水生説に対して、ヘビが中耳と鼓膜を失っていることや、進化過程で一度網膜が退化したとみられること、脳頭蓋が骨で保護されること、瞼が無く眼が透明な鱗で覆われていることなどは、ヘビの祖先が地中生活をしていたことを強く示唆する[13]。ただし、固い地面を掘り進んでいたとすれば生じたはずの頭蓋骨の強化(ミミズトカゲ類には生じている)はヘビには見られず、地中起源だとしたら軟らかい土壌に住んでいたか[13]、既にある穴や割れ目を利用する半地中生だったと考えられる[14]。化石では、後肢と椎骨を残すナジャシュ、四肢を完全に失ったヘビの中では最古であるディニリシア(英語版)、頭部にトカゲの特徴(上顎の骨が頭骨に固定されている)を残し地中生だったと推測されるコニオフィスが陸生であることが、陸生説を支持している[8][19]。
2015年には四肢を残す初期のヘビ類としてテトラポドフィス(英語版)が記載された[20]。しかしながらこの化石は分類が不確実であり、いくつかの研究はこの標本は実際にはドリコサウルス科の一種である可能性が示された[21][22]。化石はブラジルからドイツに不法に輸出されたものとみられており、他の研究者は実際の標本が研究できないことがその分類の混乱を引き起こした[23](当該化石は2024年にブラジル国立博物館に寄贈された)[24]。
体形に合わせて内臓も細長くなっており、2つの肺のうち左肺は退化している。原始的なヘビほど左肺が大きい傾向にある。
一部のヘビには、総排出腔の両脇に後ろ足の名残として蹴爪が見られる。
ヘビの足ヘビの蛇行の痕跡
四肢を失う進化(退化)自体はそれほど珍しいものではなく、両生類の無足類もまさに同様の進化を経た分類群である。現生のトカゲ類においてもアシナシトカゲやヒレアシトカゲのように四肢が無いかほとんど無いいくつかの群がある。鳥類ではモアが前肢(翼)を失い、哺乳類ではクジラやイルカの後肢が退化している[25]。
四肢に関しては、生まれる前の胚の段階で、2本の脚の原基(肢芽)が確認されており、ソニック・ヘッジホッグ遺伝子の制御を行う遺伝子スイッチ「エンハンサー」の3因子に変異が起きて足を形成せず破壊してしまっている[26][27]。メクラヘビやニシキヘビ科など一部の原始的なヘビに腰帯の痕跡器官を持つ種類がある。一部のニシキヘビには大腿骨も残っている[26]。なお、肩帯のある種類は現存しない。
初期のヘビ類であるパキラキスやEupodophis、Haasiophisやナジャシュなどは後肢を残していた。
移動するための四肢を失ったとはいえ、ヘビはその細長い体によって地上や樹上、水中での移動を可能にし、高い適応性を示している[14]。地上での移動方法にはいくつかの種類があり、代表的なのは以下のものである。
蛇行 (行動)(英語版)
直進(腹筋を動かして直進する)
横這い(上半身を移動する方向へ持ち上げた後、下半身を引き寄せる。「サイドワインダー」の語源)
2本の足を持つEupodophis descouensi
胚の状態のマウス(左)とヘビ(右)
直進移動(パフアダー)
横這い移動
毒日本における毒蛇の代表格ニホンマムシ詳細は「ヘビ毒」を参照「毒蛇」も参照
ヘビといえば「長い体」の次に「毒」が連想され、実際、有毒な爬虫類の99%以上はヘビが占めている(ヘビ以外にはドクトカゲ科2種のみとされてきた)。全世界に3000種類ほどいるヘビのうち、毒を持つものは25%に上る。威嚇もなく咬みつく攻撃的で危険な毒蛇もおり、不用意に近づくのは危険である。
毒蛇は上顎にある2本の毒牙の根もとに毒腺があり、毒液を分泌する。クサリヘビ科の種では牙の中は注射器のように管状で毒牙の先に毒液を出す穴がある。コブラ科では牙が管状ではなくその表面に毒液が毛細管現象で流れる溝がある種が多いが、毒牙がほぼ管状になっている種もある。従って、この二者を明確に分けるのは毒牙が管状か否かではなく、毒牙が折り畳み式か否かであり、前者を「管牙類」、後者を「前牙類」と呼ぶ。なかには口を開けて毒牙から毒液を噴射するクロクビコブラやリンカルスのような種類もいる(両者の毒牙は牙前方中ほどに毒腺の穴があいており、2mほど先の標的に正確に毒液を命中させることができる)。