しかし、1990年代にリリースされたVR用ヘッドマウンテッドディスプレイはいずれも個人で購入するにはあまりに高価であったり、あるいは専用のアミューズメント施設まで足を運ばなければ体験できなかったりと、遊ぶためのハードルが高く[9]、またVRを表現するハードウェアの性能も十分でなかったために魅力にも乏しかった[8]。更にハードウェアの応答性能の不足やノウハウの不十分さにより、感覚と視界がずれて乗り物酔いのような症状を呈する「3D酔い」など、健康面への問題も露呈した[7]。1990年代のブームは多くのユーザーや投資家の間に失望感を広めたまま失敗に終わり、こうした技術はその後20年間ほどは注目されないものとなっていた[7]。
その後技術の向上によって従来の問題点がある程度克服され、ジャイロセンサーや加速度センサーを搭載したスマートフォンが普及するようになると、2010年代にはVRに関連したヘッドマウンテッドディスプレイが個人での購入が可能な価格帯で相次いで市販されることが発表され、再び注目されるようになった[7][9]。クラウドファンディングのKickstarterに登場し話題となった「Oculus Rift」は、同じくKickstarterで話題となったトレッドミルの「Virtuix Omni」を組み合わせることでVR体験も可能となっている[9][10]。また、モーションコントローラ「Razer Hydra」[11][12] やショックフィードバック付きの多感覚スーツ「ARAIG」[13] もKickstarter上で発表されており、これらを組み合わせることでより没入感を高めたVR体験が期待できる。この他にも、見た目はサングラススタイルで軽量化を図っているNVIDIAの「Near-Eye Light Field Displays」[14] や過去の映像と現在の映像をシームレスに融合することで新たなVR体験を可能にしたソニーの「PROTOTYPE-SR」[15] など様々なシーンを想定したものが発表された。
こうしたVR対応のHMDが次々と発売された2016年は「VR元年」などと呼ばれ、メディアでも注目を集めることとなった[7][8]。特に同年10月に登場したPlayStation 4用のVRデバイス「PlayStation VR」により、VRゲームの本格的な普及が期待された。また、同年にはヘッドマウンテッドディスプレイを用いたVRエンターテインメントコンテンツの体験ができる実験施設をバンダイナムコが期間限定で開設しており[16]、アミューズメント施設を始めとした様々な施設での展開も想定されている。「ヘッドアップディスプレイ#コンピュータゲーム」も参照 中華人民共和国では法執行を効率化することから警察向けにも実用化されており[17]、2017年に中国公安部によって顔認証システムを搭載したスマートグラスとともに開発が決定され[18]、戦闘機用ヘッドマウンテッドディスプレイを軽量化した技術で人工知能(AI)と拡張現実(AR)技術や5G通信などの機能を統合したスマートヘルメットが採用されている[19][20][21][22]。
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