転面の安定を維持するようになっている。安定した回転を続けようとするバーの力を、機械的リンケージを介してスワッシュ・プレートに伝えることにより、ローターに加わる外部からの力(風)だけではなく、内部からの力(操舵)も打ち消すことができる。このため、パイロットの機体制御が容易になる。スタンリー・ヒラーは、短くて幅の広い翼(パドル)を両端に取り付けることにより、同じように安定性を増大できることを発見した。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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