ヘッドフォン
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耳覆い型(ヘッドバンド型?軽量オープンエア)

耳覆い形は大きく耳を覆い込む形状で装着時には十分な空洞ができるもの[8]


ヘッドバンド型かつ密閉型の例。通常は「密閉型ヘッドフォン」などと呼ぶ。(オーディオテクニカ ATH-A500)ヘッドバンド型。空洞はさほど無いタイプ。


ヘッドバンド型
ヘッドバンドを頭の上に乗せるものである。「オーバーヘッド型」とも呼ばれる。1970年代までヘッドホンの装着スタイルはヘッドバンドの形態に限られていた[12]。耳に良く密着し、密閉型では音漏れしにくいものが多い。しかし、持ち運ぶときにかさ張る、髪型が乱れるなどの理由で敬遠されやすい。折り畳み型もある。

軽量オープンエア
1979年に発売された非常に軽量な機種で戸外に音楽を持ち出す文化を生み出すきっかけとなった[12]
イントラコンカ型(インイヤー型、インナーイヤー型)インイヤー型

イントラコンカ形は耳甲介腔にはめて使用するもので、音響出力孔が外耳道近くになるように設計されたもの[8]。耳甲介腔に収まるサイズのものは1982年に開発されインイヤー型などともいい後にヘッドホン市場の大半を占めるほど一般的に普及した[12]
スープラコンカ型

スープラコンカ形は耳甲介腔の周辺にある隆起に載せて使用するように設計されたもの[8]
耳載せ型(ネックバンド型)ネックバンド型

耳載せ形は耳の外側に置き耳朶に載せて用いるもの[8]1997年に発売され通称はネックバンド型という[12]ソニーから1997年に発売された MDR-G61で初めて採用)。通常は頭上にあるヘッドバンドが首の後ろ側に位置している方式。ゼンハイザーもこの方式のヘッドフォンを販売している。

長所はヘッドバンドが頭部を押さえないため、装着しても髪型の崩れを気にする必要がなく、帽子をかぶることもできる。運動中にも邪魔にならない。短所はヘッドフォン本体の脱落を防ぐために装着した時の締め付け具合が強く、またマフラーやフード付きの衣服を着用している場合には内側からネックバンドに干渉して邪魔になる場合がある。
耳介掛け型(耳掛け形、イヤハンガー形、クリップ型)耳掛け型・クリップ型

耳介掛け形は耳に掛けて使用するように設計されたもの[8]。イヤハンガー形ともいう[12]。コードをハウジング内に収納するモデルもあり、インナーイヤー型と比較して振動板面積が大きく取れる割りに非常にコンパクトで携帯に便利である。しかし耳輪に引っ掛けるため耳甲介腔に密着しにくく、音漏れしやすい。長時間使用すると耳介に痛みが出ることもある。パステルカラーのものやメッキのアクセントの入っているものなど、ファッション性を重視した製品も多い。
挿入型(カナル型)カナル型

挿入イヤホンは外耳道(ear canal)に挿入して用いるもの[8]。1999年に発売された耳孔挿入式のものは通称カナルインナー型(カナル型)という[12]。カナルインナー型(カナル型)は2002年頃から主流となった[12]

構造上密閉型が多く、遮音性能が比較的良好なため、騒音のやや大きい場所でも音楽等を楽しめる。耳に合うかどうかは個人差があり、音質や装着感などにも大きく影響する。そのため外耳道挿入部が着脱式部品(イヤーピース)となっており、大きさの異なる複数の部品が付属する製品が多い。外耳道に挿入する部分がゴム製で摩擦が大きいものは、耳からヘッドフォンがインナーイヤー型より抜けにくくなっている。外部からの遮音性が高い反面、製品や個人差によっては、自分の鼻息、歩いたときの振動、あるいはコードの擦れ音など身体の音が顕著に増幅されてしまう欠点があり[13]、コードの擦れ音対策がなされている製品もある。近年各メーカーから相次いで販売されるようになった。また、人によっては口の開け閉めによる顎関節の動きにより密閉具合が絶えず変動するため、喋りながら使うと音量に不快な揺らぎが生じる場合がある。そのため特にスマートフォンなどハンズフリー等で用いる場合や、音楽を聴きながら歌う場合など、非常に聞き取りにくいケースや音酔いして気分が悪くなる場合がある。遮音性が高く外界の音が極端に聞こえづらいため、自動車などの接近に気付きにくく、使用者本人を危険に陥れる可能性も指摘されている[14]
外耳道との音響的接合法による分類

外耳道との音響的接合では開放形と密閉形に分類される[8]。ヘッドホンの構造は逆相音処理の原理的方法の違いから大きく2つに分けられ、それぞれ次のような特徴がある。
開放型(オープンエアー)
発音部分の背面が開放されているもの。振動板の裏側から発生する、180°位相反転した音波(逆相音)を無限に広い空間に拡散させて処理するタイプのものである。いわゆるスピーカーボックス(エンクロージャー)で言えば、後面開放(ダイポール)型である。外音を遮断するものは、原理的に薄い振動板1枚だけであるため、外音が良く聞こえる。一般に高音が良く伸び音がこもらない反面、低音はやや弱い。これは低音の逆相音が高音のそれと比べてよく回折するため、表側により多く回り込み、低音の正相音をより強く打ち消してしまうためである。はっきりとした強い低音を得るためには、イヤパッドなど発音部分の表裏を分ける部分の遮音性を特に高める必要がある。また、音漏れが大きいのも難点である。
密閉型(クローズド)
発音部分の背面を密閉したもの。振動板の裏側から発生する逆相音を内部で減衰消滅させるタイプのものである。いわゆるスピーカーボックス(エンクロージャー)で言えば、密閉型もしくはバスレフ型である。スピーカーとは違い、ヘッドフォンでは、背面の容積(空間)を十分とすることができないことから、発音器が非力な場合、振動板の動きが制限され、低音の少ない詰まった音(こもった音)になりやすい。このことからダイナミック型では、発音器に強力なマグネットを使用する、あるいはバスレフ型として対応する。遮音性が高いため、外部の音を遮断することを重視する場合には好んで用いられる。ヘッドフォン自体の音もよく遮断することから、公共の場で利用するヘッドホンに用いられるほか、(マイクロフォンとヘッドフォンが接近するため不要なモニタ音が収音されがちな)ヴォーカル録音等のモニタにも愛用される。

聴力測定用ヘッドフォンのように理想的に作れば、開放型も密閉型も「同じ音」になる。一般に言われる「音の傾向」は、意図的に作られているものである。例えばゼンハイザーの開放型ヘッドホンは低音が強調され、オーディオテクニカの密閉型ヘッドホンは高音が強調されて鳴る傾向があるが、これは各メーカーの考えの違い、すなわち各メーカーの対象としているカスタマーニーズがそれぞれ違うためであることがほとんどである。コンピュータシミュレーションがヘッドフォン設計にも取り入れられるようになって以降、音の傾向はカスタマーニーズに合わせて細かく調整されるようになっている。また、各メーカーの代表的な機種の音だけが取り上げられ、「メーカーのクセ」と思われていることが多いが、実際には、同じメーカーのものでも、機種によって音が全く違うことがほとんどで、多くの場合、実聴しないと音の傾向はわからない。また遮音性・音漏れについても密閉型だから高いとは必ずしも言えない。これはその他に例えば「半開放型」のものがあるが、分類上は密閉型とされているといったことがあるためである。
変換器の原理による分類

変換器の原理では、圧電形、電磁形、静電形などに分類される[8]
ダイナミック型beyerdynamic T1のダイナミックドライバーユニット

ダイナミックスピーカーと同じ構造で、磁石の作る磁界の中で音声電流が流れるコイル(ボイスコイル、voice coil)にローレンツ力が発生し、コイルに取り付けた振動板を振動させる方式である。ダイナミック型は、電流に対するローレンツ力を線形にする設計が可能であり、無電流のときコイルに力が発生せず振動系の支持を柔らかくできるため、低歪と広い再生周波数帯域が両立できる非常に優れた方式である。原理構造上、安価な大量生産向きでもあることから、現在ではヘッドフォンの最も一般的な方式となっている[15]

世界初のダイナミック型ヘッドフォンは1937年ドイツのEugen Beyerが作った。現在でもbeyerdynamic社は主要メーカーの一つである。

インピーダンスは16?70Ω程度のものが一般的であるが、業務用のヘッドフォンでは300Ωや600Ωなども存在する[16][17]。メーカーの設計思想もあり明確な基準は無いが、概ね32Ωを超える物が高インピーダンスとされ[18]、ヘッドフォンアンプの中にはスイッチを切り替えることでヘッドフォンのインピーダンスに合わせて内蔵したアッテネーターに接続する製品も存在する。


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