ヘッドフォン
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長時間のイヤホンやヘッドホンの使用で外耳道に湿気がこもると耳の中にカビが繁殖する外耳道真菌症(外耳炎の一種)の原因になる[28]

また、カナル型の場合は特に、イヤーピースの取り付けが緩いと本体を取り外す際にイヤーピースの部分が耳穴に残ってしまうようなものもあり、悪化すると手術で取り出すことにもなる。
パッドの劣化

耳に当てるパッド部分は、素材となるポリウレタンが発汗や体温の影響で加水分解し、数年のうちにボロボロに劣化する。製品によっては交換用のパッドが市販されているため、劣化の際はパッドを交換するのがよい[29]
ステレオスピーカーとの比較

ヘッドフォンとステレオスピーカーを用いた再生体験の違いは、音像の定位とそれによる臨場感である。

そもそもステレオは、ふたつの耳に到達する音の違いを脳が「計算処理」し、音源の位置を特定することのできるヒトの聴覚システムに合わせて考案された再生方式である。

ステレオは幾何学的なもので、すなわち具体的方法はいくつもあるが、例えばある発音体からの音を複数の理想的なマイクロフォンで理想的に収録した後に発音体を撤去、各マイクロフォンと全く同じポジションに今度は理想的なスピーカを置き、収録時と全く同じ音圧で理想的に再生するならば、全く同じ音場を再現することができる。これは全く同じ音によるものであり、後述の疑似ステレオなどのようにヒトの錯覚を利用するものではないことから、各スピーカーからの音はヒトにとって自然な音として認識され、個人差(特に音像ずれ)も少ない。

対してヘッドフォンは発音体が鼓膜のすぐ近くにある、自然にはあり得ない再生方式であり、異質な音、脳内の処理作業として異質であり、音像の定位感とそれによる臨場感は各個人によって大きくばらつく。全く同じ録音素材を全く同じヘッドフォンを用いて聞く場合であっても、スピーカと比較試聴すると、差はないと感じる人もいれば、例えば音がバラバラで聞いていられないと感じてしまう人もいる。

なお前者、ステレオスピーカーを用いた場合に得られる定位を「頭外定位」、ヘッドフォンを用いた場合に得られる定位を「頭内定位」と呼び、通常のステレオ素材は頭外定位、すなわちスピーカーにより聞くことを考えて制作してある。

従ってよくセットされたステレオスピーカーは優れた定位感とそれによる臨場感を再現する。しかしながらセットがよくないとそうはならず、その音質や体験はスピーカーの配置やその周辺環境に大きく左右される。また、リスニングポイントで、収録時と同程度の音圧になるように再生しないと同程度の臨場感は得られないことから、近隣騒音の問題を生じかねず、リスニングルームをどう構築するかの問題がある。また、ステレオスピーカーでしっかりした本格的なもの=理想スピーカに近いものは高価、それだけで100万円を超えることもある。

一方、ヘッドフォンは昔からスピーカーの頭外定位にヘッドフォンの頭内定位を近くし、スピーカーと同様の臨場感が得られるように工夫が重ねられている(後述の新しいタイプのヘッドホンもそうである)が、前述の通り、大きな個人差を吸収することは未だ困難であることから、2014年現在においても実現していない。しかしヘッドフォンは、およそ周囲条件に左右されない汎用的な使用ができること、満足できる音質を比較的安価簡単に入手しやすいことが特長である。

特にレコードなどにある擬似ステレオ音源は、左右の音量を変えるだけで、スピーカーを結ぶ直線上の任意点にあたかも音像が定位しているように聞こえさせる、つまり、ヒトの錯覚を利用したものである。従ってこれにはさらに、機器との距離、部屋の反響などが必要であり、ヘッドフォン再生に向いていないことが多くある。

このようなことから、ヘッドフォンを使用して、ステレオスピーカー再生と同じように実際に近い音場を感じることができるとされる(バイノーラル録音)音源など、あたかもその場にいるかのように聞こえる立体音響なども発表されている。その効果は今のところ限定的ではあるが、一定の人気を博し、森の音などの、いわゆる自然音収録によく用いられるようになっている。
新しいヘッドフォン
サラウンドヘッドフォン

従来のヘッドフォンは一般に音が頭の中でなっているような感覚があるため、映画の鑑賞などでは違和感がある場合もあった。しかし現在ではドルビーなどのサラウンド技術を用いたサラウンドヘッドフォンが開発され、手軽なサラウンド環境として人気を集めている。多くのサラウンドヘッドフォンでは赤外線電波によるコードレス化も併せて行われていることが多い。ソニーは、1998年に普通のヘッドフォンでも5.1chサラウンドを再現できる最初の5.1chサラウンドヘッドホン MDR-DS5000 を発売している。その後、ドルビー社も同様の機能を持つ「Dolby Headphone」を開発している。なお同技術は5.1chの再生を目的としているため、ステレオ音声の場合はPro Logic IIなどと併用する必要がある。

Quakeカウンターストライクに代表される、FPSと呼ばれるコンピュータゲームのジャンルでは、ゲーム中の物音から敵の所在や動きの察知が重要である。この点では、安物のヘッドフォンでも6スピーカー・サラウンドシステムより優れている。音の方向性を知るにも小さな音を聞き取るにも、ヘッドフォンはスピーカーより有利である。

また、サラウンドヘッドフォンにはステレオ環境から人間の聴覚の特性を利用してサラウンドを再現するバーチャルサラウンドヘッドフォンと、通常のサラウンドスピーカーと同様に左右にそれぞれ複数のスピーカーを搭載したリアルサラウンドヘッドフォンがある。どちらもヘッドフォン製品そのものの特性やソースとなるゲーム・音楽・映画音源等のマルチチャンネルへの最適化、サウンドデバイス等が持つサラウンドやバーチャルサラウンド機能等よっては、音の定位がステレオヘッドフォンよりもはっきりしないと感じる場合があり、用途や利用環境、使用者によって感想は多種多様となりやすい。前者は本体が軽い反面、USBや外部サラウンドモジュールを必要とする場合がある。後者はスピーカーが多いために重量が増しやすく、各チャンネル用の信号線が必要でケーブルが太いため、ケーブルが固く取り回しがしづらい反面、5.1chや7.1chなどマルチチャンネル出力環境を備えた環境であれば、ヘッドフォン本体のみでオーディオ・パソコン問わず利用できる製品がある。2013年現在、どちらも質や価格に明確な違いはなく、利用環境や用途、各ゲームや映画など音源の組み合わせによって差が出る。
ノイズキャンセリングヘッドフォン「消音スピーカー#ノイズキャンセラー」も参照

雑音と逆位相の電気信号を音源信号に適量付加することにより、雑音と逆位相の音を発生させ、騒音をある程度相殺する方式のヘッドフォンである。周囲の騒音を拾うためのマイクロフォンと、騒音信号を増幅するためのアンプを内蔵し、このために電池などを別途必要とする。iPodなどの普及と共に近年人気を集めている。2006年にはパナソニックとソニーのデジタルオーディオプレーヤーの一部にノイズキャンセリングヘッドフォンが標準で添付されるようになった。

ノイズキャンセリングヘッドフォンの騒音低減率はだいたい20dB程度であり、一般の騒音用耳栓の約30?40dBには遠く及ばない。特に、ノイズキャンセリングヘッドフォンは、高音域の騒音を低減することが原理的に苦手であり、低減はおおむね低音部のみ行われる。このように騒音を完全に相殺できるわけではないが、鉄道や自動車などの車両内における低音騒音にはある程度効果が認められている。騒音相殺アンプを迂回できない機種の場合、充分に静寂な環境では、このアンプの出力に含まれる雑音信号成分(ヒスノイズ)が逆に気になることもある。
骨伝導方式ヘッドフォンゴールデンダンス製の骨伝導ヘッドセット「MGD-01」


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